不器用な生き方をやめたい

人の心理や特徴を踏まえて合理的に行動したい

あなたは損失回避性で損をしている - 損を避けたつもりが…

損をすることが好き…という人はいない。損失は回避したい、と思うのが普通だ。

だが、「損をしたくないので、損に対する感度を上げる…」ということにも問題がある。

そうすることにより、自己に認知の歪みが生じ、行動に合理性を欠くことになるためだ。その結果、思わぬ形で損をすることになる。もともと人には損失回避性があるので、損に対する感度を上げることは不適切だろう。今回は、損失回避性で損をする、ということについて書いてみたい。

目次

 

損失回避性が作用する…

損に痛みを感じる

人は「損」をすることに、大きな痛みを感じる。

等価の損得があっても、得よりも損の方に大きく反応するのだ

このことを「損失回避性」という。

たとえば、1万円得ることと1万円失うことを考えてみよう。

同じ金額の損得であれば、人は「損」の方により強く反応してしまうのだ。たとえば、1万円得ることと1万円失うこと…どちらが感情のブレ(方向が逆なので絶対値で考える)が大きいだろうか?
少し考えればわかるが、感情のブレが大きいのは、1万円失うことの方だ
1万円得た喜びはすぐに消化されるが、1万円損したダメージは、尾を引いてなかなか消化されないのだ。
出典:あなたが現状を変えられない理由

方向は真逆だが、どちらの感情のブレが大きいのか…と考えると、1万円失う方だ。

1万円得た喜びは比較的すぐに消化されるが、1万円損したダメージは、尾を引いてなかなか消化されない…ということがある。負ったダメージは残りやすく、回復に時間がかかるのだ

※損は記憶に残りやすく(長期記憶になる)、どうしても後に引きずってしまうのだ。

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損をするのが怖い

このあたりのことを本能的に理解しているせいか、次の質問に対しては…

質問1:あなたの目の前に、以下の二つの選択肢が提示されたものとする。
選択肢A:100万円が無条件で手に入る。
選択肢B:コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。
出典:プロスペクト理論 - Wikipedia

Aと答え、この質問に対しては、

質問2:あなたは200万円の負債を抱えているものとする。そのとき、同様に以下の二つの選択肢が提示されたものとする。
選択肢A:無条件で負債が100万円減額され、負債総額が100万円となる。
選択肢B:コインを投げ、表が出たら支払いが全額免除されるが、裏が出たら負債総額は変わらない。

出典:プロスペクト理論 - Wikipedia

Bと答える。

いずれの質問も期待値は同額であるため、どちらを選んでも同じことだ。ゆえに、人の行動が合理的であれば、選択に偏りは生じないはずだ。だが実際には、選択に偏りが生じてしまう。

損をすることが嫌

質問1の場合、堅く利益を手に入れるため、選択肢Aを選ぶ…ということになる。

言い換えれば、損をすることが怖いのだ。選択肢Bを選んで0になったとき損をする…と考えるため、選択肢Aを選ぶことになるのだ。つまり、損に対し過剰反応している、ということだ。

質問2の場合は、選択肢Aを選べば確実に損をする。

それが嫌で損をしない可能性のある選択肢Bを選ぶ、ということになる。実は選択肢Aを選んでも損ではないのだが(減額されているため)、全額免除と比較して損だと思ってしまうのだ。

認知の歪みが生じている

このことから、認知の歪みが生じていることがわかるだろう。

ここではわかりやすく金銭の例を出したが、金銭だけの話ではない。自分の時間や労力を使って損をすることなど、自分のリソースを使うことにもいえることだ。人は損することに大きな痛みを感じ、それを回避しようとする、ということだ。そのために、合理性を失うのだ。

損失回避性で損をする

皮肉なことに、人は損を避けようとして、損をしてしまう。

損に対する感度の高さが原因になり、合理性を失うため、損をしてしまうのだ。

たとえば、先の金銭の例では、期待値が同じだったため、どちらを選んでも結果は同じだった。だが、たとえば質問1、選択肢Aの金額を100万円から90万円に変えたらどうだろうか。

