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日本版「SUITS/スーツ」の残念なところ

日本版の「スーツ」が始まった。

オリジナルがかなりおもしろいので、リメイクするのは大変だろうなと思う。

そのまま持ってくることは不可能なので、どうローカライズするか…という点がポイントだ。

オリジナルの「スーツ」の世界観を支える大事な要素のひとつは、ユーモアの利いた軽妙洒脱なトークだ。だが、それをそのまま日本版で再現しようとしても難しい。ここをローカライズするのは大変なことだと思う。挑戦して欲しいが…。

※今後、オリジナルのような映画やドラマをネタにした会話は、出てくるのだろうか…。

今回は日本版の「スーツ」について書いてみる。批判調になると思うが、あくまでも今後に期待を込めた批判だ。キャスティングの優劣など、今さらどうにもならない部分の批判はしない。

※ネタバレは困る、原作との比較、批判など聞きたくない…という人は、ここで読むのを止めてください。

目次

視聴者の反応は

50件ほど(メディア横断的かつランダムに)口コミを調べてみた。

その結果は、○ - 7件、△ - 8件、× - 35件。

否定的な評価が7割だった。オリジナルが好きな人は、否定的な評価をする傾向がある。

否定的な人が何に否定的なのかと言うと、(オリジナルと比較したときの)世界観、スケール感、テンポ、演技力、キャスティングなど…。オリジナルと比べ、これじゃない感があるようだ。

※メディアによっては、中立~肯定的な評価が多い場合もある。

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日本版「スーツ」は浅い…

替え玉がバレるシーン

司法試験の予備試験で、替え玉受験がバレそうになるシーンがある。

オリジナルでは、おもしろいシーンになる。

マイクは、試験官とのちょっとした会話(「君とどこかで会ったことがあるか?」、「いいえないですよ、人の顔を覚えるのは得意なので…」、「わたしもそうなんだ」)と、試験官がマイクの答案用紙をよけて置いたことから、替え玉受験がバレた…と察する。

※このちょっとした会話にも意味がありおもしろい。

マイクの機転がおもしろいが

その後、マイクは僅かなアクシデントを利用し、答案用紙を山に戻し逃げる、というシーンだ。

マイクは、逃げる途中に咄嗟にシャツを脱いで服装を変えたり、帽子を他人に被せる、という機転を見せる。

つまり、マイクの機転を楽しむ(天才的な記憶力だけではないことを知る)シーンなのだが、日本版では、関係者が意図的にアクシデントを起こし、その隙に忍者のように消えてしまう…という無味なシーンになる。※オリジナルと比べ、深みがなくなり浅くなってしまっている。

替え玉を依頼した人物が…

替え玉受験を依頼した人物が、お金を払わない…というシーンがある。

オリジナルでは、半分しか払わない、ということだが、日本版では全額払わない、となっている。どうして、全額払わない、としたのだろうか。半額払わないの方が、リアリティがあるのに…。

※替え玉をやらせて、1円も払わないは不自然すぎる。

また、クラゲが浮遊する水槽の前で替え玉受験を依頼した人物と話す意味がよくわからない。替え玉受験を依頼した人物が鈴木の腹を殴る、というのもやりすぎだ。場面も行動も現実味がない。

※このシーンは、オリジナルの方がはるかにリアルだ。

アソシエイトとの面接シーン

オリジナルでは、ドナが面接者に(わざと困らせる)質問をする、というシーンがある。

その質問の答えを聞いて、ドナが面接者を評価し、ハーヴィにサインを送るという手はずだ。

ドナは「なぜ、初対面のあなたを面接室に通さなければいけないの?」というシンプルだが深い質問をする。このやや意地悪な質問に対し、自信満々で自己アピールできればOK、というわけだ。

一方玉井は「緊張しすぎじゃない?」とか、「さっきからずっと笑っているけど、どうして?」という軽い質問をする。この質問の意味は分かりにくい。なぜ、変える必要があったのだろうか…。

警察と接触するシーン

業者とホテルマンに扮した警察とのやりとりのシーンだ。

日本版ではジムの話だけだったが、オリジナルでは時間を聞いて(相手が携帯している)銃を確認する、という手間を入れている。警察は、マイクが取引の時間に現れたことと、銃を見られたことを合わせて考え、マイクを当事者だと確信する。

また、警察から逃げるシーンがある。

オリジナルでは、来るときに見た面接会場のことを思い出し、意図的にそこへ向かったことを匂わす演出がある。日本版ではこれがない。なので、面接会場には偶然行ったことになる。

面接会場へ飛び入るシーン

また、面接会場への飛び入り方だが…

オリジナルでは、ドナが遅刻者の名前を呼んだときに(偶然)タイミングよく現れる、という形になり、マイクは咄嗟にその人物に成りすます、という機転を利かせる(自らその人物の名前を名乗っている)。日本版ではこの機転がない。

