REITにも、当然リスクがある。
REITは、株式投資よりも利回りが良かったりするので、株式投資並のリスクがあるのは当然のことだ。
株式と同様に、REITの中でも利回り(≒リスクの度合い)はさまざまだ。利回りの低い銘柄は、収益性や安定性、成長性などに対する投資家の評価が高く、利回りの高い銘柄は、投資家の評価が低い、とできるかもしれない。この点は、株式投資における会社の評価と同じことだ。
今回は、REITのリスクについて書いてみたい。
目次
その分配金が続く保証はない
分配金の利回りの高さが魅力で、REITに投資する人がいると思う。
だが、過去の分配金の水準が続く保証はない。
株式会社であれば、「安定的に配当を行うこと」を重視し、利益にかかわらず一定の配当を出すことがあるが、REITの場合はそういうことがない。
実際にいくつかのREITの分配金の推移をチェックしてみたが、いきなりガクンと減ることもあるようだ。
※収入でいえば、物件の賃料水準や稼働率、支出でいえば、メンテナンスの費用などが利益を決める変数になる。前者の変数が収入と比例し、後者の変数が支出と比例する。
突然収益が悪化するように…
ある会社の不動産部門の収益が悪化したことがあった。
その原因は、メンテナンスの費用がかかったため…ということだった。このように、突然収益が悪化し、分配金が減ってしまうことはあるのだろうと思う(投資家には、突然収益が悪化するように見える)。
※過去の分配金の水準が続くとは思わない方がいい。
成長性の問題が
成長性はどうなのか?
REITの成長性は、どうなのだろうか。
長期的にみて、右肩上がりで成長するのであれば、投資して損はないはずだ。
成長するためのパスはいくつかある。たとえば、物件に付加価値を与え収益性を高める、効率化によりコストを圧縮する。さらに、収益に資する物件を増やすということだ。
収益に資する物件を増やせるか
いずれも大事だが、成長を加速させるのは「収益に資する物件を増やす」ことだ。
ブログでいえば、良質の記事を増やすということだ。
これまでの記事のリライト(価値を高める)などでもいいのだが、良質の記事を増やすことがPVの伸びにつながる。なので、収益に資する物件を確実に増やしているREITを選びたい。
※成長しないREITを選ぶと、収益&分配金は先細りする。
海外不動産を取得できるか
前回の記事で、「(REITは)海外不動産も取得できる方向で動いているようではあるが、現状でははっきりしない」と書いた。
現状では法整備が進んでおり、海外不動産を取得できるようだ(国土交通省のバックアップもあるようだ)。※海外不動産に強みのあるREITの方が、成長性が高くなるだろう。
破たんの問題が
破たんすることもある…
株式会社と同様に、REITが破たんすることもある。
2008年に、ニューシティ・レジデンス投資法人が破たんしている。
決済資金と返済資金の調達ができなくなったため、破たんに至ってしまった。
その破たんに至る経緯だが、不動産価格(REIT価格)の下落が始まる ⇒ サブプライム問題が発生する ⇒ 金融庁の規制対象になる(金融商品取引法)⇒ 信用収縮 ⇒ 破たん、という形だ。
比較的資金調達力が弱い
信用収縮とは、「貸し渋り」により会社などが資金を借りにくくなる、という状況のことだ。
REITは、比較的資金調達力が弱いとされる。したがって、景気が悪くなり信用が収縮するような状況になると、資金を借りることも資産を売却することもできず、行き詰まりやすくなるのだ。
※資金調達力の弱い株式会社にも、同じことがいえる。
金利と買わざるを得ない問題が
金利の問題がある…
金利は、REITに影響を及ぼす。
これは、単純な話だ。金利が低ければお金を借りやすくなり、金利が高ければお金を借りにくくなるとともに、借入の負担(利払いコスト)も増す…ということだ。住宅ローンは、金利の低いときに固定金利で組めばいい、ということを考えればわかる話だ。
ただし、金利が上昇しても、それを上回る景気の拡大があれば、REITの価格が下落しない…ということはある。同様に、金利が低下しても、それを上回る景気の減速があれば、REITの価格は上昇しない…ということがある。需給の問題でそうなるのだ。
