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井上尚弥の苦戦を検証する…井上選手にも課題がある

ここまで順風満帆に見える井上尚弥だが、苦戦をすることもある。

たとえば、随分前の話(2013年)になるが、田口良一との一戦だ。

井上は、センスやテクニックで田口を凌駕していたが、思いのほか苦戦した。その試合は、井上が勝ったことよりも、田口の善戦が光る試合となった。

井上は階級を上げることにより、(パンチ力が増した分)オフェンス面での強さは増したが、ディフェンス面ではそう変わらないように見える。PFPの選手にしては、甘いところがあるのだ。

なので、田口やカルモナ、セルバニア(スパーリングの相手)のように、井上の圧力に屈しない相手の場合、苦戦することが予想される。セルバニア並みの技量を持つ選手だと、負ける可能性もある。

今回の記事では、井上尚弥の苦戦を検証してみたい。 

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目次

 

セルバニアに苦戦する

セルバニアとスパーをしたが

井上は、2018年の8月にセルバニアとスパーリングを行った。

セルバニアは、こういう選手だ(青いパンツ)。

強打のバルデス(WBO世界フェザー級王者)との一戦だ。

試合には判定で負けたが、王者からダウンを奪うなど、爪痕を残している。相手の強打にもひるまず、ファイティングスピリットを失わない・最後まであきらめないメンタルの強い選手だ。

※井上にとっては、2階級上の選手になる(見た目も井上より大きい)。

ボディからスローダウンする

1Rの動きにはキレがあった井上だが、2Rはスローダウンする。

ボディーをもらったことがきっかけだ。 

まず、ジャブの出鼻にカウンターをもらい、ボディーへの右ストレート、左を2発もらっている。

その際、セルバニアに対し、「ナイスボディー」と声がかかっている。その後、井上のキレやスピードが落ちている。棒立ちになってボディーをもらう、という形は避けなければいけない。

最終ラウンドでは、ロープに押し込まれてクリーンヒットされる、というシーンがあった。アッパーのクリーンヒットで、頭が跳ね上がるシーンも。試合であれば井上の負けかもしれない。 

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カルモナにやや苦戦した

実は強かった挑戦者

2013年のカルモナ戦を掘り下げてみよう。

挑戦者のカルモナ(ランキング1位、24、メキシコ)は、思ったよりも強い選手だった。

前回のパレナス(当時ランキング1位)戦があまりにも一方的だったので、カルモナの実力にまで目が行き届かなかった…という人も多いのではないかと思う。

カルモナは実力者である

WBOのフランシスコ・バルカルセル会長は、試合前に以下のようなコメントを残している。

「この試合は大変タフな試合になる。井上選手のボクシング人生の中で一番タフな試合になるのではないでしょうか」と言うほどカルモナの実力を評価。
出典:【ボクシング】WBO関係者は井上尚弥の苦戦を予想

※会長はカルモナの実力をよく知っており、同選手を高く評価していたようだ。

同会長は、「井上尚弥選手のボクシング人生の中で、最もタフな試合になるのでは…」と予想していた。ファンの中では、このような予想をしていた人は、ほとんどいなかったのではないか。

※カルモナは後に、クアドラスと互角の試合をしている。

ディフェンスが強い技巧派

カルモナには、ガードがしっかりしているテクニシャン、という定評があったようだ。

ガードを固め、足を使ってくるテクニシャンとあり、攻略は容易ではない。「スタイル的にも厳しい試合になると思う。世界のトップに立つための良いテストになる」と期待を込めた。
出典:井上尚弥にWBO会長「パッキャオの次のスター」

別の関係者も、同様のコメントを残している。

カルモナ戦は大変困難な試合になると思います。なぜならカルモナはメキシコの心を持ったボクサーだからです。彼はいいコンディションに調整してきました」と、やはり井上の苦戦を予想する。
出典:【ボクシング】WBO関係者は井上尚弥の苦戦を予想

計量がどうのという話があったが、コンディションも上々だったようだ。

拳を痛めやすい

井上尚弥の課題のひとつは、「拳を痛めやすい」ということだろう。

「2ラウンドに、相手のこめかみか頬を打った時に右の拳を痛めてしまった。その後、倒すには左フックしかないと思ったけど、距離を詰める過程が悪かった。ディフェンスがしっかりしていて、思った以上にタフで攻めきれなかった」
出典:【ボクシングW世界戦】井上尚弥 判定VもKOできず「課題が見つかった」

2Rで右の拳を痛め、中盤で左の拳を痛めたそうだ

こめかみあたりを打ったパンチだったが、痛めるようなパンチには見えなかった。額をハードヒットした、というようなものではなかった。

※右の拳は、2Rで痛めたことを認識し、6Rで強く打てない、と思ったそうだ。

また拳を痛めてしまった…

正直、「また拳を痛めてしまったのか…」という残念な気持ちだ。

1年間のブランクをつくる原因となったナルバエス戦で痛めた右拳。試合後、実は脱臼の重傷で、「悩んだ」末に3月に手術していたことを明かした。全く握れず、同じ症状で手術となった内山高志(ワタナベ)に相談しての決断。完治は秋ごろ。練習は1カ月まったくできなかった。
出典:尚弥 衝撃の2回TKO!手術の右拳でガードの上から粉砕初防衛

