羊頭狗肉という言葉がある。
あまりいい意味で使われることのない言葉だ。
当然、「見掛け倒し」、「看板に偽りあり」ではいけない。自分の信用を失ってはいけないし、看板を偽ることで相手に損害を与えてもいけない。一方で、羊頭狗肉が機能するケースもある。
今回は、羊頭狗肉の使い方について深く考えてみたい。
目次
羊頭狗肉の意味は
見かけと実質が一致しない、という意味だ。
一致しないといっても、実質の方がいい、という意味ではなくその逆だ。
羊の頭を看板に描いたり掛けたりしながら、実際に売っている物は犬の肉である…ということを抽象化するとこの意味になる。狗肉は、犬の肉という意味(「狗」は天狗ではなく犬を指す)。
※シンプルにいえば、「見掛け倒し」のことである。
例文・使い方は…
写真と実物がかなり違う…これは羊頭狗肉でしょ。
あたかも国産であるかのようにミスリードしているが、実際は外国産である。羊頭狗肉だよね…。
ハード(設備)はいいのに、ソフト(オペレーション)がよくない。羊頭狗肉という印象を持った。お店が肉を売りにしているネーミングなのに、肉料理がお粗末だった。羊頭狗肉だよね…。
お題目は立派だが、実が伴っていない。この人は羊頭狗肉的な人だよ。
有効になることも
中には、羊頭狗肉が有効になるケースがある。
たとえば、「根拠のない自信」を持つケースだ。
以前の記事で、Wさんがほかの人より知識と経験が劣るにもかかわらず、プロジェクトのリーダーになることができた、という話をした。※適任ではないのに、リーダーを務め経験を積めたのだ。
根拠のない自信を持ち、羊頭狗肉的なはったりを利かすことで貴重な経験を積めた。
一見の客だけでよければ…
ビジネスであれば、リピーターを得る必要がない、という場合に有効になることがある。
羊頭狗肉をベースに商売をしていれば、徐々に信頼を失うため、リピーターを確保することができず行き詰ってしまう。だが、一見の客だけでいい、ということであれば、有効になることがある。
※こういうやり方はすすめないが。
人を騙すことに…
だが、羊頭狗肉は人を騙すことになる。
私たち家族は銀行に強く抗議した。銀行も本音と建前は違うようだった。担当部長氏は「自分だったら、正直なところ買いません」と言い、その場では「低い格付けの債券を売りつけたのは手数料収益のため」と認めていた
出典:母から2000万奪った大銀行の"合法手口" (鳥居 りんこ)
高齢者が利益を生まない金融商品を購入し、損をした…というケースだ。
売り手は、その商品が狗肉だということを当然知っている。「自分だったら買いません」というのは、当たり前のことだ。だが、客に対しては、狗肉を羊頭に見せ売りつける、ということをする。
これは、(利益を得るという職務には忠実でも)人を騙すという行為になる。
程度が軽ければ…
羊頭狗肉でも程度が軽ければ、容認されるだろう。
見栄えを良くしたい、という気持ちは誰にもあるためだ。
たとえば、お見合いの写真や履歴書の写真にいいものを使う、ということは普通のことだろう。
会社の面接では、見た目から自分を良く見せようとするし、内容にしても、自分が良く見える内容をあらかじめ用意しておく、ということがある。ビジネスでは、本当は力不足でも「自分であればできます!」とアピールすることもある。
※ビジネスでは、「できません」がマイナスになることがある。
利益の収奪はNG
相手の利益を収奪・毀損するための羊頭狗肉はNGだ。
先の高齢者が購入した金融商品の例では、元金の3000万円が3分の1程度に減っていた、ということだから、配当分(たこ足配当)を加味しても、かなりの損が出ていたのではないだろうか。
このように、誰かを食い物にする、というようなことをしてはいけない。
基本自然体がいい
人付き合いにおいては、自然体がいい。
背伸びしないとか、必要以上に自分を良く見せようとしない…ということだ。
感じのいい人を想像すると、自然な笑顔や表情がある人、自然な立ち居振る舞いをする人、ということになる。見栄を張り、何かと自慢をする人が「感じのいい人」になることはないだろう。
※相手が自然だと、こちらも自然になれる(いい関係になる)。
羊頭狗肉を使おう
自分が羊頭狗肉である…と思えば、狗肉を羊頭に近づける努力をする…という手がある。
ビジネスでは、自分を常に羊頭狗肉気味のポジションに置き、狗肉を羊頭に近づける努力をすることで成長する、というパターンがある。
あいつは「見掛け倒し」で仕方のない奴だな…と思っていると、いつの間にか成長しており、「おっ」と思うことがある(認めざるを得なくなる)。その場合は、裏にこの努力がある。
※そのためには、かなりの継続的な努力(やり抜く力)が必要だ。
羊頭狗肉の深い使い方 - サマリー
まとめ
今回は、羊頭狗肉の使い方についてつらつらと書いてみた。
ダメな使い方は、相手を騙し相手の利益を奪う目的で使う、という使い方だ。
この言葉にはそういうニュアンスがあるのだが、「人としておかしい」ということをしてはいけない。自分や自分の会社が稼ぐために、自分であれば絶対買わないような商品を顧客に売りつけ、顧客の財産を毀損してもいい、ということはない。
一方で、有効に使える可能性もある。
根拠のない自信を持ち、自分を押し出すことも、ある意味羊頭狗肉だし、羊頭を先にドンと掲げ、狗肉を羊頭に近づける努力をすることで成長する、という使い方もある(努力で偽りを本物にする)。
なので、この言葉を使いたくなるような人やビジネスがすべて悪…ということはない。
今回の記事:「羊頭狗肉の使い方について深く考える」