人前で話すときなどに、緊張してあがることがある。
その状態は、自分をコントロールできなくなる、という状態であり、乗っている馬が急に暴れ出し、自分は鞍にしがみつくだけでなすすべがない…という状態に似ている。
自分は必死だがかなりカッコ悪い。その姿を見る人は、「どうしたのか」、「見ていられない」という視線を送ってくる。その視線がさらに、自分にダメージを与える(悪循環が発生する)。
こういう「あがる」経験も必要だと思うが、こういうことを何度も繰り返すと、社会生活に支障が出てしまう。なので、緊張によるあがりを(ある程度は)克服する必要があるだろう。
今回は、緊張によるあがりを克服する方法について書いてみたい。
目次
あがりの原因
まず、あがる原因だが、
以前の記事で書いたあがりの原因は、1)失敗に対する不安、2)他者への過剰な意識、3)勝手が違う…という感覚、4)当人の性格的なこと(自己卑下的な意識など)、の4つだ。
これらに加えて責任感も原因になるとされる。
責任感が強ければ、他人の期待を裏切ってはいけない、自分の責任を果たさなければいけない、と思いかたくなる。そうなると、身体の緊張度が増し、パフォーマンスの低下に繋がる。
遊びのない精神状態では、あがりやすくなる、ということだ。
あがりを克服する方法
失敗に対する認知を変える
あがりを克服するためには、原因に対処すればいい。
まず、失敗に対する不安だが、失敗に対する認知を変えたい。
失敗に対する不安があるときは、失敗するチャンスだと思えばいい。偶然にも失敗するチャンスを与えられた、そんなチャンスを得た自分はかなり幸運だ…、ぐらいの気持ちでいいだろう。
※失敗すれば、そのチャンスを活かした、ということになる。
そもそも失敗は悪いことではない。
人である限り失敗はするし、失敗の先に成功があるので、失敗をしなければ成功しない。なので、失敗を恐れて失敗するチャンスを逃すより、失敗してそこから学びを得た方がいいのだ。
※失敗については、長い目で見る必要がある。
他者を仲間だと考える
他者への過剰な意識は、どうしたらいいのだろうか。
自分を値踏みする視線を受けること自体が、あがりにつながるのでなかなか厄介だ。
プレゼンやスピーチなどでは、聞き手を自分の仲間・味方である、と認知する方法がある。
聞き手の中には、悪意を持つ人や「お手並み拝見」とばかりに(やや意地悪な感じで)値踏みする人がいるかもしれないが(笑)、基本的には好意的な人やフラットな人の方が多いと思う。自分もそうであれば、彼らを仲間と考えることは可能だろう。
ほかの人についても、縁あって同じ場にいる仲間であるし、同時期に生を受けている仲間である。なので、大きく考えれば、どんな人でも仲間だと考えることができる。
相手を観察する
もうひとつは、こちらも相手を観察する、という方法だ。
自分があがらず冷静にスピーチしているシーンを思い出してほしい。
そんなときは、聞き手のことがよく見えているものだ。緊張してあがっているときは、聞き手の方に視線を向けることすらできないのだが、冷静なときは聞き手のことがよく見えるものだ。
冷静なときは結果的にそうなる、ということだが、この状況を意図的に作り、緊張によるあがりを防ぐ、ということも可能だ。聞き手の作用(こちらへの視線など)を受けてあがるのだから、こちらも反作用(聞き手を観察する)を起こすことにより、心の平衡状態を保つ、ということだ。
ほかのことに集中する
他者への意識以外のことに集中すれば、なぜかあがらない。
たとえば、風邪などにより体調が悪いときにはあがらない、ということがある。
それは、体調の悪さの方に気がとられる、自己のリソースがとられるためだ。そのため、相手の視線が…、自分の評価が…などということはどうでもよくなり、ほとんどあがらなくなるのだ。
この現象を応用すればいい。
スピーチやプレゼンであれば、話の内容に集中する、伝えることに集中する、発声に集中する、声の大きさ・話すスピードをコントロールすることに集中する、など他のことに集中するのだ。
何かに集中して視野を狭くすれば、他人の視線は気にならなくなる。
