株主優待目当てで株を買う…という人は多いと思う。
おすすめの株主優待を教えてほしい、と思う人も多いだろう。
自分が使わない株主優待であれば、もらっても意味がないが、自分が使うものであれば、大きな意味がある。「配当+株主優待」で、得した気分になるだろう。
だが、どこの会社が自分が使う商品や欲しいグッズを優待として出しているのか…を調べるのは結構大変だ(笑)。また、株価が高い時に買ってしまっては、いくら配当と優待があるからといっても、損になってしまう。
今回は初めてのテーマになるが、株主優待について書いてみたい。
目次
人気のある株主優待
ある調査によると、人気のある株主優待トップ3は以下のとおりだ。
2702 日本マクドナルドホールディングス
・優待食事券
100株以上 1冊
300株以上 3冊
500株以上 5冊
※三種類の商品の無料引換券が1枚になったシート6枚/1冊
参考価格(2015年12月30日):2620円/株
ここのところ、あまりいいニュースを聞かない日本マクドナルドだが、株主優待の人気は高い。
2590 ダイドードリンコ
100株以上 3000円相当の自社製品(飲料など)
参考価格(2015年12月30日):5610円/株
株主優待を利回りに換算すると、0.535%になる。※現在の定期預金の利率よりも高くなる。
2897 日清食品ホールディングス
100株以上 1500円相当の自社製品
300株以上 3500円相当の自社製品+オリジナルグッズ
1000株以上 4500円相当の自社製品+オリジナルグッズ
3000株以上 5500円相当の自社製品+オリジナルグッズ
※グッズは、ひよこちゃんオリジナルグッズ(1500円相当)。
参考価格(2015年12月30日):6430円/株
株主優待を利回りに換算すると、0.233%になる(100株の場合)。
3002 グンゼ
株主優待の価値は株数と反比例する
日本マクドナルドホールディングスの場合は、500株までは株数と冊子の数が比例している。しかし、それを超えると、いくら株を保有しようが、食事券が5冊から増えることはない。
ダイドードリンコの場合は、100株保有したときが、株主優待を利回りに換算したとき、最も高くなる。日清食品ホールディングスの場合も、株主優待の価値と保有株数が反比例していることがわかる。
このように、通常は株主優待の価値は保有株数と反比例する。 したがって、株主優待を利回りに換算したとき、最高になる株数を持つということが、(収益効率の点からみれば)大事だと思う。
ダイドードリンコのように、
株主優待をゲットできる最小の株数が、利回りの点からベストというケースがある。そこには会社サイドの、「新規の(個人)株主を増やしたい」という意図があるのだろうと思う。
株主優待を出す理由
なぜ株主優待を出すのか?
そもそも論だが、なぜ会社は株主優待を出すのか?という疑問がある。
事務的に面倒な株主優待を廃止して、その分を配当に上乗せした方が合理的ではないか?と考える人も多いと思う。
事実、株主は商品より現金で利益を還元される方がうれしいだろう…と考えて、(一部の株主から希望があっても)株主優待を出さないという会社もある。
商品より現金という考え方は、そのとおりだと思う。
利用しない・しにくい優待をもらっても、意味がない(だから、必ず利用する食品関係が人気上位にきている)。現金であれば、いくらでも利用できるので、その方がいいと考えるのは、ある意味当たり前のことだ。
ではなぜ、会社は株主優待を出すのだろうか?