マイクは「なぜ遅刻したあなたを面接させなければいけないの?」というドナの質問に対し、「今、警察から逃げようとしているんだ、君が部屋に通すとか通さないとか、そんなことはどうでもいい」と答える。この答えを了としたドナは、マイクを部屋に通す。

※警察に追われているから弁護士が必要なんだ、君の許可などどうでもいい、というスマートでやや傲慢な返しをしたと思ったのだろう。単に変わった返答をしたから、ということではない。

一方、日本版では…ご存じのとおりだ。

甲斐と鈴木が出会うシーン

オリジナルのマイクとハーヴィの邂逅シーンだが、

このときマイクの天才的な記憶能力を目の当たりにしたハーヴィは、負けず嫌いを発揮し、マイクに対抗しようとする。彼の負けず嫌いの性格を表すおもしろいシーンだが、日本版ではカットだ。

※ハーヴィは自信満々で尊大だが、勝負好きで負けず嫌いなのだ。

鈴木を雇うシーン

オリジナルには、ハーヴィの気持ちの変化を描写する、という演出がある。

具体的には、マイクを部屋から出そうとし、外に警官がいないかどうか確かめるシーンだ。

その時、面接を待っている学生たちを目にする。こいつらと面接してもこれまでと同じでダメだ…とうんざりしたハーヴィは、マイクを雇うことにする。日本版ではこのシーンがなく唐突感がある。

※そのため、不自然になっている。

解雇+雇い直すシーン

日本版とオリジナルでは、筋立てが変わっている。

オリジナルでは、解雇を宣言されたマイクがハーヴィを脅す(ここまでは日本版も同じ)。

その脅し方に着想を得たハーヴィは、同じ手を使ってジェシカを脅す(笑)。ここが見どころになる。マイクからジェシカを脅すヒントを得たから、まぁクビにしなくてもいいか…ということだ。

※本気でクビにしようと思えば、できたのだ。

日本版ではこのシーンがない。

ハーヴィじゃない感がある

日本版では甲斐の顧客が甲斐の胸倉をつかむ、というシーンがある。

もしハーヴィがそうされたら、その場で絶対にやり返すだろう。

相手が敵だろうが顧客だろうが、自分に刃を向ける者とは闘いやり込める、というのがハーヴィだ。ひと回り以上年下の顧客に胸倉をつかまれて黙っている…というのは、ハーヴィではない。

※しかし、自分の弁護士の胸倉を掴んだりするだろうか…。

そのほかにも、オリジナルでは女性をナンパしたり、内と外で二枚舌を使ったり…というシーンがあるのだが、日本版ではそのような描写がない。ルイスをからかう、というシーンはあるが…。

※スーツを買えと現金を渡すこともしないし、女性のバッグの中を漁ることもしない。

よくわからないシーンが…

日本版には、よくわからないシーンがある。

クラゲが浮遊する大水槽の前で替え玉受験を依頼した人物と話す意味は?

なぜ、鈴木は現金入りのスーツケースを運ぶ際に、サングラスをかけているのか。

相手(警察)からの指示だとすれば、おかしいと思わないのか。また、もし指示であれば、警察は約束の時間にやってきてサングラスをかけている鈴木を、すぐに容疑者と認め拘束するはずだ。

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日本版「スーツ」の残念なところ

まとめ

今回は日本版の「スーツ」について書いてみた。

日本版の「スーツ」は、オリジナルと比較して表現が浅くなっている。

わかりやすいのが、マイク(鈴木)のことだ。

マイクは天才的な記憶力を持つが、咄嗟の機転も利く。マイクには、(静的な記憶力だけではなく)動的な瞬発系の頭脳と行動力もあるのだ。日本版では、この点の演出がかなり抜け落ちている。

上で書いた以外では、マイクがハーバード大学を訪れて大学の情報を頭に入れる、というシーンがある。オリジナルでは、そこでマイクが機転を利かせ上手く立ち回るシーンがあるが、日本版では画像1枚だ。

そのせいで、マイクの実践的な狡さや優秀さが伝わってこない。

1話を見ただけの感想になるが、ここは変えなくていいでしょ…というところを変えて、深みを無くす、おもしろさを無くす、リアリティを無くす、質を落としてしまう…というシーンがいくつか目についた。

オリジナルの制作者は、かなり考え抜いて個々のセリフやシーンを作っている。

せっかくだから、その思考を活かしてほしいな…と思う。最後に日本版スーツのポジティブな点を挙げると、幸村チカ(鈴木保奈美)のファッションだ。この点は本家にも引けを取らないだろう。

まずい点は、走りながら修正するのかもしれない。視聴はやめないので、今後に期待したい。

今回の記事:日本版「SUITS/スーツ」の残念なところ