人を動かす力(強い影響力)を持つ人がいる。
説得力があり、妙に引き込まれる…その人の話からは、そんな印象を受ける。
そんなときは、その人に人を動かす(天性の)カリスマ性がある、ということで済まされることが多いのだが、人が持つ影響力の多寡は、ある程度理屈で説明することができる。
そしてそれは、もちろん努力次第になるが、普通の人であるあなたも「人に対し影響力を持つ人」、「人を動かす力を持つ人」になることができる、ということを意味する。
※以下、アリストテレスの主張で説明してみたい。
目次
- 目次
- ロゴス(ロジック)があるか?
- 自分に当たり前のときは注意する
- パトス(情熱)があるか?
- 自己承認を強くする
- エトス(信頼)があるか?
- 天賦の才(カリスマ性)は必要ない
- 人を動かす力を持つためには - サマリー
ロゴス(ロジック)があるか?
これは、話の論理展開のことだ。
端的にいえば、相手が納得できるように(理屈を用いて)説明できるかどうかだ。
たとえば、結論は「C」だ、その結論をサポートする根拠は「A」と「B」だ、という話の構成であれば、AとBが合理的に、結論であるCをサポートしていなければいけない。
そこが上手く機能して、聞き手が「なるほどそうだね!」と思えばロゴスがあるし、「根拠が薄いのではないか…」、「強引で無理筋だな…」と感じれば、ロゴスはないか弱い。
自分に当たり前のときは注意する
こう書くとシンプルだが、実践すると意外に難しい。
聞き手に合わせて表現を工夫する必要があるし、結論ありきで根拠を集めたのであれば、その根拠が不適切であったり、根拠と結論のつながりが、強引になったりすることがあるからだ。
※そのことに気づかず、「なぜわからない!」と、相手に責を押し付けることもある(笑)。
たとえば、ブログを書くときでも、「結論ありき」で書こうとすると、結論に至るまでの過程で丁寧さを欠いてしまうことがある。それは、結論が(自分には当たり前のように)明確にわかっているだけに、説明を端折ってしまい、論理展開に「強引さ」が出てしまうことがあるためだ。
※我田引水的なロジックでは、相手は納得しないだろう。
パトス(情熱)があるか?
あなたの言葉や説得には、パトス(情熱)があるだろうか。
人は理屈だけでは動かない。
あの人の話は理屈としては正しいけれど、あまり好きな人ではないな…と感じると、その人の意に沿った動きはしない。たとえば、営利を追求するビジネスの場においても、理屈ではなく、人の好き嫌いで動くことは普通にある。
※数字上多少損をしても、気分がいい方が勝る(質的な得がいい)、と考える。
人は感情の動物なので、「理」だけではダメで、「情」の部分へ働きかけを受けないと、なかなか動かないのだ。人の行動は不合理なので、理がなくても、情だけで動くこともあるのだ。
では、熱意や情熱は、どのようにすれば持てるのだろうか?
自己承認を強くする
また、感情というのは伝染します。
自分が楽しければ楽しい感情が伝染し、悲しければ悲しい感情が伝染します。相手に熱意や夢や希望を叩き込むようにして、自分の中の感情のイメージを伝染させます
出典:効果的なプレゼンテーションとは
感情は伝染するので、自分が心から「こうしたい!」と本気で願うことが大事だ。
言い換えれば、強い信念を持つ、ということだ。もっといえば、強い信念を持つ=自己承認を強くする、だと思う。とりあえず、他人からの承認よりも、自己承認を強くすることだ。
本気で願えば人は動く…
たとえば、よく耳にするのが芸事の弟子入りだ。
弟子志願の人が、「どうしても、この人の弟子になりたい!」と本気で思っていれば、
一度や二度断られても、心が折れることはない。何度もあきらめずに師匠のもとへ通い詰め、その熱意が師匠の気持ちを動かし、弟子になることができた…という話は、古今東西結構ある。
つまり、「パトス」(情熱)で人は動くのだ。
エトス(信頼)があるか?