質問1:あなたの目の前に、以下の二つの選択肢が提示されたものとする。
選択肢A:90万円が無条件で手に入る。
選択肢B:コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。

この場合は期待値が変わってくるので、選択肢Bを選ぶことが正解になる

しかし、選択肢Aを選ぶ人はおおいはずだ。90万が95万、98万になれば、さらにその数は増えるはずだ。期待値を計算できる人でも、99万であれば、選択肢Aを選ぶかもしれない。

損をすることがよくある

この例はシンプルな例で、期待値が計算できるのでわかりやすい。

実際の事象では、期待値がよくわからない…というケースが結構ある(むしろ、期待値が明確にわからないケースの方が多いだろう)。そんな場合は、損失回避性で損をしていることがあるのだ。

※損失回避性に引っ張られていないか、チェックする必要がある。

投資でよくあるパターン

その例として、投資でよくあるパターンを紹介しよう。

株式投資などで、時価が買値を上回り、利益がのったときは、その利益を失うことが怖くなる。「利益を失うこと=損」だと考え、「早く利益を確定したい」と思ってしまうのだ

そのため、些少の利益を確定するために「売る」ということになる。

逆に、時価が買値を下回り、損が出たときは、「損を確定したくない」という気持ちになる。したがって、含み損が出ても、「それは含み損で、確定損ではないから…」ということで放置し、含み損が拡大していく…ということになる。

買った株などが、いわゆる「塩漬け」になってしまうのだ。このような、小さく儲けて大きく損をする取引をしていると、結局は損をしてしまう。※初心者が嵌りやすいパターンだ。

これは、損失回避性で損をする、ということになる。

余計なリスクをとりがち

損に対する感度が高いと、余計なリスクをとりがちになる。

損をしたときに感情的になり、その損を取り返そうとする気持ちが大きくなるためだ。

ラスベガスに行ったときなど、ギャンブルをする機会があると思うが、損を取り返そうと熱くなっても、上手くいくことはない小さな損を取り返すため、余計なリスクを取って、さらに損を拡大する…というパターンが圧倒的に多い

一度や二度、たまたま上手く行っても、それが長く続く…ということはない。結局は、(浅慮で余計なリスクをとることは)非合理的な行動になるため、長くなると損をしてしまうのだ。

このことは、上で述べた株式投資などでも同様だ。

どの程度の歪みがある?

損失回避性により、どの程度の歪みが生じるのだろうか。

その歪みには、個人差があるのだろうと思う。

それを知りたければ、選択肢Aの金額を動かして、考えてみればいいと思う。

質問1:あなたの目の前に、以下の二つの選択肢が提示されたものとする。
選択肢A:[ ] 万円が無条件で手に入る。
選択肢B:コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。

90万なのか、95万なのか、98万なのか…または、90万以下でもOKの人もいるだろう。

※あなたが選択肢Aを選ぶ金額の下限は?

これには、そのときの懐事情など、その人が持つ<純粋な>損失回避性のみならず、他の要素も入ってくる。極端な例かもしれないが、生活やビジネスの資金繰りに困っており、どうしても今すぐ現金が必要なのだ…という人の場合は、30万程度でもOKかもしれない。

損失回避性は、同じ人でも諸条件により変化する…ということだ。

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損失回避性で損をする - サマリー

まとめ

今回は、損失回避性で損をする、ということについて書いてみた。

損失回避性により、自己に認知の歪みが生じ、行動に合理性を欠くことになる。

その結果、損をすることになるのだ。損を恐れるあまり、取るべきリスクを取らない、(損を取り返そうとして)取らなくてもいいリスクを取ってしまう、ということになりがちなのだ。

※デフォルトでは、まずい状況にある。

なので、実践的には、自分に損失回避性があることを認識し、それに(意図的に)補正をかける必要がありそうだ。そのためには、定量的なものさしを使い判断する、ということが必要になる。たとえば、(ラフでもいいから)期待値を計算し、それにしたがい判断するということだ。

今回の記事:「あなたは損失回避性で損をしている」