緊張すると顔がこわばる、手が震える…ということがないだろうか。
緊張のあまりそうなることは、めずらしいことではない。
将棋のプロの棋士が、過度に緊張する場面で手を震わす…というのは、普通にあることだ。ゴルフの選手など、スポーツ選手が手を震わせて、上手くプレーできない…ということもある。
この現象は、「イップス」という名前で知られている。イップスを防ぐためには、緊張をほぐす必要がありそうだ(この場合の緊張とは、適度の緊張ではなく過度の緊張ということだ)。
普通の人でも、親しくないが関係性のある人に話しかけられると顔がこわばる、会議やプレゼンで他人の視線を受けると、顔にさっと緊張の色が走り、顔がこわばる…ということがある。
今回は、緊張すると顔がこわばる…の改善方法について書いてみたい。
目次
顔のこわばりをなおす
昔からよくある方法
過度の対人意識や緊張が顔のこわばりの原因だが、緊張をやわらげる古典的な方法がある。
たとえば、手のひらに「人」という字を書いて飲み込む、人前で話すときは、目の前で聞いている人たちを、畑に並ぶ「かぼちゃ」だと思う、という方法があるが、これらは暗示系になる。
また、「緊張してはいけない…」と思うと、余計に緊張してしまうので、あえて「緊張してもいいんだ」、「緊張できるのはいいこと」とする、という方法もメンタルに働きかける方法だ。
※自分の(ある意味歪んでしまっている)認知へ正常に戻す働きかけをする、ということ。
正しく深呼吸したい
さらに、深呼吸する、という方法も一般的だ。
ちなみに、深呼吸するときは、「吐くこと」を意識するといい。
息を吐ききってから吸うというイメージだ。時間的には、<吐く時間が吸う時間の2倍>になるようにすればいい。また、吸い込んだ後、息を止めるプロセスを入れる、という呼吸法もある。
息を吐ききった後、1)4秒かけて鼻から息を吸い込む、2)7秒間息を止める、3)8秒かけて口から息を吐き出す、という呼吸法だ。
出典:血圧を手っ取り早く下げる方法
これは、「4-7-8呼吸法」と呼ばれるものだ。4セット以上やると効果があるそうだ。
深呼吸のほかにも、体を手でバシバシ叩いたり、(ストレッチなどの)筋肉をほぐす運動をしてみたり、という方法がある(体を手でバシバシ叩くことは、陸上の選手がよくやることだ)。これらには、緊張でかたまった筋肉をリラックスさせたり、血行を良くする、という効果がある。
イメージだけでもいい
突然誰かに話しかけられて顔がこわばる、という状況では、そんな暇はないだろう。
そんなときは、腹式呼吸をイメージするだけでも効果がある。
腹式呼吸ができない…という人もいると思うが、椅子に座り床に両手の指をつく姿勢をとり呼吸をすると、腹式呼吸になる。お腹が膨らむ感じがわかるはずだ。普段からこの腹式呼吸を行い、そのイメージを頭に入れておく。そして、いざというときに、そのイメージを取り出せばいいのだ。
この方法であれば、咄嗟の状況にも素早く対応できるだろう。
2つを組み合わせる
以上のように、緊張をほぐすためには、1)メンタルに働きかける方法、2)肉体に働きかける方法、の二通りある。両方を組み合わせて使うと、組み合わせ次第では効果が倍増するだろう。
希薄化・焦点をずらす
緊張点からずらす
過度に緊張する人は、緊張するスポットにフォーカスしている。
わざわざ緊張する部分に、自ら焦点を当てているのだ。
たとえば、「緊張してはダメだ」、「緊張を相手に悟られてはいけない」、「緊張がほかの人にばれると恥ずかしい」などと思っているため、その反作用として、緊張する部分に照準を合わせることになる。
さらに悪いことに、照準をそこに固定してしまう。
なので、この現象を回避するためのひとつの方法として、(先に述べたように)「緊張してもいい」と考える方法がある。「緊張を悟られてもいい」と考えるのだ。緊張することで、困難を乗り切る準備をしている、自分のパフォーマンスを引き出すことができる…としてもいい。
ずらすことが必要に…
緊張しやすい人は、わざわざ緊張する部分に焦点を合わせて固定している、と書いた。そうであれば、焦点を強制的にずらしてやればいいのだ。※これは、意図して行うことが必要になる。
緊張したら中に入る
まずは、ズームインする、という方法だ。
たとえば、気になる異性と話すとき緊張する、ということがないだろうか?