「ロゴス」、「パトス」、「エトス」の中で最も大事なのが、このエトス(信頼)だ。
相手に対して信頼感を持っていれば、多少ロジックに難があっても、「あの人のいうことならば…」ということで、問題にはしない。そして、相手の話を好意的に聞くだろう。
「エトス」は倫理、品性、人柄、精神、気風などを表し、いわば情報の送り手に信頼性を意味する。仏教の「徳」に近い。同じことを言っているのに、A氏が言うと嘘っぽく聞こえ、B氏が言うと説得されてしまうことがないだろうか。
出典:人を動かすプレゼンテーション
初対面などで、相手のことがよくわからない状態では、ルックスが信頼のポイントになる。
たとえば、小汚い恰好のセールスマンより、ビシッとスーツを着こなしているセールスマンの方が、顧客の信頼を得ることができるということだ(やりすぎは、逆効果になることもあるが)。
※余談だが、靴の汚い人は信用されないので要注意だ。
たしかに、視聴者からの信頼が求められるニュースキャスターなどは、いかにも…という高いスーツを着ている。これは、視聴者からの「エトス」(信頼)を得ようとするわかりやすい戦術だ。
この「エトス」(信頼)は、人を動かす力の土台のようなものだ。
天賦の才(カリスマ性)は必要ない
人を動かすのにカリスマ性は必要?
人を動かすために「カリスマ性」は必要ない。
わたしはかつて、人を動かす力を持つためには、「カリスマ性」が重要だと思っていた。
わたしが大学院で学んでいたとき、ある著名な教授がクラスに対し、「リーダーの資質で最も重要なものは何か?」と質問した。いくつか選択肢を示して手をあげさせたが、「カリスマ性」にたくさんの手があがったことを覚えている。
わたしもその中のひとりだったが…その教授は、「カリスマ性」は重要ではない(リーダーの必要条件ではない)と明言した。そのときのわたしは半信半疑で、「そうはいっても、リーダーにカリスマ性は必要なんじゃないの?」、「それで人は動くよね…」という思いだった。
カリスマ性は必要ない
だが、時を経るにつれて、「確かにそうだな…」と思うようになった。
カリスマ性のあるリーダーがよくマスコミに注目されるため、なんとなくリーダーにはカリスマ性が必要だ…と思ってしまう。
だが、人を惹きつけるようなカリスマ性がなくても、人を動かす力を持つ優秀なリーダーはたくさんいるのだ(地味なので、マスコミはあまり取り上げないが…)。
※もちろん、カリスマ性があればプラスになるが、ひとつの変数にすぎない。人を動かすための必要条件ではないのだ。わたしたちは、カリスマ性を過大評価しがちなので、注意したい。
派手な部分だけに目を奪われると、判断を間違ってしまうのだ。
人を動かす力を持つためには - サマリー
まとめ
人を動かす力(強い影響力)を持つ人がいる。
その人の話には説得力があり、聞き手は「そのとおりだ!」と感じ、その話に同調した形で行動したくなる。
そんなときは、その人に「カリスマ性がある」とされることが多いが、必ずしもそうではない。努力次第で、あなたも「人を動かす力を持つ(強い影響力を持つ)人」、になることができるのだ。
まずは、アウトプット(話す内容など)に「ロゴス」(ロジック)があるかどうかだ。
端的にいえば、相手が納得できるように、(理屈を用いて)説明できるかどうかだ。ここに、ほころびや破綻があれば、相手を動かすことが難しくなる。
※なので、常に話の筋道や理屈、根拠の妥当性をチェックしたい。
次に、「パトス」(情熱)があるかどうかだ。
人は理屈だけでは動かない…ということは、あなたの経験からもわかると思う。人は感情の動物なので、「理」だけでは不十分だ。「情」の部分へ働きかけを受けないと、なかなか動かないのだ。
最も大事なのはエトス(信頼)
最後に、「エトス」(信頼)があるかどうかだ。
最も大事なのが、このエトス(信頼)だ。
エトス(信頼)は、人を動かす力の土台のようなものだ。ここがしっかりしていれば、他の要素に多少難があっても、人が動く可能性が高い。逆に緩んでいれば、人は動かない(ジャッキの下の土台のようなものだ)。
※その分、一朝一夕で信頼を得る、ということはできない。
端的にいえば、「ロゴス」(ロジック)、「パトス」(情熱)、「エトス」(信頼)が揃えば、人は動く。これらを持つ人は、人を動かす力(強い影響力)を持っているとしていいだろう。
今回の記事:「人を動かす力のある人へ…影響力を持つためには」