配当目的で株を買う、という人がいると思う。
売買益を狙う、というよりは、配当を狙う、という考え方だ。
金融機関の利子がこれだけ低くなると(定期1年物で0.01~0.025%)、そう考える人が増えてもおかしくはない。少しでも(株を買い)配当金を得て生活の足しにしよう…と思う人がいれば、将来は(究極的な目標として)配当金による生活がしたい…と考える人もいるだろう。
※配当金生活が可能になれば、経済的な自由を得ることができるだろう。
今回は、配当目的で株を買えばいい、ということを書いてみたい。
目次
2つの収益
インカムゲイン、キャピタルゲインという言葉を聞いたことがあると思う。
株の収益には、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」というものがある。「インカム」と「キャピタル」の違いだが、カタカナで書くと紛らわしい。※間違えることもある。
キチンと違いを覚えるためにも、まず両者を整理しておこう。
インカムゲインとは
インカム(income)とは、収入とか収益という意味だ。また、「流入」という意味もある。
ある資産を保有することで安定的かつ継続的に受け取ることのできる現金収入(利益)のことをいいます。具体的には、銀行預金や利付債券(国債、普通社債、転換社債等)の受取利息、投資信託の収益分配金、株式投資の配当金や貸株料、外国為替証拠金取引のスワップポイント、不動産投資の家賃収入(賃料収入)などが挙げられます。
出典:インカムゲイン
インカムゲインとは、資産を保有することで、受け取ることのできる収入(または利益)のことだ。
たとえば、不動産投資であれば、家賃(収入)がインカムゲインにあたる。株の場合は、主に「配当金(+株主優待)」、投資信託であれば、分配金がインカムゲインにあたる。
資産から「流入」してくる収入なので、インカムと覚えておけばいいだろう。
先日、資産運用のセミナーか何かで、講師がコップに水を注ぎ、(意図的に)溢れさせているシーンを見た。コップに溜っている水ではなく、この溢れ出す水がインカムゲインだ。コップに溜っている水は、資産に当たる(水があふれるためには、ある程度の資産が必要になる)。
キャピタルゲインとは
キャピタル(capital)とは、資本という意味だ。資産という意味もある。
債券や株式など資産の価格の上昇による利益のことを言う。
資本利得、資産益と訳せる。価格が下がって損をすることもあるが、この場合はキャピタル・ロス(capital loss)と呼ぶ。
出典:キャピタル・ゲイン - Wikipedia
株で利益を得る、というときは、このキャピタルゲインのことを指すことが多い。巷(ちまた)にある数千万、数億儲けた、という話は、キャピタルゲインによるものだ。
※インカムゲインで一攫千金は不可能。
簡単に言えば、安く買って高く売ることで生じる利益のことだ。売買が上手く行って、利益が出れば、キャピタルゲイン、損が出れば、キャピタルロス、ということになる(株の場合、インカムの方にロスはない)。投資資産を動かすことで得る利益なので、キャピタルと覚えておけばいいだろう。
キャピタルゲインを求めるのは難しい
株を現物で売買する場合、キャピタルゲインが期待できるシーンは限られている。
たまたまそのシーンに遭遇して、利益を上げることができても、その後、その時あげた利益よりも多くの損を被ってしまう…ということがある。※ギャンブルにありがちなことだ。
偶然いい時期に始めただけなのに、(利益を手にしたことにより)「オレには株の才能がある」と思い込んで、ドツボにはまる…ということが普通にあるのだ。
人には、上手く行ったときは自分の能力の結果だ、と考える傾向がある。
利益を出せる時期は限られる
経験を積んだ投資家でも、キャピタルゲインを狙える時期は限られている。
極めて一部の成功者の話や、損を隠して利益のことしか語らない人の話を鵜呑みにしてはいけない。多くの投資家にとって、キャピタルゲインを求めることは、かなり難しいのだ。極めて一部の成功者の背後に、どれだけの敗者がいるのか、想像した方がいい。※生存バイアスの問題。
したがって、堅実な投資をしたいのであれば、インカムゲインを狙った方がいいだろう。
配当を狙うメリット
株価が気にならなくなる
配当(インカムゲイン)狙いに切り替えると、いいことがある。
ひとつは、株価がそれほど気にならなくなる、ということだ。
キャピタルゲイン狙いの場合は、株価が直接収益に関係する。したがって、株の値動きに一喜一憂する、という状態になり、何をしていても、「株価が気になって仕方がない」という状態に陥る。
※投資資金が多ければ多いほど、そのような状態になる。スマホで株価の動きを常にチェックしている…という人が身近にいないだろうか(また、そんな人のことをどう思いますか)?
