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アノマリー投資は有効?|株式投資におけるアノマリー

アノマリーという言葉を聞いたことがあると思う。

投資をしている人であれば、「アノマリー投資」という言葉を耳にしたことがあるかもしれない。中には、実際にアノマリーにしたがって投資をしてみた…という人もいるだろう。

アノマリーとは、「従来の理論や法則から説明できない事象」という意味だが、後付けの説明やもっともらしい説明をすることができることもある。

個人的には、まず経験的に知覚できる事象のかたよりがあって、その説明を定性的になんとなくしかできないというケースが、アノマリーに当たるのではないか…と思っている。

今回は主に、株式投資におけるアノマリーについて書いてみたい。

目次

 

株のアノマリー

1月は下落?

株のアノマリーを整理してみよう。

まず1月だ。1月には下げる…というイメージがある。

これは、昨年末の上昇とセットで考えた方がいいかもしれない。年末に上昇があった場合、その反動で下げてしまうのだ。なので年末に上昇がない場合は、下げないかもしれない。

ただしアノマリーどおり下げるときでも、1月半ばまでは堅調…ということがある。

昨年の12月に節税などで売った分買い戻すから…という説明があるが、定かではない。1月前半は、12月末(掉尾の一振)の勢いを引き継ぐ…ということかもしれない。

※1月株高というアノマリーもあったが、もはや通用しないようだ。

節分天井彼岸底?

「節分天井彼岸底」という有名な格言がある。

「節分天井彼岸底」という格言は、とても有名な格言の一つです。しかしながら今回の検証では、格言通りの結果とはならず、有効ではないとわかりました。
出典:節分天井彼岸底は本当に正しいのか?

これは、「2月上旬に高値をつけて、3月中旬に安値をつける」という意味だ。

格言が有名なだけに、「本当ではないか」と信じたくなってしまう。

だが、この格言どおりに投資して成功した…という記憶がない。「3月中旬に安値をつける」というのはわからなくもないが、「2月上旬に高値をつける」という根拠がよくわからない。引用の検証でも、「有効ではない」という結論に至っている。なので、ここでも有効性はない…とする。

5月 - Sell in May

「Sell in May」という格言がある。

これはもちろんアメリカでの話だが、日本株にも通用する話だ。

5月の日本株の平均収益率は-1.23%であり、過去のデータで検証すると5月は株式が下落するという経験則に一致している。だがそれよりも気になるのは5月よりも8月と10月の下落の方が大きいことだ。
出典:セルインメイを検証する

このアノマリーは、覚えておいた方がいいかもしれない。

5~6月に多くのヘッジファンドが決算を迎えるため、利益確定の売りや現金のポジションを増やすための売りが出やすくなる。その結果、5月を天井に下げる…と説明される。

なお、「Sell in May」の部分だけがひとり歩きしているが、「Sell in May and go away. Do not come back until Halloween.」が正しい格言だ。「5月に売ってどこかへ行け、そして10月末まで戻ってくるな!」という意味になる。※長期休暇をとるなら、この期間かもしれない。

12月(年末のアノマリー

12月は株が売られ下げやすい、というアノマリーがある。

「12月に株が売られやすい」の理由だが、ひとつは税金対策だ。それまでに十分な利益が出ていれば、買値より値下がりした塩漬けの株を損切りして、利益を圧縮しようとする動きがでる。

将来性がなく配当もごくわずか…という塩漬けの株を持っている人であればわかると思うが、そういう無駄な株を持っているだけで気が滅入るものだ(笑)。

なので、この機会に損切りしようとする動きがあることは理解できる。年末はキリがいいので、時間切れとして気分的に損切りしやすくなる…ということもあるだろう。

また、「キャッシュポジションを増やすために売る」ということもあるだろう。年末はお金が必要になる時期でもあるので、そういう動きが出やすくなるのだ。

※12月はポジション調整のための売りがある。

株が上がりやすい?