なので、一概にどうこう言えるわけではないが、「景気拡大のない金利の上昇」は、REITにとり明らかにマイナスになるだろう。※スタグフレーションのような状態はNGだ。
高くても物件を買う
REITは、高くても物件を買う。
資金が集まれば、その資金に見合う分配金を出さなければいけない。
そのためには、先に述べたように「収益に資する物件を増やす」という方法をとるためだ。だが、物件の価格が高くなれば、「収益に資する」という部分が怪しくなってくる。
その結果、分配金の利回りの低下につながるのだ。
物件が安いときに買えば、収益性の高い物件を買うことができるが、信用収縮状態にあるときは、資金調達がむずかしい。金融機関の貸し渋りに加え、保有している物件の担保価値も下がるので、物件を買うための資金調達ができなくなるのだ。
※物件の価格が上がると買いやすくなる、という構造上の問題がある。
利益相反の(エージェンシー)問題が
利益相反の問題がある
REITには、利益相反の問題がある。
運営・設立母体が不動産事業をも併せて手掛けているケースが多いため、物件取得価格が妥当でなかったり(高すぎたり)、優良物件が母体企業によって囲い込まれ、REITには優良ではない物件が組み込まれる傾向が強いという、一種の利益相反が生じる恐れがあることである。
出典:REIT - Wikipedia
※実際に、行政処分が下されたケースもあるそうだ。
REITの母体企業との絡みで、「優良物件が母体企業によって囲い込まれ、REITには優良ではない物件が組み込まれる傾向が強い」ということがあるようだ。たしかに、ありそうなことではある。
REITを買うときは、母体企業の株も一緒に買う、という手段があるかもしれない(笑)。
イオンリートの場合は
REITサイドで、この問題に対応しているのだろうか。
例えば、イオンが不動産を割高な価格で売却すれば、イオンリートの投資家の利益が損なわれ、イオンリートが相場より高い賃料でイオンに貸せば、イオンの投資家の利益が損なわれるという両面を併せもっています。
また、同じグループ会社であるため、グループ内の力関係によってイオンリートが不利な条件を飲まざるを得なくなるという構図も危惧されています
ここに書いてある通りの懸念がある。
・意思決定プロセスの透明化(イオングループと利害関係のない外部のメンバーを決議機関に招聘)
・借主であるイオンが約20%投資口保有(イオンが最大の投資家)
・イオングループとの物件の共同保有
・1口当たり分配金の額に連動する資産運用会社の運用報酬体系出典:よくあるご質問|初めてでもわかるイオンのリート
この懸念に対し、イオンリートは以上のような仕組みを作り対応している。
この中であれば、「借主であるイオンが約20%投資口保有(イオンが最大の投資家)」、「イオングループとの物件の共同保有」という仕組みは評価できるだろう。そうすることで、お互いの利害が重なる部分を増やそう、というわけだ(相手の損が自分の得にならないようにしている)。
※こういう対応を(発表)しているREITを買った方がいいだろう。
REITにはリスクがある - サマリー
まとめ
今回は、REITのリスクについて書いてみた。
今回の記事で書いたのは、1)過去の分配金の水準が続く保証はない、2)REITの成長性はどうなのか?、3)REITが破たんすることもある、4)金利の問題がある、5)高くても物件を買う、6)利益相反の恐れがある、の6点だ。
そのほかにも、流動性の問題がある。
株式のように自由に売買できるが、大型株のように流動性が高いわけではない。
REITの売買状況をみていると、出来高も少なく、小型株程度の流動性かなと思う。なので、売買では多少苦労するかもしれない(売買益を狙う投資法であれば、やや問題になりそうだ)。
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今回の記事:「利益相反の問題など…REITには結構リスクがある」