一喜一憂しなくて済む
そして、株価が上がればハイになり、下がればどんよりする、という状態になる。
この状態が健全でないことは確かだ。機械的にロスカットする(損失をコントロールする)ことで、このような状態をある程度は避けることもできるが、それは中級者以上の話になる。
完全に近い形で感情を排することができるのは、一部の経験を積んだ上級者だけだろう。
安定した収益が期待できる
ふたつめは、比較的安定した収益が期待できる、ということだ。
キャピタルゲイン狙いで、安定的な収益を求める、というのは不可能に近い。
先に述べたように、利益を上げることができる場面が限られている、ということのほかに、相場の状況は常に変化するが、その変化にいつも適切に対応できるとは限らないからだ。
※R.ルービンの言葉を借りれば、「絶対確実なことなどない」ということだ。
キャピタルゲイン狙いの場合は、損をすることもよくあるが、インカムゲイン狙いで損をすることは比較的少ない。※含み損を損と考えるのであれば、損をすることは普通にある。また、インカムゲイン狙いでも、リスクはある(このリスクについては、次回書きます)。
頻繁に売買する必要がなくなる
最後に、頻繁に売買する必要がなくなる、ということだ。
インカムゲイン狙いの場合は、株価が下がった時だけ、買えばいいからだ。
シンプルに、自分が設定した利回りに達したら、買えばいいのだ。
株式による(配当などの)利回りの目安だが、私は2.2%(税引き後)程度としている。この値は、個々の銘柄別に安全率をかけて厳しく見積もった(+税引き後)の数値で、株価サイトで表示される利回りとはかなり異なる。たとえば、株価サイトで利回りが3.1%と表示されている、ある銘柄の私の評価は、2.0%だ。
出典:少しでも資産を増やす方法
たとえば、この記事を書いたときは、利回りを2.2%(税引き後)程度としている。
今であれば、もっと上げてもいいだろう。2.5%(税引き後)にしてもいいかもしれない。※個々の銘柄別に安全率をかけて厳しく見積もった(+税引き後)の数値です。
利回りの数値に正解はないが、自分が納得できる利回りに達したら、粛々と買えばいいのだ。
その際、「ドルコスト平均法」を利用して、定期的に買うという方法もある。※「ドルコスト平均法」を使うと、(金額分割のため)数量分割よりも有利になるのだ。
配当目的で株を買えばいい - サマリー
まとめ
今回は、配当目的で株を買えばいい、ということを書いた。
まず、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の違いを理解しておきたい。一攫千金を狙えるのは「キャピタルゲイン」の方だが、その分リスクも高くなる。
キャピタルゲインを狙うことは難しいし、今後はAIが取引にどんどん入ってくると予想されるので、ますます難しくなるだろう。また、株価に一喜一憂して感情的になる…というのは、いいことではないと思う。なので、私的には「インカムゲイン」を狙った方がいいと考えている。
インカムゲインを「主」にして、キャピタルゲインを「副」にする、ハイブリッド型の投資でもいいだろう。その際は、リスクの許容度に応じ、両者の配分を調整することだ。
※当然のことですが、投資は自己責任で行ってください。
↓ 次回に続きます。
今回の記事:「配当目的で株を買えばいい」