勝手が違う ⇒ 抽象度を上げる
いつもと勝手が違う…という感覚だが、
敏感な人は、微細な差異にも気が付くので、こういう感覚を持ちやすい。
こういう感覚を持ったときは、抽象度を上げればいい。
抽象度を上げることで微細な差異が気にならなくなり(差異が埋もれる)、「いつも練習でやっていることじゃん」、「いつものプレゼンと本質的には変わらない」と思えるのだ。
そう思えると、落ち着きを取り戻すことができる。
ベテランの運転手になる
生得的な性格を変えることはできないしその必要もないので、できることをやる。
前回のあがりに関する記事で、ベテランの運転手は見られることでパフォーマンスが上がり、経験の浅い運転手は見られることでパフォーマンスが低下する、という話をした。
なので、自分を「経験の浅い運転手」から「ベテランの運転手」にすればいい。
そのためには、事前に何度も練習を繰り返すことだ。そのときは、一度に何度もやるよりは、時間を空けながら何度も繰り返せばいいだろう。そうすることで、ベテランの運転手のように、「見られることが適度なストレスになる」という状態になり、緊張によるあがりを防ぐことができる。
事前の練習は必要条件
事前に何度も練習を繰り返しても、本番ではあがる…ということがある。
たとえば、プレゼンやスピーチで、事前に何十回も練習を重ねても、緊張から声が震えたり・上ずったり、早口になってしまったり、噛んでしまい言い直しもできない…ということがある。
なので、ほかの対処法と組み合わせて使うようにする。事前に何十回も練習したらあがらない…ということではない。事前の練習はあがらないための必要条件である、ぐらいの考えでいい。
※組み合わせることで、事前の練習が生きてくるだろう。
自己卑下的な意識を持たない
あがりを招く可能性があるので、自己卑下的な意識を持つことをやめたい。
その方法だが、普段の言動から少しずつ変えていく、という方法がある。
具体的には、胸を張り、姿勢を良くすることを心がける、話すときの声を少し大きくしてみる、相手の目をみて話すようにしてみる(相手をよく観察しながら話すようにしてみる)、などだ。
自分の価値を低く見積もらない、という意識も必要になるだろう。短所が気になるのであれば、短所があることで伸びている長所をみるといいだろう(凹みがあればその分凸の部分がある)。
相手の承認を求めない
あがりやすい人は、その分落ち込みもひどくなる。
失敗した…、自分はダメだ…と深く落ち込み、クヨクヨしてしまうのだ。
このタイプの人は、自分に自信がないため、他人の承認を求める、という特徴がある。なので、自分のプレゼンやスピーチの評価を他人に求め、承認してくれる人を探そうとしてしまう。
自分が失敗したと思い落ち込んでいるのだから、他人が承認してくれるはずがないのだが…。
こういうことは一切やめる。他人に承認を求めることをやめるのだ。自己承認でやっていくことを目標とし、その第一歩として他人に承認を求めることをやめる(それだけでも進歩だ)。
緊張によるあがりを克服する方法 - サマリー
まとめ
今回は、緊張によるあがりを克服する方法について書いてみた。
今回の記事で書いたのは、1)失敗に対する認知を変える、2)他者を仲間だと考える、3)相手を観察する、4)ほかのことに集中する、5)勝手が違う⇒抽象度を上げる、6)ベテランの運転手になる、7)自己卑下的な意識を持たない、8)相手の承認を求めない、の8つだ。
6番目の「ベテランの運転手になる」、すなわち、事前の練習を徹底的にやり込む、というのはマストだ。これは、あがりやすい人が「あがらない」という目標を満たすための必要条件なので、絶対にやらなければいけない。それを前提にした上で認知を変える。
他者に対する認知、自己に対する認知を変える。場に対する認知も、抽象度を上げることにより変えればいい。普段の言動などを変える(姿勢を良くする、やや声を大きくする、相手の承認を求めない)ことから認知を変える、というアプローチも有効だと思う。
今回の記事:「緊張によるあがりを克服する方法」