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ボクシング:山中慎介の敗戦を深く考える

山中慎介が負けてしまった。

具志堅の記録に並ぶかという大一番だったが、残念ながらそうすることはできなかった。今後の進退については、まだ結論に至っていないようだ。驚いたことに山中は、13度目の防衛に成功した場合、引退も考えていたようだ。だが、こういう形で負けになった結果、思わぬ形で悩むことになったようだ。試合内容に「納得できない」という気持ちがあるのだろう。

今回は、山中慎介の敗戦を深く考えてみたい。

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目次

山中慎介とは

1982年生、171cm、27勝1敗2分19KO。

今年35歳を迎える山中だが、今回の敗戦が初黒星となった。

ウィキペディアによる山中評は、「世界トップクラスとしてはパンチのバリエーションは非常に少ないが、ボクシングにおいて最も基本のコンビネーションであるワンツーを徹底して極め、回避不可の必殺技にまで昇華させている」というものだ。
出典:ボクシング|パウンド・フォー・パウンド

あえてひとつの技を磨くことを選び、その技を必殺技にまで昇華させためずらしいタイプの選手だ。

※PFPのランキングで、9位になったこともある。

この記事を書いたとき、懸念すべきは「格下相手にもクリーンヒットを許すようになったことだ」、「もし対戦相手が、コラレスが内山の右を狙ったように、山中の左を狙ってきたら…危ないような気がする」と書いた。また、「あと1つで具志堅の防衛記録に並ぶが、抜けるかどうかは対戦相手の力量次第だ」とも書いた。

将来起こることは、すでに現在起こっている、ということを考えると、「格下相手にもクリーンヒットを許すようになったこと」が、今回敗戦として顕在化した、ということかもしれない。

ルイス・ネリ(メキシコ)

今回、山中を倒したのはルイス・ネリ(メキシコ)だ。

1994年生、165cm、24勝無敗18KO。フック系の連打が武器のボクサーだ。身長では山中が5cm、リーチでは7cm上回るが、胸囲ではネリが3cm、視力でも1.5のネリが1.2の山中をやや上回る。

試合前の報道では、ネリは軽量後に体重を8kg以上戻す、とされていた。この体重差が、体圧の差になったのだろうか。※実際は5.4kg戻したそうだ。

ネリは、アウエーで戦う意味をよく知っており、序盤から強く圧力をかけていく(そして、KOを狙う)という作戦だったようだ。ネリは6回KOで勝つと宣言している。

※それが、自分のボクシングスタイルでもある。

※試合前のスパーリング・パートナーが、ネリの左フックが見えないとコメントしている。また、気付いたらどんどんパンチをもらう感じで、くる角度がわからない…というコメントをしている。

1R

山中のジャブがいい。山中の状態は良さそうだ。

山中は試合前、「自分でも褒められるぐらい良い状態」と、自身のコンディションについてコメントしているが、その言葉に偽りはないようだ。山中のワンツーが軽くヒットするシーンもあった。

ネリはボディーを狙いながら、ストレート系のパンチ+ワイルドなフックを振ってくる。パンチが多彩で力がある。1Rは、山中のジャブが結構当たるな…という印象だ。だが、ラウンド後半になると、ネリが山中のパンチをかわすシーンがみられた。早くも、山中のパンチを見切ったのだろうか。

※試合後ネリは、山中のジャブがあんなに強いとは思わなかった、とコメントしている。山中のジャブは、効果があるようだ。

2R

ネリが踏み込んでくる。

ネリが山中の左をかわして、カウンターで左を合わせる。

当たりが深くダメージにはつながらないが、すぐに右の返しを入れる(フックで引っ掛けて、返しを狙っているのだろうか)。これも空振りしたが、この一連の動きがネリが練習してきたパターンだろう。山中の左に対するネリのカウンターが決まれば、そこで試合終了だ。相当怖い。

ネリは大きなパンチを空振りしても、バランスを崩さない(体が流れない)。強いパンチの連打もきくので、一流選手が持つ体幹の強さを備えているとみていいだろう。山中は上下のジャブの打ち分けでポイントを稼ぐが、ネリの鋭い踏み込みからのフックが山中をとらえる。

※ネリは、山中の甘いジャブの引きを狙った。

山中は咄嗟にスリッピング・アウェーでパンチを受け流すが、見栄えはよくない。終了間際にも、ネリは山中の甘いジャブの引きを狙い、ワイルドな左フックを山中に当てる。山中は、パンチの引きを狙ったネリのカウンター攻撃に注意しなければいけない。

