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高校野球 - 済美の魔法伝説がまたひとつ誕生

済美の魔法伝説がまたひとつ誕生した。

済美というと、校歌の歌詞の印象からか「魔法」というイメージがある。

不可能を可能にする「神がかった試合」をする、というイメージがある。「やればできる」という精神のもと、最後まであきらめない…という粘りが、不可能を可能にしてしまうのだろうか。

今回は、済美の新たな魔法伝説になる試合について書いてみたい。

目次

 

魔法伝説とは

済美の魔法伝説とは

魔法伝説

時は2004年春にさかのぼる。

初出場の済美ダルビッシュを擁する東北高校が準々決勝で激突。

東北高校は、ダルビッシュのほかにも真壁という好投手を擁し優勝候補であった。

試合は序盤から東北ペース。初回に3点を入れ、その後小刻みに得点を重ね、9回表終了時までに6-2とリードする。真壁は鵜久森の一発で2点を失うも、しり上がりに調子を上げ、済美打線は沈黙を続ける。

9回裏、済美の最後の攻撃。

先頭打者が久しぶりのヒットを放ち、その後3塁打が出て1点を返す。次の打者の二塁ゴロの間に1人返って6-4まで追い上げる。しかし、その次の打者が二塁ゴロで2アウトランナーなし。

甲子園の魔物か…

次の打者が2-2のカウントからファールフライを打ち上げ万事休す。

だが、2塁手がやや大回りに打球の落下地点にアプローチしたため、捕球できず(風の影響があった)。民放のアナが、箕島と星稜(1979年の史上最高の試合)のファウルフライを引き合いに出す。

その後は、箕島と星稜のときのようなホームランではなかったが、ライト前ヒットで出塁。

魔法伝説が誕生

打席には2番の小松。三遊間を抜くヒットで繋ぐ。

次は3番の高橋。2球でツーストライクまで追い込まれる。

高橋は打つ気満々。ボール気味の球にも手を出す。ここは、ストライクがいらない場面だ。ところが、真壁は結果的にストライクを投げてしまう(シュート回転して中へ…)。

※これが痛恨の失投になる。

高橋はこの球を思い切って引っ張る。レフトのダルビッシュは頭上をはるかに超える球を見送るしかない(このシーンは未だによく映像で流れる)。甲子園に流れる勝者済美高校の校歌。「やればできる」は魔法の合いことば~

こうして、済美の魔法伝説が誕生した。

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新たな魔法伝説が誕生した

済美 vs. 星稜

時は2018年夏。初めてタイブレークが導入された夏の大会だ。

済美は、2回戦で優勝候補の星稜と対戦した。

星稜は、地方大会5試合で53点を取り、かつ無失点という圧倒的な強さで勝ち上がってきた。

1試合平均で10点以上叩き出す打力はもちろんだが、無失点の投手力も相当なものだ。最速150キロを投げる本格派の奥川を筆頭に層がとても厚い(済美戦では、6投手が投げている)。

※星稜と済美の両監督は、松井5敬遠試合の両校(星稜と明徳)の選手であった。

完全に星稜ペース…

初回に星稜は、済美のエース山口の球を捉える。

星稜の各打者は、山口の低めのスライダーの見極めができており、ボール球に手を出さない。

長短打5本を集め、あっという間に5点を奪う。

その後は済美のミスもあり、3回、5回にも得点を重ね、8回表終了時まで7-1と大きくリードする。一方済美は、7回まで5安打。1点返すのが精一杯。※星稜の奥川は怪我(軸足のふくらはぎがつったようだ)のため4回で降板している。

打たれるし、ミスをして失点するし…で、済美の勝ち目がとても薄かった。星稜の打力を考えると、7点で終わるとも考えにくい。このあたりで見切り、見るのをやめた人も多かっただろう。

斜め上の8回の8点

ここで見るのをやめた人は後悔する。

済美が8回裏に8点を取って試合をひっくり返す。これは、相当ありえないことだ。

この8点を振り返ってみよう。

9番の政吉が頭部に四球を受け出塁。1番の矢野が投手強襲の(間一髪セーフの)ヒット。2番の中井が三遊間を抜くヒット(三塁手がバウンドを合わせられない)。これで1点返す。

3番の芦谷はレフトにいい当たりを放つも、レフトの東海林がダイビングキャッチの好守。済美のいい流れが止まるかと思われたが、4番の池内は浮いた球をレフト前に引っ張る。これで7-3。

