不器用な生き方をやめたい

人の心理や特徴を踏まえて合理的に行動したい

どの株を買う?株主価値を決めるポイントがある

どの会社の株を買えばいいのか…と迷うことがある。

そんなときのひとつの判断基準として、株主価値(株主に帰属する企業価値に注目する方法がある。株主価値の高い会社の株価が安いときに(その会社に)投資をすればいい…ということだ。

※ここでは、株主価値を「時価総額」という意味では使っていない。

今回は、株主価値を評価するポイントについて書いてみたい。

目次

ルイス・ガースナー

ルイス・ガースナーという、アメリカを代表する経営者がいる。

ルイス・ガースナー(Louis V. Gerstner, Jr. 1942年-)は、アメリカン・エキスプレス会長兼最高経営責任者(CEO)、RJRナビスコ会長兼最高経営責任者(CEO)、IBM会長兼最高経営責任者(CEO)、カーライル・グループ会長を歴任したアメリカを代表する経営者の1人である。
出典:ウィキペディア

ダートマス大学の工学部を卒業。

ハーバードのビジネススクールでMBAを取得し、マッキンゼーに入社。

マッキンゼーを退社した後、アメリカン・エキスプレスに旅行関連サービスグループの責任者として入社。89年には、RJRナビスコのCEOに就任。93年にIBMの再建を託され、会長兼CEOに就任。その後、数年でIBMを立ち直らせ、名経営者との評判を得た人物だ。

このガースナーさんが主張するポイントを紹介したい。

※以下、敬称略。

5つのポイント

彼によれば、株主価値を決める5つのポイントがある。

1)市場で大手か?

「成長している市場か市場セグメントで、大手になっているか」ということだ。

ガースナーは、このことを説明する際、バフェットの「評判の高い経営者が評判の悪い会社に入ったら、変わらないのは会社の評判の方だ」という言葉を引用している。

これは、どういう意味なのだろうか…。

評判の高い経営者でも、会社の悪い評判は変えられない…ということだろうか。転じて、「成長している市場か市場セグメントで、大手になっていない会社」の株主価値は低い、ということか。

スタートアップ企業以外で、(今現在)大手になっていなければ、その地位が変わることはない(将来的にも株主価値は低い)ということを、示唆しているのかもしれない。

2)市場シェアを維持 or 拡大しているか

次に、そのセグメントで、市場シェアを維持または拡大しているか、ということだ。

所属するセグメントで、市場シェアを維持または拡大していれば、株主価値は高い、と判断していいようだ。ただし、条件がある。シェアを拡大しているのであれば、維持可能な優位性に基づくものでなければいけない。維持可能な優位性とは、品質、技術力、コストなどである

※無理な買収や値下げなどでシェアを拡大しているのであれば、NGだ。

3)シェアの拡大とキャッシュフローの関係は?

シェアの拡大に伴い、キャッシュフローが増加しているかどうかだ。

EBITDAや実質ベースのキャッシュフローではなく、すべての経費を差し引いた後のキャッシュフローの増加が大事だ、としている。シェアの拡大とCFが連動していなければ、NGだ。

※連動がなければ、無理筋のシェア拡大、ということになるのだろう。

4)キャッシュフローを賢く使っているか

会社が、キャッシュフローを賢く使っているかどうか、ということだ。

そのことを判断するポイントとして、1)無謀な買収や愚かな買収を避けているか、2)会社にとって重要な分野(研究開発やマーケティングなど)に再投資しているか、の2点を挙げている。

個人の家計として考えると、わかりやすいかもしれない(笑)。

十分に勉強しないまま、株式投資や不動産投資などを行う人がいる。また、自己目的を達成するための(自分に対する)投資をしない人がいる。これらの人には、問題がある、ということだ。

個人レベルでも、キャッシュフローを賢く使っているかが問題だ(笑)。

5)株主と経営陣の利害が一致しているか

経営陣が株主と利害を一致させる約束を実行しているか、ということだ。

そこを確認するポイントとして、a)経営陣が自社株を大量に保有しているか(オプション保有だけではダメ)、b)配当や自社株買い戻しによって余資を株主に還元しているか、を挙げている。

ここはわかりやすいので、かなり参考になりそうだ。

会社から送られてきた資料を見ていると、経営陣なのに、「これだけしか株を持っていないの?」ということがある。一般投資家並みか、それ以下の株しか持っていないことがあるのだ。

※恰好をつけるため、仕方ないので買いました…みたいな株数だ。

そのような会社への投資は、NGかもしれない。

また、「配当や自社株買い戻しによって余資を株主に還元しているか」もわかりやすい。安定配当を目指し、業績が悪いときも良いときも同じ配当にする、ということはあるが、業績が悪ければ配当を下げ、良くても配当を渋る、ということであれば、問題があるだろう。

ベンチャーであればあり得るが、大手ではNGだ(利害の一致なし)。

1株あたりの価値を、希薄化するような会社もNGだ。

売上高にこだわる会社はNG

もうひとつ、売上高にこだわる会社もNGだとしている。

以前、「コンパック」という、有名なPCの製造&販売会社があった。

※現在のDELLのようなイメージの会社だ。

コンパック・コンピュータ・コーポレーション (Compaq Computer Corporation) は、1982年に設立されたパーソナルコンピュータ (PC) 企業。1980年代、リバースエンジニアリングクリーンルーム設計により、IBMの権利を侵害せずに、世界初のIBM PC互換機を低価格で製造した企業のひとつである。PC/AT互換機メーカーとして、1990年代には最大のPCメーカーの地位を確立したが、2001年にはデルに逆転された。2002年、ヒューレット・パッカード(HP)に約250億ドルで吸収合併されるまで独立企業として存続していた。
出典:ウィキペディア

※1990年代には、最大のPCメーカーの地位を確立している。

このコンパックは、かつてIBMのライバル企業であった(IBMPC互換機を低価格で製造・販売していた)が、01年にDELLに抜かれ、02年にHPに吸収合併されている。

ガースナーは、あるコンパックの経営者の発言に喜んだそうだ。

それは、「市場シェアでIBMを追い抜くことを目標にしている」という発言だった。ガースナーは、先に述べたように、市場シェアの拡大には好意的だ。市場シェアを維持または拡大していれば、その会社の株主価値は高い、と判断している。なので、ライバル企業のシェア拡大を目指す姿勢に、なぜ喜ぶのか…という疑問がある。

どうやらガースナーは、このシェア拡大は、「維持可能な優位性に基づくものではない」と見切っていたようだ。売上高にこだわり、「売上高ありき」のシェア拡大方針だと理解したようだ。

そのため、ライバルは失速する、と読んで喜んだのだ。

たしかに、売上高にこだわる会社はNGのような気がする。その手の会社は、売上高こそ右肩上がりになっているのだが、利益やキャッシュフローが伴っていないケースがよくあるのだ。

コンパックは、その後DECを買収した(買収でシェアを奪おうとした)。

まとめ

今回は、株主価値を決めるポイントについて書いてみた。

※定性的な話なので、直感的にわかりやすいと思う。

ルイス・ガースナーが指摘するのは、1)市場で大手か?、2)市場シェアを維持 or 拡大しているか、3)シェアの拡大とキャッシュフローの関係は?、4)キャッシュフローを賢く使っているか、5)株主と経営陣の利害が一致しているか、という点だ。さらに、売上高にこだわる会社はNGだともしている。どの会社の株を買えばいいのか…と迷った際の、参考になるかと思う。

参考文献:巨象も踊る ルイス・ガースナー(著)