三方よし、という言葉をご存じだろうか。
長期的に繁栄する会社などは、三方よしのビジネスをしている。
全体のパイを大きくするためには、どうしてもこの発想が必要になるためだ。この三方よしの考え方は、ビジネスのみならずプライベートでも使えるだろう。三方よしは、実践した方がいいのだ。
目次
三方よしとは
三方よしの意味は
三方とは、売り手、買い手、および「世間」を指す。
ゆえに、三方よしを実践する、ということの意味は、自分(売り手)よし、相手(買い手)もよし、さらには、世間(社会)もよしとする、皆が満足する形でビジネスを行う、という意味になる。
すべてのステークホルダーが満足する形でビジネスを行う、ということだ。
世界を広げる発想
三方よしは、次元を超えて世界を広げる、という発想になる。
自分だけがよければいい…を1次元とすると、自分と相手がよければいい…は2次元に。自分と相手に加え、世間もよければいい…は3次元だ。どの世界が広く豊かなのかは、言うまでもないだろう。
自分だけがよければいい…は、人として未熟な幼児の世界になる。
売り手よしとは…
売り手よし、というのは、必ずしも「儲けたからよし」ということではない。
たとえば、相手の無知や弱みに付け込んで、本来の価値をはるかに上回る価格でモノやサービスを売りつけ利益を上げる、という行動は、売り手よしにはならない。何ら恥じることなく、後ろめたいこともなく、正々堂々と正当な利益を上げたときに、「売り手よし」とすることができるのだ。
売り手が、こっそりほくそ笑むような儲け方では、売り手よしにはならない。
近江商人の心得である
近江商人はすぐれた商人で、自分の利益を考えながらも利他的であった。
いやむしろ、自分の利益を考えるからこそ、利他的だったのかもしれない。
自分の利益を最大化しようと思えば、人の直感には反するが、利他的に振舞うほうがいいためだ。利己的に振舞う人は、自己のいわば信用収縮が起こるので、長期的には利益を失うことになる。
近江商人は、単に善人でお人よしの商人である、ということではないのだ。
流れをくむ伊藤忠商事
伊藤忠商事の創業者の伊藤忠兵衛の座右の銘は、「商売は菩薩の業、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの」というものだそうだ。「売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの」という部分が、三方よしにあたるだろう。
伊藤忠商事の現在のコーポレートメッセージは、「ひとりの商人、無数の使命」である。
三方よしのメリットは
パイが大きくなる
三方よしというのは、全体のパイを大きくする思想だ。
パイが大きくなるので、利他的な行動をしても自分の取り分が増える。
一方、利己的に振舞うと、全体のパイが小さくなる。自分の身を削りマネタイズする、信用をお金に変えることで信用を失う、ということになるので、全体のパイが小さくなってしまうのだ。
近江商人の別の心得に、「資金の少なさよりも、信用の足りなさを憂うべし」というものがある。この心得からもわかるが、自分の信用の大きさ=全体のパイの大きさ、と考えればいいのだ。
人の恨みを買わない
三方よしを実践することで、人の恨みを買うことがなくなる。
世の中には、強い立場を利用して、利己的に振舞う人や会社がある。
あなたにも、この種の振る舞いを受けて不当な不利益を被った経験があるかもしれない。
もしそういう経験があれば、その人や会社に対し不快な感情を抱いているはずだ。自分の利益のために利己的な振る舞いをすると、人の恨みを買いやすくなるのだ。ごり押しはとくにダメだ。
やられた方は忘れない
やった方は簡単に忘れるが、やられた方はいつまでも忘れない。
やられたことは、強い負の感情とともに記憶されるため、長期記憶になるのだ。
利己的な言動を重ねることは、悪い結果を導くカルマをばらまくことに等しい。将来、そのツケを支払わされることになる。いつかどこかで、足を引っ張られることになるだろう。
他人に利益を与える
他人に利益を与える、というのはこの逆だ。
短期的には、他人に利益を与えて損をした…と思うかもしれないが、そんなことはない。
利益を与える人を間違えなければ、他人に利益を与えることはすぐれた投資行動になり、将来利益として戻ってくる。ただし、利己的な人に利益を与えると、そういうことにはならないので注意する。利己的な人は、「あまくて馬鹿な奴だな…」と思うだけで、利用しかしないためだ。
三方よしでも、利己的な人や会社とは give & take で付き合うのがいい。
三方よしを実践する - サマリー
まとめ
今回は、三方よしを実践した方がいい、ということで書いてみた。
三方よしを仕事でもプライベートでも実践した方がいい、ということは明らかだ。
そうすれば、自分の利益が大きくなる。また、自分の行動で他者が喜んだり、社会が少しでもよくなれば、うれしくなる。他者の役に立っている…という感覚は、とても心地よいものになる。
だが、実践するのはむずかしい。さまざまな壁があるためだ。
たとえば、自分がよければそれでいい、自分が所属する課や部がよければそれでいい、自分の会社がよければそれでいい、会社が属する業界がよければそれでいい、というカテゴリーがある。
その上に、世間がよければ…という話がある。
三方よしの精神を実践するためには、カテゴリーの壁を突き破って大きい利益の方にシフトしていかなければいけない。そのためには、より高次の視点から物事をみる、という努力が必要になる。
いっぺんにシフトすることはできないので、ひとつひとつ…ということになるだろう。もしあなたが、自分がよければそれでいい、というカテに留まっていると、広がりのない寂しい人生になる。
今回の記事:「三方よしを実践した方がいい」