村田諒太の次戦の相手は、誰になるのだろうか。
ここでいう「次戦」とは、格下の選手との試合(勝って当たり前の試合)のことではなく、村田諒太選手と同等以上の選手との試合、としたい。現在のミドル級の二強は、ゴロフキンとアルバレスで、最終的には(そこまで勝ち進めればだが)どちらかと対戦することになるだろう。
今回は、村田諒太の次戦の相手について書いてみたい。
※2018年9月17日更新。
ビリー・ジョー・ソーンダース
1989年生、180cm。26勝12KO無敗。
WBO世界ミドル級王者。サウスポー。ずんぐりした体つき。ジャブが速くていい。
だが、ここに挙げたほかの選手と比べると、総合力で見劣りがする。村田諒太選手からすれば、次戦の相手として狙い目だろう。ただし、ソーンダースが日本に来るかどうかはわからない。
※追記:ソーンダースはかなり強く狙い目ではない。
※2016年にゴロフキンとの統一選の話があったが、交渉が決裂し流れている。ゴロフキンに負けた相手との対戦を断るなど、ゴロフキンを意識していることは確かなようだ。
デイビッド・レミュー
1988年生、177cm。39勝33KO4敗。
元IBF世界ミドル級王者。強打者でパンチに力がある。左ボディからアッパーのコンビネーションが上手い。ガードだけでレミューの強打を防御しようとすると、トラブルになるだろう。
村田選手同様ヌジカムに勝っているが、ヌジカムを基準に考えれば、村田選手もそこそこ勝負できるかもしれない。ソーンダース、レミューあたりはクリアしなければ、二強には届かない。
※ヌジカムに判定で勝ち、ゴロフキンにTKO負けしている。
レミューとソーンダースの格付け終了
レミューとソーンダースの直接対決が、2017年12月16日にあった。
結果は、3-0の判定でソーンダースの完勝。
ソーンダースは思ったよりディフェンスがよくてクレバーだ。相手の強打を回避しながら、シャープな右を当てたり、ワイルドに振ってくることもある。動き回る足があり、右で相手をコントロールでき、クリンチも上手い。なので、ポイントでリードされると、挽回するのは難しいだろう。
村田選手が次戦で狙うべきは、ソーンダースではなく、レミューだ。レミューであればかみ合うので、レミューに完勝し次のステップに進んでほしい。しかし、ソーンダースを含め、相手が王者クラスになると、村田選手が勝つ、というイメージがしにくくなる。さすが、世界のミドル級だ。
デメトリアス・アンドラーデ
1988年生、185cm。25勝16KO無敗。
元WBO世界S・ウェルター級王者。元WBA世界S・ウェルター級王者。
ミドル級に階級を上げるため、WBA世界S・ウエルター級王座を返上した。報道によると、村田諒太とゴロフキンとの対戦を希望しているそうだ。サウスポーで、身体能力&スピードがある。
自在に体の角度を変えながら、自分のタイミングでパンチを刺すように放つ。ディフェンスもしっかりしており、村田選手の圧力も上手く流されて効かないような気がする。やっかいな相手だ。
※村田選手からみればかみ合わず(相性が悪く)、判定負けする可能性が高い。どの階級であろうが、このタイプの選手に日本人選手が勝つ、というイメージができない。
ダニエル・ジェイコブス
1987年生、185cm。34勝29KO2敗。
元WBA世界ミドル級王者。ゴロフキンとアルバレスに次ぐ実力者。
ハンドスピードが速く、オフェンスにキレがある。
ゴロフキン戦では、1度ダウンを奪われたものの、僅差の勝負にまで持ち込む。
王者を相手に、内容のあるいい試合をした。現時点では、村田選手より、ゴロフキンとアルバレス、ジェイコブスの方が強い、とする見方が妥当だろう。
村田選手自体が、自分より強い選手がいることはファンの方なら知っている、というコメントをしているが、この3人のことだろう。今後、この構図を変えることができるかどうか…だ。
※この3人に、アンドラーデを加えてもいいかもしれない。
ゴロフキンとアルバレス
ミドル級のラスボスは、ゴロフキンとアルバレス(カネロ)だ。
リング誌のPFPのランキングでは、1位と6位である。
ゴロフキンは1982年生、身長179cm、アルバレスは1990年生、身長175cm。村田諒太は1986年生、183cm。なので、村田選手が体格で二人に負けることはない。
年齢的には、アルバレスが有利だ。年齢とアルバレスの力量を考慮すると、村田選手がアルバレスに勝つことは、至難の業に等しい。アルバレスには、ゴロフキンの圧力と手数をさばくほどの力量があるので、村田選手の右はまず当たらないだろう。