今回の痛めた程度がどのくらいかわからないが(骨折などではなく(打撲で)軽いという報道もある)、

前回痛めたときは、手術をして1年間のブランクを作っている。※前回は、脱臼の重症だったようだ。そのときは、内山に相談し手術を選択している。この影響はどうなのだろうか。

拳の負傷は敗戦につながる

カルモナは、井上が拳を痛めたことに気がつかなかったようだが、これからはそうはいかないだろう。※解説者は、拳を痛めた可能性を指摘していた(見る人が見れば、わかっていた)。

もし、相手陣営が試合中に拳を痛めたことに気づけば、当然そのことを利用してくる

相手はある種のパンチ(痛めた拳によるパンチ)を想定から外すことができ、(井上の)狙いもわかりやすくなるため、対応しやすくなるのだ。※手数が減るので、ポイントで勝てる可能性も出てくる。

また、「焦る」ということもある。

拳を痛めたため、相手によっては、(まだ打てるうちに)早く倒そうと焦ることがあるのだ。

今回の試合でも、気持ちの焦りからか、攻めに(緻密さを欠き)粗くなっている、というシーンがあったと思う。相手が超一流であれば、拳を痛めると即敗戦につながるだろう。

対応力の問題がある

浜田さんが指摘しているのが、対応力の問題だ。

今後は、自分より相手の方が研究で勝る、というケースが増えるだろう。

カルモナは、井上尚を研究し尽くし、徹底していいところを消しにかかってきた。序盤、井上尚の右はよく出ていたが、その右にカルモナは右を返す。左にも右を合わされ、加えて痛めたかな、と感じられるほど、井上尚が右を出す機会が次第に少なくなっていた。5回にチャンスをつかみ攻め込んだが6回、警戒した相手に前に出られ攻勢が続かない。カルモナにパンチ力、決定力がなかったから助かったところもあった。それを踏まえて浮き彫りになった課題は“対応力”だろう。
出典:【浜田剛史の目】井上尚弥、浮き彫りになった課題…そのときどう対応するか?

これはある意味、チャンピオンの宿命でもある。

ひとつには、チャンピオンに関する情報の方が多い、という点がある。

なので挑戦者は、チャンピオンの情報をフルに利用できるのだ。もうひとつは、チャンピオンが「相手の方が格下だ」と思えば、(気が緩み)相手の研究を疎かにしてしまうのだ。

良さを消された時どうする…

内山 vs. コラレスでは、そういう点が見られたように思う。

相手の研究が勝った場合は、自分の良さを出せなくなる…ということがある。

そして、自分の長所を封じられてしまうと、「こんなはずでは…」ということで、焦りが生じるのだ。※プロ同士の戦いだと、相手の良さをいかにして消すか、というところが問題になる。

相撲でいえば、自分が得意の四つ身になれない…という状態だ。

プランBを用意しているのか?

そんなときに問われるのが、咄嗟の対応力だ。

相撲でいえば、すばやく巻き替えを試みる、相手の上手を切る、小手に振るなど、自分から動いて局面を打開しようとしなければ、不利な体勢のまま、自分の力を出すことなく敗れてしまう。

※不利な態勢になっても最善の粘りを見せつつ、相手の焦りを誘い、(相手が不用意な動きをしたときに)その一瞬の隙をついて逆転する、という方法もある。強い選手は対応力が高いのだ。

引き出しがあるのか

対応力を上げるためには、普段から不利な状況になることを想定しての練習が必要になる。

また、対応の「引き出し」を、あらかじめ豊富に用意しておく、ということも必要になるだろう

井上選手は、拳を痛めたあと、距離を詰めて左フックでKOする、というプランを立てたが、(カルモナのディフェンスの上手さもあり)左でさばくことしかできなかった…と嘆いている。

※それでも、最終ラウンドに見せた「ボディ集中 ⇒ 上」の攻撃は見事だった。

ディフェンスの問題

この試合を通じて、意外とパンチをもらったな…という印象を受けた。

事前のスパーリングでは、すごいディフェンスで、まともなパンチを一発ももらわなかったそうなので、「打たせずに打つ」という川島郭志ばりのボクシングを期待したのだが、そうはいかなかった。

※スパーリングの情報は、話半分で受け止めた方がいいだろう。

不用意にパンチをもらう

ディフェンスに集中している局面では、パンチをもらわないのだが、脚や上体の動きが止まったときに、不用意にパンチをもらっているように見えた

本人も、「これぐらい(のパンチ力)ならば、もらっていいか、という気持ちがあって、パンチも結構もらった」とコメントしている。

本人は、パンチをもらったことを「修正するポイント」として挙げているので、今後は期待できると思う。長くボクシングを続けるためには、余計なパンチをもらわないことが大事だ。

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井上尚弥の苦戦を検証する - サマリー

まとめ

今回の記事では、井上尚弥の苦戦を検証してみた。

井上は、彼の強打を恐れる選手、警戒しすぎる選手に負けることはない。

問題は、そうでない選手の場合だ。田口やカルモナの場合は(タフでハートが強く)後者に属するが、技量的に井上がはっきり上回っていたので、やや苦戦しても、負けることはなかった。

だが、セルバニアクラスになると、負けが見えてくる。

セルバニアは2階級上だが、同じ階級の選手ではロドリゲスあたりだ。ロドリゲスは、技量的にセルバニアより上かもしれない。これまでの苦戦の検証からは、彼が危険ということになる。

井上尚弥の強さの秘密をまとめました。

今回の記事:「井上尚弥の苦戦を検証する」