配当金生活を目指す!の続きです。
前回は、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の違いや、キャピタルゲインを狙う投資はむずかしいこと、インカムゲイン(配当)狙いにするメリットなどについて書いた。
前回の記事:「配当目的で株を買えばいい」
さらに、前回の記事で、キャピタルゲイン(売買益)狙いで株を買うより、インカムゲイン(配当益)狙いで株を買った方がリスクが小さい、ということを書いた。
これはもちろんそのとおりなのだが、インカムゲイン(配当益)狙いで株を買っても、それなりのリスクはある。
配当金生活を目指すのであれば、当然、(配当狙いで株を買うときの)リスクについても熟知しておく必要がある。今回は、配当目的で株を買うときのリスクについて書いてみたい。
更新日:2018年9月20日
目次
配当狙いのリスクがある
配当目的で株を買うことにもリスクはある。まず、無配に転落するリスクがある。
投資先の会社が、業績の不振により配当を「0」(無配)にすることがあるのだ。
たとえば、(最近では)以前は安定配当を誇っていた電力会社が、配当を0にする、というケースがあった。また、ソニーやパナソニック、(今年、三菱商事を抜き業界トップに躍り出る)伊藤忠商事など有名な大会社でも、配当を0にしたことがあった。※ソニーの配当0は最近のことだ。
無収入になることがある
もし、投資先が1社だけだと(それが有名な大会社であっても)、配当収入0ということもあり得るのだ。
※その会社に、何千万、何億投資していようが、その年のリターンは0だ。(高齢者にありがちだが)もし、配当収入を生活費として計算しているのであれば、困ったことになる。
投資先の無配転落は、配当金生活における大きなリスクになる。
事件に巻き込まれることもある
投資先の会社が、やらかす場合もある。
たとえば、投資先の企業が粉飾決算をやらかして、無配当になるケースがある。この場合は、上場廃止になる可能性も出てくる。
粉飾決算が発覚した場合、株価は暴落する。その時点で大きな含み損が出るわけだが、上場廃止になると、投資した金額の全額を失う、という可能性も出てくる。こうなってしまうと、もはやインカムゲインどころではなく、キャピタルロスが確定することになる。
※投資金額の全額を失う、というのが、配当金生活を目指す上でのワーストケースだ。
減配は普通にある
減配、つまり投資先の会社が配当を減らすことは普通にある。
配当金は業績と連動するものだから、(会社は)業績が悪くなれば配当金を減らすことを考える。
配当性向という言葉を聞いたことがあると思う。配当額(1株あたり)÷純利益(1株あたり)で計算できる値だが、大体20~30%程度だ。この配当性向が変わらなければ、純利益が減ればそれに連れて配当額が減る…ということになる。※右肩下がりの会社に投資してはいけない。
配当金生活を目指すのであれば…
リスクに対する対策を打つ
したがって、 リスクに対する対策を打つ必要がある。まずは、当然のことだが業績だ。
過去5年以上の、経常利益(営業利益)、営業CF,ROA,ROE,自己資本比率などをグラフにしてみる。これらの指標が、「右肩下がり」になっているような会社には注意が必要だ。
※会社の存続リスクは、自己資本比率で見ればいいだろう。
自社株の割合を見る
また、自社株の割合を増やしているのか、減らしているのか、チェックしてもいいと思う。
本人が買っていれば、安心して買えるし、売っていれば「?」がつく。
この動きは、ある意味、会社のボディランゲージだ。個人でもそうだが、ボディランゲージでウソをつくことはできない(笑)。※取り繕った言説よりは、はるかにあてになる指標だ。
ただし、業績をチェックする方法は粉飾には無力だ。
投資先を分散する
投資先を、ある程度分散することも必要だ。
先に述べたように、投資先が1社だけだと、配当収入0ということもあり得るからだ。
分散するときは、同じ業界内で分散するのではなく、業界をまたいだ方がいいと思う。同じ業界内だと、全く同時に業績不振に陥る…ということがあるのだ。
※だだし業界をまたいでも、全体の景気後退などによりそういうことはある。
分散は、内需依存か外需依存か、という切り口でもいいだろう。また、円のレートが業績に与えるインパクトなどをものさしにして、分散してもいいだろう。
※大型株・小型株、成長株・安定株という切り口でもいい。