緊張のあまり、相手の顔をまともに見ることすらできない、という人もいるかもしれない。これでは、相手に挙動不審な人だと思われてしまう(笑)。そんなときは、「ズームイン」するのだ。
ご存じのとおり、相手の目をみて話したり、聞くことは緊張につながる。なので、(焦点をややずらして)相手の片方の目だけを見る、眉間を見る、鼻を見る、さらにはズームインして、目の瞳孔の部分(黒目)だけを見る、眉毛の1本1本を見る、肌の毛穴を見る…ようにすればいいのだ。
双眼鏡でも顕微鏡でも倍率を上げると、視野が狭くなる。視野が狭くなると、余計なもの(意味のない自意識など)へのリソースの流入を止めることができるので、自然に緊張しなくなるのだ。
外に出て希薄化する
ズームインとは逆に、ズームアウトする方法もある。
緊張している自分を(自分から距離をとり)第三者目線で見る、という方法だ。たとえば、天井に付けているカメラから、自分が直面している状況をながめてみる、ということでいいだろう。
いっそのこと、カメラをどんどん引いて、地球の外まで出てもいいかもしれない(笑)。
自分の直面している状態が、ちっぽけなことだと思えれば、緊張も和らぐだろう。世界のすべてだと思うから緊張する。※緊張の意識をズームアウトすることで、相対化、希薄化すればいい。
時間的に距離をとる
時間的にズームアウトする、という方法もある。
今の状況を、3年後、5年後、10年後の視点から考えるのだ。
5年後、10年後の視点で見れば、今自分が直面している状況の重みは小さくなるだろう(希薄化する)。ズームアウトすることの神髄はここにある。自分は大事だと思っているが実は、「自分が思うほど大したことではないのだ」と思えば、不必要な緊張がとれ、リラックスできるのだ。
内側から変化を起こす
姿勢が生む力を使う
過剰な意識や緊張があるときは、姿勢が生み出す力を使えばいい。
「ふり」でもいいから形を作れば、メンタルに影響を与える、という話だ。
人は他人を評価するとき、何を言うかで評価するが、同時に非言語的な行動による評価も行っている。
たとえば、その人が胸を張り背筋をピンと伸ばしていれば、きちんとしている、しっかりしている…という印象を持ち、伏し目がちで猫背であれば、なんとなくさえない…という評価をする。
内側から変化させる
ポイントは、「他人と同様に自分もそう評価する」ということだ。
胸を張り背筋をピンと伸ばしていれば、自分は堂々としている…と感じ、伏し目がちで猫背であれば、自分はさえない人だな…と思うのだ。つまり、自分と他人の評価が一致するのだ。
ただの「ふり」であって、自分がふりだと知っていても、そうなるのだ。
実は、この2分間のポーズにより、ホルモンの分泌がかなり変化する(自分が「ふり」だと知っていても効果があるのは、おそらくこのためだろう)。「心⇔身体」の関係があるのだ。
ある緊張をテーマにした番組で、手のひらを外に向けてウィンウィンと口づさみながら、両手を上にあげた状態から下ろせば、緊張をほぐす効果がある、としていた。こうすれば、口元の緊張がとれ、体を開くポーズをすることで適切なホルモンバランスになる、ということだろう。
緊張しやすい人は、緊張をほぐす方法として、試してみればいいと思う。
緊張すると顔がこわばる - サマリー
まとめ
今回は、緊張すると顔がこわばる…を改善する方法について書いてみた。
今回の記事で書いた方法は、1)メンタルに働きかける方法、2)肉体に働きかける方法だ。
前者は、緊張に対する認知を変える、意識の中で希薄化する、という方法だ。腹式呼吸をイメージする、という方法も前者にあたる。後者は、正しく深呼吸する、体を叩く、動作で内側から変化を起こす、という方法になる。
古典的なよくある方法でも、試してみればいい。そして、効果のあるものを採用すればいいのだ。
また、組み合わせも試してみることだ。単独では効果が薄いが、組み合わせることで、思わぬ効果が出る、ということもある。肉体的なアプローチと精神的なアプローチを組み合わせればいいと思う。緊張をほぐす効果的な方法が見つかれば、一生モノの財産になるだろう。
今回の記事:「緊張すると顔がこわばる…をなおす効果的な方法」