あなたは、交渉術をお持ちだろうか。
私生活でもビジネスでも、交渉するシーンがあると思う。交渉次第で、自分が得をしたり損をしたり…ということになるので、交渉力を高めることは必要なことなのだろうと思う。
ただし、自分の得を求めすぎると、逆に弊害が生じる。※交渉力を高めても、自分の得の追求はほどほどにすることが大事だ。今回は、交渉力を高める方法について書いてみたい。
目次
相手の話をきく
相手の話をよく聞く
まずは、相手の話をよく聞くことだ。
相手が受け入れがたい話をしてくることがある。
そんなときは、相手の話をぶった切って完全拒否したくなるが、その時点で「感情的になっている」ということであり、冷静に交渉を進める上では、好ましい状態ではない。
相手の話を聞くことには、メリットがある。
相手を尊重・承認する
ひとつは、(相手に主張に同意する・しないは別にして)相手を尊重する・承認する、というメッセージを相手に伝えることができる…ということだ。こうすることにより、相手の感情的な反発を抑えることができ、まともなコミュニケーションが成立する、ということになる。
※感情的な反発がないので、交渉がまとまりやすくなるのだ。
相手の考え方を理解する
ふたつめは、相手の考え方やロジックを理解することができる、ということだ。
相手がどのような根拠や考え方によって、そのような主張をするのか…ということを理解できれば、こちらも対策を立てることができる。相手のよって立つところがわからなければ、一方的にこちらの主張を述べたり、手探りで交渉を行う…というあまり好ましくない状態になる可能性がある。
ただし、相手の話をきくときは、注意すべき点がある。
引っ張られないようにする
アンカリング効果に注意する
相手の話をきくときは、アンカリング効果に注意する必要がある。
相手の主張がアンカー(基準)になって、そこに影響を受けることがあるのだ。
たとえば、(日本の会社ではあまりないシチュエーションだが)あなたが上司と来年の年収の交渉をしているとしよう。
上司から(このような理由で)君の来年の年収は、300万円だと提示があった。
その場合は、相手の提示額である300万円をベースにして、考えようとしてしまいがちだ。自分の労働には600万円の価値があると思い、600万円の要求をするつもりであっても、相手に300万円と言われれば、(自分の自信が揺らぎ)要求額を400万に下げようかな…と思ってしまうのだ。
相手の主張に引っ張られる…
もっと身近な例で考えてみよう。
パートナーが宿泊ありの旅行の提案をしてきた。
あなたは、近場の日帰り旅行で十分だと考えている。パートナーの話を聞いてみると、1週間ぐらいかけて海外旅行に行きたい、ということだった。
1週間の海外旅行を基準に考えると、とても近場の日帰り旅行というわけにはいかない。結局、日帰り旅行の提案をすることができず、2泊3日の国内旅行で手を打つことにした…これはありそうなことだ(笑)。
相手の主張をアンカーすると、そこに引っ張られることがあるのだ。
逆に自分が相手を引っ張る
自分の要求を提示する
自分の要求を提示し、そこから譲歩するという方法がある。
上で述べた「アンカリング効果」を相手に使う、ということだ。
これは、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックとして知られる方法だ。
最初に断られることを想定し、相手に大きめの要求をする。相手は当然その要求を断ることになるが、(その後)そこから譲歩し、最終的に本当の要求(狙いの要求)を通す、という方法だ。
※セールスマンが、いきなり顔を突っ込む、というイメージからのネーミング。
相手は申し訳ない…と思う
人は相手の要求を断ると、「申し訳ないな…」という気分になる。
なので、何度も相手の申し出を断るということはしにくい。そこの心理をついた作戦、ということができる。
先に、パートナーが海外旅行の提案をしてきた、という例を出した。
もしかするとそのパートナーの真の狙いは、宿泊ありの国内旅行をすることだったのかもしれない。あえて、1週間の海外旅行という大きめの要求をぶつけることで、最終的には真の要求を勝ち取った、ということになる。もしそうだとすると、交渉上手な人だと言えるだろう(笑)。
人の心理を利用する方法になる
自分の要求を提示し、そこから譲歩するという方法は、「アンカリング効果」や「何度も断るのは申し訳ない…」という人の心理を利用する方法だ。なので、効果が期待できるのだ。
上手な交渉の基本形は、この形かもしれない。
自分の要求を通すためには
交渉の基本形はわかったが、効果を高めるためにはどうすればいいのだろうか?