5番の伊藤はセンター前へ。一死満塁。6番の山口は死球で押し出し。これで7-4。

※山口は済美の(事実上)唯一の投手。足への死球が投球へ影響を及ぼす可能性が懸念された。

ここで星稜の投手が交代(竹谷 ⇒ 寺西)。

7番の山田は内野フライでアウト。二死満塁。8番の武田は二塁への内野安打(これも間一髪セーフ)。これで7-6。フルカウントであったために、走者がスタート。2点になった。

ここで、この回の先頭打者であり、頭部に死球を受けた政吉に打順が回る。政吉はレフトに高々とフライを打ち上げる。これが、逆転の3ランホームランになる。なんという8点だろうか…。

星稜が土壇場で力を発揮する

星稜にとっては悪夢の8回裏だったが、このままで終わるわけにはいかない。

1アウトから3番の内山がライト前ヒット。4番の南保も1、2塁間を破る。5番の竹谷もセンター前にはじき返す。1点返し9-8。2死1、2塁。7番の鯰田の打球は、レフト前にふらふらっと上がる。レフトはダイビングキャッチを試みるが、惜しくも捕球できず。9-9の同点に。

土壇場で星稜が持ち前の打力を発揮し、ドラマチックな試合になってきた。

12回裏にドラマが…

12回裏済美の攻撃。先頭打者3番の芦谷の当たりはレフトへの大飛球。

切れなければサヨナラホームラン、という当たり。惜しくも、ファールになる(風の影響あり)。

スタンドがどよめく。

気を取り直した芦谷は、難しい球を右中間に運び二塁打。無死二塁。サヨナラのチャンス。

星稜は4番を歩かせ塁を詰める。

5番の伊藤がきっちり送り、1死2、3塁。サヨナラのチャンスが続く。星稜は満塁策をとる。1死満塁。次の打者は、代打の徳永。カウントが3-1になり、徳永は四球によるサヨナラを狙う。

次の1球は低めの変化球。ボールにも見えたが、ストライクの判定。3-2。最後の球も見送り、三振。二死満塁。8番武田。武田も寺沢の制球の乱れを目にし、四球を狙う。カウントは徳永のときと同じように3-1。バントの構えで牽制するも3-2。最後は低め一杯を見送り三振。

この大ピンチを鮮やかに切り抜けたことで、流れは星稜に傾く。

13回表・星稜が勝ち越す

無死1、2塁からの星稜の攻撃。※タイブレークに入る。

1番東海林がランナーを進める上手いバッティングで1死2、3塁に。

2番河井は3塁前への弾むゴロを打つ。3塁手が補殺を狙うも、送球がワンバウンドになりセーフ。このあたりは、星稜に流れがきている感じだ。星稜が10-9で勝ち越し。1死1、3塁。

ここで佐々木が(低めのむずかしい球だったが)スクイズを決め、11-9。2点差つける。

※星稜の見事な攻撃が決まる。試合の流れは依然として星稜だ。

13回裏・済美の魔法が…

2点を追う済美。逆転の3ランホームランを放った9番の政吉から。

※無死1、2塁。

3塁前にセーフティバントを試み、セーフになる。無死満塁。

ここで1番の矢野。初球の低めの変化球をすくい上げる。

打球は高々とライトのファールグラウンド方向に舞い上がる。打った矢野もファールかと思い、一度打席に戻りかける。普通であればファールになる当たりだが、このとき強い風がライトからレフト方向に吹いていた。打球はその風に押される形になり、ライトポールを直撃するホームランになった…。

史上初の逆転サヨナラ満塁ホームラン、という結果になった。

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済美の魔法伝説がまたひとつ誕生 - サマリー

まとめ

今回は、済美の新たな魔法伝説になる試合について書いてみた。

今回の済美と星稜の試合は痺れた。

済美サイドは、7回まで敗戦ムードが漂っていたのに、ちょっと考えられないような8回の8点でそのムードを一掃してしまった。だが、土俵際でうっちゃられそうになった星稜も、9回の土壇場で底力を見せる。

12回には大ピンチを二者連続三振で切り抜け、勝負の流れを手繰り寄せる。

その流れに乗り、13回は鮮やかに2点を奪い勝ち越す。

その裏の済美の攻撃がマジカルだ。

普通は決まらないようなセフティーバントを決め、史上初の劇的な逆転サヨナラ満塁ホームランへ…。一体、何がどうなっているのか。済美のすごいところは、優勝を狙う強豪相手にこういう試合をやってしまうところだ。東北高校しかり、星稜高校しかり。やればできることもあるのだ。

今回の記事:「済美の魔法伝説がまたひとつ誕生」