株価対策
よくいわれるのが、「株価対策のため」ということだ。
上述の日本マクドナルドは、業績不振にもかかわらず、株価は大して下がっていないように見える。
そのほかの会社でも、(個人の株主が多く)気の利いた株主優待を出している会社は、業績が低迷しても、それほど株価が下がらないように見える。
保有効果がある
この背景には、「保有効果」という人の心理がある。
そもそも、株主優待を目当てで株を買った人は、(株価の変動にかかわらず)株を手放しにくい。そして、実際に株主優待を手にして満足すれば、「保有効果」というものが生じる。
これは、株主優待をゲットする権利を所有することに高い価値を感じ、それを手放したくないと感じる心理のことだ。
この心理があるため、会社の業績が低迷して株価が下がっても、株を売ろうとはしないのだ。※これに加えて、(塩漬けでもいいから)損切りをしたくないという心理もある。
社会規範(+マーケティング)
もうひとつ、株主優待を出す会社は、社会規範を大事にしているという可能性がある。
ドライで合理的な現金配当が市場規範だとすると、ウエットで手間のかかる株主優待は社会規範だ。
多少合理性を欠いても、株主とより積極的にコミュニケーションをはかろうとしているのが、後者に価値を見い出す会社だ。人にたとえれば、出張に行けば(同僚のために)必ずお土産を買ってきたり、上司や客先にお歳暮を送ったりするタイプだろうか。
会社は株主優待を出すことで、特に個人株主との関係を強くすることができる。「会社の(長期的な)ファンになってもらえる可能性がある」と考えているのだ。
※こう考えると、マーケティングの意味合いもある。B to B の会社よりも、B to C の会社の方が、株主優待に積極的な理由がここにある。
ただし、それは株主優待が的を射たものであれば…の話だ。
よく調べてから買う
意味のない株主優待
ところが、意味のない株主優待を出す会社がある。
たとえば、A社はあるチケットを株主優待にしている。
そのチケットは、使える場所が極端に限定されているので、(使いたくても)使うことのできない人がたくさんいる。また、そもそも対象が(誰もが消費する)食品のようなものではなく、個人の嗜好に大きく依存するものであるため、興味のない人は、優待をもらっても使わない。
このタイプの優待には、(多くの株主からみれば)意味がない。
手間をかけて株主優待を発行した会社、無駄なものを運んだ運送業者、それを受け取って、そのままゴミ箱に捨てる個人投資家…(その投資家は利益を受け取れないという不利益を被っている)一体誰得なのだろうか?※転売もできない。
マイナスの価値を生む
このような的を外した株主優待を出す会社は、上で述べたような株主優待を出すメリットを享受できない(逆にマイナスになっている)。
利用者(株主)のことをよく考えることなく、自社都合(上述の例の場合は集客目的)で株主優待を利用しようとするからそうなってしまう。
消費されない株主優待は、意味がなくマイナスなのだ。ぜひ、このタイプの株主優待を出している会社は、(会社と株主双方のために)優待内容を改善してほしいと思う。※B to C のビジネスをやる上において、相手の立場に立って考えられない…ということは、致命的でもある。
買うときは調査が必要です
最後に、念のため付け加えるが、会社は自由に株主優待の内容を変えることができる。
また、優待を廃止することもできる。株主優待目当てで買ったが、その後優待が廃止されて当てが外れた…ということもあり得るのだ。優待目当てで株を購入する際は、過去10年間、安定して優待を出しているのか…ぐらいの調査は必要だろう。
※株主優待を出す会社自体は、増えているようだ。
また、冒頭で書いたように、株価が高い時に買えば、いくら配当と株主優待があっても、損をすることになる。なので、利回りを計算して、「この利回りでOK」と納得できる時に買うべきだ。
株主優待欲しさに、判断を間違えてはいけない。我慢するときは、忍耐強く我慢する必要があるのだ。もちろん、会社の業績や将来性についても、勘案したい。
株主優待について考える - サマリー
まとめ
今回は、株主優待について書いてみた。
株主優待を目当てにするときは、「必ず自分が利用・消費するもの」を狙うべきだ。
あればいいかな・もしあれば、利用・消費するだろう…程度のものであれば、利用・消費しない可能性が高い。優待の場合は、おまけでもらう感覚があるので、そうなってしまうのだ。
さらに、優待に対する会社の姿勢や考え方を読まなければいけない。買うときは、株価水準を冷静に判断すべきだ。優待欲しさで飛びついて買うと、高値掴みになるだろう。
今回の記事:「株主優待について考える」