※付け焼刃で実践しても、上手くいかない。
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックでは、最初に「大きめの要求」をする。そして、その要求を相手に断らせることにより、相手に「申し訳ないな…」という気持ちを持たせる。
この気持ちが大きければ大きいほど、その後の要求が通る可能性が高くなるのだ。なので、相手に「申し訳ない」と思わせるためには、どうすればいいのか…と考えなければいけない。
大きめでもリアリティが必要
まず、無効なのは、大きすぎる要求だ。
海外旅行の提案の例で、「1か月休みをとって海外旅行をしたい」といっても、普通の会社員などが1か月休めるわけがないので、とうてい無理な話だ。
なので、この申し出を断ったからといって、「申し訳ない」という気持ちは出てこない。※大きすぎる要求を受けた方は、「無茶を言うな」という感情になるだろう。
リアリティのある最大の要求がいい
なので、リアリティのある「1週間の海外旅行」と言う方が、効果がある。
また、普段から相手に対し「海外旅行に行きたい」というアピールをしておけば、さらに効果がある。普段から相手の望みを知っており、それを断る場合は、「申し訳ない…」と思うのだ。
しかし、ここまで考えて実践するパートナーがいると怖い(笑)。
譲歩の選択肢を考えておく
あらかじめ、譲歩の選択肢を考えておくことが必要だ。
自分の要求を提示し譲歩する、という方法で交渉するのであれば、譲歩がポイントになる。
海外旅行の提案の例であれば、1週間よりも期間の短い海外旅行、3泊4日の国内旅行、2泊3日の国内旅行、1泊2日の国内旅行、と、譲歩のカードをそろえておけばいい。
それらのカードをタイミング良くきることだ。間髪を入れず、次々にカードを切ることは、やめた方がいい。安っぽくなってしまうからだ。カードを切るタイミングが重要だ。
そのほか
相手に時間を使わせる
相手に時間を使わせると、こちらの要求が通りやすくなる。
交渉の時間が長くなると、集中力が途切れがちになり、「多少相手に譲ってもいいから、早く終わらせたい…」という気持ちが大きくなってくることと、「これだけ時間を使って成果なしか…」という状態を避けたくなるためだ。
本来であれば、交渉にいくら時間を使おうが、自分の意図しない結果になるのであれば、それらの時間はサンクコストとして処理し、もったいないと思う必要はない。
だが、人の感情としては、「これだけ時間を使ったのだから、多少不利でも形(成果)にしたい」という気持ちが生じる。そのため、相手に時間を使わせると、こちらの要求が通りやすくなる。
相手を説得したければ
今回の話は、相手を説得する、という話ではない。※説得ではなく、テクニックよりの話だ。
もし、相手を説得したいのであれば、
最後に、「エトス」(信頼)があるかどうかだ。「ロゴス」、「パトス」、「エトス」の中で最も大事なのが、このエトス(信頼)だ。「エトス」(信頼)は、土台のようなものかもしれない。ここがしっかりしていれば、他の要素に多少難があっても、人が動く可能性が高い。
出典:影響力のある人へ…人を動かす影響力を持つ
相手との信頼関係を築くことだ。
その上で、ロゴス(ロジック)やパトス(情熱)が必要になる。
相手が納得できるように、簡潔かつ論理的に説明できる力を磨いたり、相手の「情」の部分に働きかける力を身につける必要がある。※そのためには、不断の努力の積み重ねが必要になる。
説得については、別記事でも書いているので、参考にしてほしい。
交渉力を高める方法 - サマリー
まとめ
今回は、交渉力を高める方法について書いてみた。
まずは、相手の話をよく聞きたい。
そして、アンカリング効果に注意したい。この効果のことを知っていても、引っかかってしまう…ということがある(笑)。なので、頭をクールにして(アンカーを)切り離す努力が必要になるだろう。
上手な交渉の基本形は、「自分の要求を提示し、そこから譲歩する」という方法かもしれない。
※最初に、リアリティのある大きめの要求を提示する。
不器用な人は、相手に断られたり、嫌な顔をされるのが嫌だ…と思いがちなので、この方法を採用するのがむずかしいかもしれないが、「断られること」に慣れるためには、いい方法だと思う。
そして、一度断わらせたあとに、譲歩のカードを適切に切ればいい。
今回の記事:「あなたの交渉力を高める方法がある」