僅かでも勝ち目があるとすれば、衰えが見え始めているゴロフキンの方だろう。ただし、現時点で戦っても勝てないことは明らかだ。また、ゴロフキンと戦えるだけの実績を残すのが先だ。
アルバレスがゴロフキンを降す
2018年9月に行われたビッグマッチ。ゴロフキン vs. アルバレス 2。
2-0の判定でアルバレスがゴロフキンを降した。
手数はゴロフキンだったが(ジャブの数は2倍以上)、パンチの精度でアルバレス、強いパンチの数でもアルバレスがゴロフキンを上回った。当て感、避け感、スピード、引き出しの多さで、アルバレスがやや上だったかな…という印象だ。
ゴロフキンは36歳。全盛期の圧力や迫力、オーラはもうない。
初稿で「村田選手がアルバレスに勝つことは、至難の業に等しい」と書いたが、このことは変わらない。現時点では、村田選手がアルバレスに勝つ状況を全くイメージすることができない。
村田諒太が勝つには…
村田諒太が「次戦」に勝つには、2つ条件がある。
圧力が機能することと、右や左ボディーのパンチが当たることだ。
圧力を機能させるためには、相手の攻撃をブロックで止めなければいけないが、パンチに多彩な角度をつけたり、ブロックの隙間からキレのあるパンチをねじ込んでくる相手に対応できるのか…という問題がある。
※強打者に対し、ブロックだけで対応できるのか…という問題もある。
村田諒太選手は、ボディワークでパンチをかわすタイプの選手ではないので、堅いブロックが崩壊すると圧力を失い、いいところなく負けてしまうだろう。海外メディアの論評で、有力選手と対戦したら、村田は壊される…というものがあったが、村田の防御の崩壊を予想したものだろう。
※圧力が十分機能すれば、ヌジカム戦のようにパンチが当たる可能性も高くなる。
まとめ
今回は、村田諒太の次戦の相手について書いてみた。
まずはソーンダースがねらい目だと思うが、ソーンダース、レミューあたりをクリアしなければ、ゴロフキンとアルバレスには届かない。アンドラーデやジェイコブスとやるのは危険だ。
※追記:ソーンダースが次のねらい目、というのは訂正したい。次戦の相手として適当なのは、ソーンダースではなくレミューだ(レミューに負けるようでは、頂上をうかがうことはできない)。
となると、ソーンダース、レミューあたりに勝って、一気に頂上を狙う、ということになる。
相手がアルバレスであればノーチャンスだが、数年後のゴロフキンであれば、僅かだがチャンスがあると思う(アルバレスよりはかみ合うのでチャンスがある、ということだ)。
※ほかにも、セルゲイ・デレビヤンチェンコ、ジャーモール・チャーロ、ルイス・アリアスという無敗の選手もいる。これまでに名前を挙げた選手同士の対戦もあるので、それにも注目したい。
追記:ジェイコブスはアリアスに圧勝
ジェイコブスは17年11月にアリアスと対戦し大差判定勝ち。
ジェイコブスみたいな相手に、どうやって勝てばいいのだろうか…。
体を壊される心配をしなければいけないレベルだ。※ジェイコブスは現在(2018年4月)、階級3位にランクされている(The Ring, ESPN によるランキング)。
考えたくないシナリオ
ちょっとボクシングファンとして考えたくないシナリオがある。
それは、ここで名前を挙げたレミュー以上の選手と対戦することなく、いきなりゴロフキンと対戦する、というシナリオだ。そのような記念受験のようなことになると、心底がっかりする。
※ゴロフキンに負けたら、そこで引退すると思う。
ジェイコブスが村田について、アメリカで強豪と対戦し、実力を証明してほしい、とコメントしているが、そのとおりだと思う。是非レミューと拳を交えて実力を証明してほしい。ゴロフキンと戦う資格のある選手だし、彼とやっても勝つ可能性がある選手だと証明してほしい。
※現在村田は、階級6位(The Ring)と8位(ESPN)にランクされている。前者は、レミューやアンドラーデより上、という評価だ。後者も、アンドラーデより上という評価だ。
・・・
しかし、考えてみれば、PFPのトップランカーと日本人が対戦する夢を見ることができる、というのはすごいことだ(笑)。しかも、ミドル級だ。一昔前であれば、とても考えられなかったことで、村田諒太選手には感謝したい。さすがは、五輪の金メダリスト…というところだろう。
今回の記事:「村田諒太の次戦の相手|次の対戦相手はこの選手」