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3R

山中は鋭いジャブで、ネリをコントロールしようとする。

コンパクトで鋭いジャブであれば、カウンターをもらうリスクは下がる。ネリがコントロール下にある状態で、左、右、左と出して最後の「左」を当てる。

※山中のいいパターンだ。

ラウンド後半、ネリはどんどん前に出てくる。軽く被弾するシーンはあるが、山中は上手くネリをいなす。コンパクトで鋭いジャブを放ち主導権を握れば、ネリは強引に出てくるしかなくなり、山中のラウンドになりそうだ(山中の左も当てやすくなる)。

※ネリは試合後、3Rから山中のパンチが読めてきた、とコメントしている。尚、この回までのジャッジは、2人が1ポイント差でネリを支持していた。

4R

3Rの反省があったのだろう、ネリが序盤から前に出てくる。

中盤、ネリが山中のパンチを外すシーンが目立つ。パンチを外すことでリズムを作ったのか、山中の甘い右が出たタイミングで、強烈な左、右を山中に当てる。山中がバランスを崩したところに、ネリの開き気味の右が入る。

ネリはとにかくパンチの回転がきく。ガチャガチャした展開から右を当てる。落ち着いたら、山中の左に対し右フックを合わせる。空振りしても、返しをどんどん放ってくる。パンチの種類を細かく変えて、目先を変え当てようともしてくる。

山中もよくかわしているのだが、ネリに圧力負けしているため、体のバランスが悪く反撃の手がない。後半には、山中が棒立ちでワンツーをもらう、というシーンもあった。

山中が防戦一方となったシーンで、タオル投入+セコンドのリングインがあり、試合が終了する。

タオル投入は早すぎた?

タオル投入が早すぎた、という意見がある。

たしかに、私も「えっ?」と思った。レフリーもあの時点では、止める考えはなかったようだ。関係者の間でも、タオル投入の判断には賛否が分かれているそうだ。

山中自身は、「そんなにもらっているつもりはなかった」、「大丈夫だった」とコメントしている。だが、残り30秒あったことを考えると、数発クリーンヒットを受けた可能性はあるだろう。

※トレーナーは、ここまでの試合の流れ+山中のダメージを考えたのだろう。

続けても負けていた?

試合を止めずに続けていたら、どうなったのだろうか。

山中に有利なシナリオは、後半ネリが失速し山中の左が決まる、というものだ。そのためには、山中が余力を残しつつ、ネリの猛攻をさばかなければいけない。具体的には、コンパクトで鋭いジャブを放ちつつ、足やクリンチを有効に使わなければいけない。

※ネリのことを「大したことはない」と思っていたようなので、さばける可能性はある。

ありそうなシナリオは、ネリが(4Rに決まらなければ)6~7Rまでに試合を決める、というものだ。山中がみれば、自分から踏み込んでいく、山中が打ってくれば、カウンターか打ち終わりを狙い、風車のような攻撃につなげる。このパターンで山中を倒す、というものだ。

後半まで行けばネリは失速するだろうが、そこまで余力を残しながらネリをさばくことがむずかしいのだ。反応速度の差も気になるところだ。

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まとめ

今回は、山中慎介の敗戦を深く考えてみた。

山中のコンディションはよかったと思う。ネリのそれもよかっただろう。なので、両者の持ち味が出た試合にはなったと思う。ネリはいい選手だ。振り回しているだけの選手ではない。体幹が強く、風車のような攻撃ができる。フックだけではなく、ストレートやアッパーも上手くて強い。

ディフェンスや戦略もしっかりしている。1Rでは山中のジャブを被弾したが、素早く山中のパンチに適応し、カウンターや打ち終わりを狙うことができるようになった。山中の左を必要以上に怖れることもなく、ガンガン踏み込んできた。自分に自信があり、メンタルも強いのだろう。

山中選手は残念だったが、今後の動向を見守りたい。現役を続行するのであれば、もちろん応援したい。年齢やダメージ的には、まだまだやれるはずだ。現役を続ける場合は、ネリとのダイレクト・リマッチを望んでいるようだが、その際は周到な準備が必要になるだろう。

今回の記事:「ボクシング:山中慎介の敗戦を深く考える」