ただし、真逆のアノマリーもある。12月は株が上がりやすい、とするアノマリーだ。

近年の傾向としては、こちらのアノマリーの方がしっくりくる…と感じる人も多いと思う。なので、「12月は株が売られ下げやすい」と思っていると、痛い目にあうかもしれない(笑)。

どちらを信じるかは、あなた次第だ。

掉尾の一振

12月に株が上がるか下がるかは別にして、「掉尾の一振」というアノマリーがある。

個人的には、釣り上げられた魚が、最後の力を振り絞って尻尾を振る…というイメージでとらえている。かりに「12月に株が売られやすい」というアノマリーが生きているとしても、「掉尾の一振」のアノマリーも生きている。

具体的には、ラスト5営業日の株価を足すとプラスになる…というものがある。ためしに、2015年のデータを見てみると、日経平均株価で244円のプラスになっている。

掉尾の一振はあるかも…

7営業日による調査もあるようだ。

統計では1949年から年末の7営業日について調査したところ、日経平均株価が前日比プラスとなった確率は50%を上回り、その内3日は70%を超えている。
出典:【特集】「年末の株高」は2015年もあるか?年末年始マーケットアノマリー

その調査では、「日経平均株価が前日比プラスとなった確率は50%を上回り、その内3日は70%を超えている」という結果になったようだ。その70%を超えた日がいつなのか詳しく知りたいが、このアノマリーは生きていると思う。※今年の年末の株価を、注意してみればいい。

 

ドル円相場のアノマリー

ドル円相場にもある

株価に関係の深い、ドル円相場のアノマリーについても考えてみよう。

1980年以降、大統領選挙は過去8回あるが、選挙の年は8回中5回(1984年・1988年・1996年・2000年・2012年)が円安、その翌年(即ち新大統領の就任1年目)は8回中6回(1988年・1996年・2000年・2004年・2008年・2012年)が円安であり、確かに円安になりやすいという印象はある。
出典:「トランプ大統領」で円ドル相場はどう進むか

「大統領選挙の年とその翌年は、円安になることが多い」というアノマリーがある。

1980年以降で考えると、選挙の年は8回中5回、その翌年(即ち新大統領の就任1年目)は8回中6回円安になった…というデータがある。サンプル数が少ないのだが、このデータをみれば円安になることが多いのかな…と思っても不思議はない。

※このデータに従えば、2016年、2017年は円安になる。だが2016年は、約120円から始まっているので、円高だろう。なので、2016年は外れた…ということになる。

政策が景気刺激型になるため

この現象を説明しようとすれば、以下のようになる。

新大統領がまず気にするのは、経済政策だ。経済は、国民の日々の生活に密接に関係する部分であり、ここでポイントを稼ぐことができれば、支持率が上がり政権基盤が安定するためだ。

そのために、経済政策が「景気刺激型」になりやすくなる

公共事業などにお金を入れれば、確実に結果につながるためだ。今回のトランプ新大統領も、インフラにお金を使う、大規模な公共事業を行う…という発言をしている。

金利先高感からドル高へ…

新大統領は勝利宣言の演説で、「トンネルや高速道路などのインフラを立て直し、雇用を拡大する」という主旨の発言をしている。また、このことを「非常に大事なこと」としている。

そうすると、「金利先高観」が出てきて金利が上がりやすくなり、ドルが買われやすくなる…ということになる。もちろん、実際に景気が拡大するとドルは高くなりやすくなる(円安になる)。

このような説明をすることができる。

特定の「月」によるアノマリー

「月」によるアノマリーも、よく言われることだ。

2~3月、9月は円高傾向が強くなる。これは、日本企業の決算のためだと説明される。海外に出ていた資金を、一旦国内に戻すため円買いをするので円高になる(レパトリエーション)。

4~5月は円安傾向がある。これは、新年度をむかえた日本企業が新たな海外投資をするために、円を売って外貨を買う動きが活発になる。したがって、円安になりやすい…というものだ。

※4~5月の株高の説明になるかも。

 

アノマリー投資は有効? - サマリー

まとめ

今回は主に、株式投資におけるアノマリーについて書いてみた。

投資におけるアノマリーには、役に立つものとそうでないものがある。また、役に立っていたものでも、時間の経過とともに役に立たなくなる…ということがある。

さらに、役に立つものでも、「こういう前提条件があれば役に立つ」というものもありそうだ。なので、アノマリーは役に立つとか役に立たないとか、「1」か「0」かという思考はしない方がいいと思う。

もし本当に有効なアノマリーがあれば、多くの人がそれを利用するようになり、時間の経過とともに有効性が薄れていく。ただし、変わりにくい仕組みに基づくものや、根強い生活習慣や人間の心理に基づくものについては、有効性が維持されやすくなる。なので、そのあたりに目を付けるといいのかもしれない。

投資ではアノマリーのことも気にしてみると、おもしろいだろう。

今回の記事:「株式投資におけるアノマリー