配当のばらつきをチェックする
配当のばらつきをリスクと考えることができる。
ばらつきが小さい ⇒ リスク小
ばらつきが大きい ⇒ リスク大
とする考え方だ。
エクセルに(過去5年以上の)配当のデータをのせ、標準偏差を求めれば、簡単にばらつきを計算することができる。そして、ばらつきが比較的小さい銘柄を買えばいいのだ。
※ただし、配当が成長している場合は、別の指標を使った方がいい。
粉飾に引っかからないためには
粉飾に引っかからないための方法がいくつかある。
1)経営者についてしらべる
2)監査法人をチェックする
3)決算数字をチェックする
経営者のチェックについては、以下の記事が参考になる。
中でも大事なことは、見た目に引っかからない、ということと、経営者がエゴイストかどうかチェックする、ということだ。能力を見極めたり、長所短所を評価することも大事だが、これらはなかなかむずかしい。実際に会って話をしてみないと、それらを評価することはむずかしいのだ。
エゴイストチェックをする
だが、エゴイストかどうかのチェックは比較的簡単にできる。
投資をしている人は、会社から送られてくる報告書をチェックしてみよう。
報告書の最初の方に、社長や会長の写真が掲載されているはずだ。その写真の大きさや雰囲気を見て、自己アピールに熱心な経営者だな…と感じれば、投資をやめた方がいいかもしれない。エゴイストである可能性があるからだ。※エゴイストは後継者を育てないので、その会社の先行きには暗雲が漂う。
出典:人を評価する方法!基準は…
また、できれば株主総会に参加して、人物を見極めたい。
自分を飾ったり、カッコをつけようとする経営者であれば危険だ。サイバーエージェントの藤田晋さんは、出資者から「馬とフェラーリを買わないでくれ」と、何度も言われたそうだ(それらを買うタイプの起業家は、失敗することが多いため)。わたしもその出資者の意見に賛成だ。
経営者の見た目を過大評価しない
見た目に引っかからない、ということも大事だ。
外見を見れば、内面のことも少しはわかる。だが、外見は限定的な情報でもある。外見である程度人を評価してもいいのだが(たいていの人はそうする)、あくまでも限定的な情報から評価している、ということを理解しておく必要がある。
出典:人を評価する方法!基準は…
スタイリッシュでカッコよければ、「経営者としても有能ではないか」と思ってしまう。
見た目がさえないおじさんであれば、「経営者として大丈夫なのか?」と思ってしまう。
そのような印象を受けることは、(人である以上)仕方のないことかもしれないが、「必要以上に、見た目の印象に引っ張られているのではないか…」と常に考えておくことが大事だ。
外見を見て、その人のことをわかったような気にならないことだ。
会社の監査法人をチェックする
2)監査法人のチェックについては、投資先の監査法人の評判だけではなく、監査法人をめぐる不自然な動きがないのか、ということも含めてチェックする、ということだ。
※監査法人の交代に要注意。
大手企業で監査法人が交代するのは、極めて異例のこと。系列が変わったり、親会社の監査法人に揃えたりする例を除けば。こうした場合、会計士なら「監査上のトラブルがあったのでは」と疑うのが普通。だから後釜の監査法人は引き受け手がなく、個人事務所のような小規模事務所が引き受けるのが通常のパターンである。
出典:日経BP
監査法人が変わった場合は、監査上のトラブルが生じた可能性がある。
3)決算数字のチェック、については、長くなるので機会があれば書こうと思う。先に、業績をチェックする方法は粉飾には無力だ、と書いたが、一部有効な数字もある。
配当金生活を目指す - サマリー
まとめ
今回は、配当目的で株を買うときのリスクについて書いた。
金融機関の利子がこれだけ低くなると、「配当目的で株を買うこと」の魅力が大きくなる。
投資にはリスクがある。リスクを抑えつつ、メリットを享受するためにはどうすればいいのか…ということを、自分の頭で突き詰めて考えることだ。それが、投資で成功するための秘訣だと思う。
※ダウンサイドを抑え、アップサイドを大きくすることができれば、投資は成功する。
夢は大きく、配当金生活を目指してもいいと思うが、実現するのは大変だ。長いスパンで目的を達成することを考え、やるべきことをコツコツ積み上げていく、というイメージが必要だ。
今回の記事:「配当金生活を目指す!配当目的で株を買うときのリスクとは」