株は、思いがけず暴落することがある。
そんなときは、株の評価損が発生するため、株を持っていることを負担に感じるようになる。そして、この先下げが続くのであれば、いち早く売却して身軽になりたいと思う。
一方で、持ち株が少なく現金の割合が大きいときは、買いのチャンスではないか…と感じる。
株の暴落は買いのチャンスなのだろうか。それとも、暴落時は、投げ売りしてでもいち早く株式市場から逃げるべきなのだろうか。今回は、このテーマについて書いてみたい。
目次
株の暴落はチャンス…
バーゲンセールになる
金持ち父さんシリーズで有名なR.キヨサキが、
主婦はスーパーなどが安売りをすると、ここぞとばかりに大挙押し寄せて買いだめをする。しかし、株式市場がバーゲンセールを始めると、投資家はそこから逃げ出す…ということを述べている。
そして、このような姿勢では、資産を築くことなどできはしない、と指摘している。
暴落はバーゲンセールだが…
この意見に異論はないが、受け取る側は、もう少し深く考える必要がある。
今回の相場のように、市場がリスクオフムードになったとき、キャピタルゲイン(売買差益)を狙うタイプの投資家が、株式市場から資金を引き揚げて、資産をキャッシュ化するというのは、ある意味当たり前のことだ。
※暴落の初期段階で売ることは、必ずしも悪くない。
後で述べるが、ナイフが落ちた後(下げ切った後)に、その引き上げておいたキャッシュを利用して再投資した方が、はるかに投資効率がよくなるからだ。※下降トレンドに入る場合。
バーゲンセールの難しい点
バーゲンセールと簡単に言うが、そう簡単なものではない。「バーゲンセール」の難しいところは、1)「バーゲンセール」か否かの判断、2)投資余力の有無、3)バーゲンの期間、になる。どれもこれも一筋縄ではいかない問題だ。これらに加え、投資マインドの問題もある。
株をバーゲンで買うのは難しい
たとえば、ソニー(6758)の場合で考えてみよう。
株価1000円以下をバーゲンセールとすると、バーゲンの期間は、2012年の約6ヶ月だ。
半年と聞くと長いように感じるが、過去20年超で半年しかなかったと考えると、極めて限定的な期間だ。そのときソニーに投資できた人は、バーゲンセールで上手く買った人になるが、上述の問題から、そうたくさんいるとは思えない(わたしも上手く買えなかった…)。
あとから振り返ってわかる
実は株を「バーゲンセール」で買うことは、かなり難しいのだ。
そもそもバーゲンセールかどうかわからないので、参加できないのだ。
低株価には、それを正当化する理由がある。そして、投資家はその理由に説得力を感じるようになる(現在の株価を正解と見なすため)。バーゲンセールは、後から振り返ってわかるものだ。バーゲンセール中と、喧伝されているわけではない。
ただ、少数ではあるが、これらの困難を乗り越えられる人もいる(株式投資の上級者になる)。そういう人は、キヨサキが指摘するように、株式市場で資産を築くタイプの人だ。
投げ売りする人から買えば
株が暴落すると、「買い」の信用取引をしている投資家に、「追証」が発生することがある。
株の暴落により、保有株の担保価値が減少するために、「担保割れ」を起こしてしまうのだ。
そうなれば、<強制決済>による「売り」や、まだ利益が乗っている株を(やむを得ず)売却しようとする、言わば泣きの動きが出てくる。これがいわゆる「投げ売り」と言われるものだ。
他人の損が自分の得になる
投げ売りをする人から買うことは、最善に近い投資方法だといわれている(このことは、株に限ることではない)。
投げ売りを強いられる人は、普通の売買で生じる損以上の「損」をしている。その損の分、それを引き受ける人は「得」をするという理屈だ。他人の損が自分の得になる、という構造だ。
この理屈に異存はない。投げ売りを強いられる人には大変気の毒だが、投げ売りにゼロサムが生じるのは、やむを得ないことだろう。※なので、投げ売りをする立場になってはいけない。
落ちるナイフはつかむな
怪我をすることがある…
相場には、「落ちるナイフはつかむな」という格言がある。
落ちるナイフを素手でつかもうとすると、手に刃があたりケガをしてしまう。
なので、暴落(急落)中の銘柄に手を出してはいけない。ナイフが床に落ちたところ(株価が底を打ったところ)を見計らって、買い出動した方がいい…という意味の格言だ。
