ミラーリングという言葉をご存じだろうか。
広く紹介されている心理学用語なので、知っている人も多いと思う。
端的にいえば、自分が「相手が映る鏡のように振舞う」ということで、そうすることにより相手の自分に対する印象が良くなる、とされる(本当だろうか?)。本当に「相手の真似をすれば、自分の好感度が増す」ということであれば、簡単そうだしやってみようかと思う人も多いだろう。
今回は、このミラーリングについて書いてみたい。
目次
ミラーリングとは
鏡のような振る舞い…
ミラーリングという心理学用語を聞いたことがあると思う。
その言葉を知らなくても、相手の好意を引き出すために、相手の仕草を真似することだ…と聞くとピンとくるだろう。ミラーは鏡なので、自分が鏡のような振る舞いをする…と考えればいい。
ミラーリングの上位概念として、「ペーシング」というものがある。ペーシングというのは、端的にいえば「相手のペースに合わせること」だ(相手の仕草や感情、態度や話し方に合わせる)。
ペーシングとの違いは
ミラーリングは、ペーシングより狭義の意味で用いられる。
相手の仕草・ボディランゲージを真似することに限定される。たとえば、相手が飲み物を飲んだらこちらも飲む、髪を触ったら髪を触る、鼻に手をやったら鼻に手をやる…という具合だ。
相手が笑ったらこちらも笑う、ということもそうだろう。鏡にうつる目に見える行動を真似する、ということだ。本来はそういう意味だが、この記事では意味を広くとって考えてみたい。
ミラーリングは有効?
類は友を呼ぶ効果がある
なぜ、コミュニケーションにおいて、ミラーリングが有効なのだろうか。
人は自分と似ているな…と感じると、親近感を抱く。内向的な人であれば、内向的な人に親近感を抱くし、外向的な人であれば、外向的な人に親近感を抱く。「類は友を呼ぶ」というやつだろう。
逆に自分とは違うな…と思えば、距離をとる。関心が向かない…としてもいいだろう。
関心を持たれて悪い気はしない
また、相手が自分の仕草に倣っていれば、
この人は「自分の仕草をよく見ている」、「自分に関心があるのだな」と思う。
また、相手が自分に倣うので、自分がリスペクトされている…という気持ちになることもあるだろう。普通は、関心を持たれて悪い気がする人はいないので、ミラーリングが有効になるのだ。
※逆に、無関心・無視は人間関係において害になる。
ミラーリングの例は
ミラーリングの具体例は
ミラーリングの具体例をいくつか挙げてみよう。
先にも書いたが、相手が飲み物に手を伸ばしたら、自分もそうする。会食の場面であれば、相手と同じオーダーをする、相手がおしぼりを使ったら、自分もそうする。相手が食べ始めれば、自分も食べ始める。
お箸・フォークなどの使い方を真似る、相手と同じ順番・ペースで食べる、などが考えられる。もちろん、やりすぎは禁物なので、ポイントを絞っておいた方がいいだろう。
※食事中の姿勢や手の置く位置を同じにする…という方法もある。
悪い印象を与えるものも
相手が腕を組んだら自分も腕を組むとか、相手が足を組んだら足を組めばいい…とする人もいる。
だが、わたしはこれはどうかな…と思う。相手に悪い印象を与える可能性のある仕草やボディランゲージは、(たとえ相手がしていても)真似しない方がいいだろう。
ミラーリングの効果より悪い効果の方が勝り、相手に悪い印象を与えてしまう可能性があるためだ。※自分勝手な話だが、自分はしてもいいが、相手にされるのは嫌だという仕草がある。
ミラーリングの失敗例は
ミラーリングをやって、失敗することもある。
ひとつは、「過剰にやってしまう」ということだ。
ミラーリングは、やればやるほど効果がある、というものではない。あるレベルを超えてしまうと、相手は「なんだか気味が悪いな」、「テクニックとしてやっているのだろうか」と感じる。
※わざとやるのはいいが、相手にわざとやっている…と思われるとアウトだ。
ミラーリングのことは、多くの人が知っている。実践する人もたくさんいるだろう。なので、あなたと対峙する相手も、そのことを知っている…と思っていた方がいいだろう。
腕組みは自重したい
もうひとつは、先に述べたように「自分はしてもいいが、相手にされるのは嫌だという仕草」を真似することだ。
「自分はしてもいいが、相手にされるのは嫌だ」というのは極めて自分本位だ。
だが、実際にはそういうものがある。たとえば、腕組みだ。自分は腕組みしてもいいが、相手にされるのは嫌だ…という人はいるだろう。なのでその種の仕草の真似は、自重した方がいい。
そのほか
相手の心を映す鏡にもなる
ミラーリングを成功させるためには、相手の感情にあわせることが必要だ。
これは、相手の感情と歩調をあわせる、ということだ。相手が笑えば笑うし、相手が喜んでいれば、一緒に喜ぶ、相手が悲しんでいれば、一緒に悲しむし、相手が何かに怒っていれば、自分もその怒りを共有する…といった具合だ。相手の心を映す鏡の役割もする…と考えればいいだろう。
相手に共感するということ
コミュニケーション能力の高い人は、このことができている。
このタイプの人は、こちらの感情を上手に汲み取って、反応してくれるのだ。
ときには、こちらの感情よりも大きく返してくれることもある(笑)。そんなときは、相手が自分に「共感してくれた」と思い、心が満たされるものだ(コミュニケーションが成功する)。
ミラーリングとは、相手の心を映す鏡になることでもある、と考えておけばいいのだ。
相補的ミラーリングの意味
相補的ミラーリングというものがある。
相補的ミラーリングは、ミラーリングとは違い、同じ仕草ではなく、逆の仕草をする…というものだ。
たとえば、相手が椅子に深く座ったら自分は浅く座り、相手が椅子に浅く座ったら、自分は深く座るというものだ。一般に、ミラーリングの間に相補的ミラーリングを入れればいいとされる。
ミラーリングばかりでは、わざとらしくなったり単調になり効果が薄れることもある。なので、相補的ミラーリングを使うことにより、本来のミラーリングの効果を高めよう…ということだ。
単独でも機能する
わたしは、相補的ミラーリングは単独でも有効に働く場面があると思う。
たとえば、相手が緊張してかたくなっているときだ。
その状態で、ミラーリングをして自分もかたくなっても仕方がない(笑)。そんなときは、相補的ミラーリングを使って、リラックスしたり、明るく振舞ったり…という行動が効果的だ。
心理学|ミラーリングを使う - サマリー
まとめ
今回は、ミラーリングについて書いてみた。
ミラーリングをすれば、相手の興味を惹くことはできる。「あなたに関心を持っている」ということが相手に伝わるためだ。
ただ、やみくもにミラーリングをすればいい、というものではない。やりすぎると、「この人は不気味だな」、「わざとやっている」、「テクに溺れているのでは」と思うためだ(笑)。
相手の心が映る鏡のようにも振舞いたい。
それは、「相手の感情と歩調をあわせる」ということだ。相手の感情を汲み取るだけでなく、キチンと反応したい。そうすれば、相手は「共感してくれた…」と思い、満足するだろう。
もちろんテクではなく、本当に共感した方がいい。共感しようと思っていれば、案外共感できるものだ。わざと使うことはいいのだが、心を入れないと相手に見透かされることになる。
今回の記事:「心理学|ミラーリングをわざと使ってみる」