判断がとてもむずかしい
この話にも、「バーゲンセール」と同様の難しさがある。
どの時点でナイフが床に突き刺さったと判断するのか?ということと、床に刺さったナイフを抜ける時間はそう長くはない、ということだ。※刺さったように見えても下げの踊り場にすぎず、さらに落ちることがある。
床に刺さったナイフが見えれば、それ以上落ちようがないので、(投資余力があれば)誰しも買い行動に出る。だが、その時点では、ナイフが床に刺さったのかどうか判断できないのだ。
引き抜く時間は限られる
どうやらナイフが床に刺さったらしい…とわかることがある。
そのときは、誰もがそれを引き抜こうと殺到する。そして、(大勢の投資家が集まるため)強い力で引き抜かれることになる。※株価はその後、力強く上昇していく…ということになる。
底値からかなり上がったところでは、買いにくくなる。つまり、ナイフを引き抜ける時間は限られている、ということだ。※初動で参加することができれば、利益を得ることができるが。
ナンピン買いはどうか…
下手なナンピンすかんぴん
「下手なナンピンすかんぴん」という格言もある。
「ナンピン買い」というのは、保有株が下落したときに、その株を買い増す行為を指す。
たとえば、その銘柄に思い入れがあれば、何度でも買い増しを行ってしまいがちだ。しかし、下手に「ナンピン買い」をすると、そのうちスッカラカンになってしまうよ…という意味だ。
※買い下がりを続けると、平均取得単価は下落するが含み損は拡大する。
下手なナンピンは失敗する
この格言も正しい。たしかに、下手なナンピンは失敗する。
ポイントは、「下手な」というところだ。上手なナンピンであれば、逆に資産形成の役に立つ可能性がある。下手なナンピンの代表例は、「投資対象を間違えている」ということだ。
たとえば、業績がゆるやかな右肩下がりで、将来性もない会社にナンピンで投資すれば、投資資金が溶けていく可能性がかなり高くなる。経営者に問題のある会社への投資も同様だ。
感情的なナンピンも…
次に、感情の赴くままにナンピンをしているケースだ。
中途半端に企業分析などをして、「この価格より下がるはずがない」と思い込み、ナンピンを入れるケースもそれに該当する。そもそも、「この価格より下がるはずがない」ということはない(大抵それ以上に下がる)。
感情や思い込みによるナンピンは、まず失敗すると考えていいだろう。
上手なナンピン買いをする
まず、投資対象が適切であること。そして、資産管理やリスクマネージメントをした上で、キチンとしたルールの下で行うナンピンのことだ。※投資対象が適切であるかどうかの判断のポイントについては、また機会があれば書いてみたい。
ルールというのは、たとえば、ナンピンとナンピンの間の期間を一定にするということ(一定の期間を空けるということ)だ。機械的に期間を空けることで、リスクの分散になる。また、株価に煽られた、感情的な投資をしなくて済むようになる。※感情的な投資は、ほとんど失敗する。
ナンピンは小さく始める
次に、ナンピンは小さく始めるということだ。
小さく初めて、株価が下がっていくのであれば(大抵そうなるが)、徐々にウエイトをかけていくというイメージだ。
ナンピンは、下げのトレンドに付き合う形になるため、長期戦になることがよくある。したがって、底値で「資金が尽きてしまって買えない」ということを防ぐためにも、ワーストケースを想定しながらシミュレーションをして、投資プランをよく練っておく必要がある。
株の暴落はチャンスか - サマリー
まとめ
今回は、株の暴落はチャンスなのか…というテーマで書いてみた。
株の暴落はチャンスだと思う。株の上級者は、この時を機会だと捉えている。
株の暴落時に耐え切れず、売ったことがある。その時の売りは大失敗で、その売りを買った人は大成功した。随分前の話になるが、今でもはっきり覚えており、この経験を戒めにしている。
株の暴落をチャンスだと思うためには、投資の余力を持っておく必要がある。
その時点で目一杯株を買っていれば、持ち株が負担になり精神的に買いを入れよう…という気分にならない。たとえ気力を振り絞って買いを入れようとしても、投資の余力が限られているので、物理的に買えない。
なので、投資の余力は常に持っておいた方がいいだろう。
今回の記事:「株の暴落はチャンスなのか…買いか投げ売りか」