前回、「コミュニケーション能力向上のヒントがここにある」という記事を書いた。
そこで述べたのは、1)人の心を動かす言葉を使う、2)クッション言葉を使う、3)わかりやすい言葉で話す、4)言い訳をしない、の4つだ。あなたは、これらを実践できているだろうか。
わたしは、まだまだ不十分だと思う。「まだまだ」とも言えないレベルかもしれない(笑)。
今回は、引き続き「コミュニケーションスキル向上のヒント」を書いてみたい。自分に自信を持ったり、自分を高めることにもつながる話になる(コミュ力が上がれば、自然とそうなる)。
目次
ユーモアを使う
一流はユーモアを使う
一流と呼ばれる人は、ユーモアを使う。
レーガン大統領の話。1984年、レーガン大統領は再選を目指していた。
しかし、年齢はすでに73歳。相手候補のモンデール元副大統領は、56歳と17歳若い。
当時のマスコミの論調でも、レーガン大統領の年齢を問題にすることがあったようだ。73歳の高齢で、激務である米国の大統領職を、もう一期務め上げることができるのか…というものだ。
そんな中、全米が注目するテレビ討論が始まった。
討論の中で、レーガン大統領は自身の年齢についてコメントを求められた。
普通であれば、「年齢は問題ではない」、「わたしの健康に問題はない」、「以前より、頭も体もしっかりしている」、「私には、対立候補に勝る経験と知恵がある」と返すぐらいだろうか。
ユーモアで切り返した大統領
だが、レーガン大統領はこう答えた。
「今回のキャンペーンにおいて、私は候補の年齢を争点にしません。したがって私は、政治的な目的のために、モンデール候補の若さと経験不足を政治的に利用するつもりはありません」
と、ユーモアを交えて答えたのだ。
自分の高齢がどうなのか…という問題を、相手候補の年齢の問題(若さと経験不足)にすり替えたのだ。この意図的なすり替えには、ユーモアがある。56歳で「若さと経験不足」というのは、必ずしも当たらないだろうが、聞き手はそのことを承知しつつ「ユーモアを交えて、当意即妙に切り返したな…」とニヤッとしたのだ。
※これぐらいの頭のキレがあるから大丈夫、という回答にもなっている。
この発言には、相手候補も苦笑せざるを得なかったようだ。
ユーモアの力は強い
ユーモアの力というのは、想像以上に強い。
前回の記事で、一流の人は言い訳をしない、と書いた。
一流の人が言い訳をしない理由は、言い訳をすることには大きなデメリットがあり、彼らはそのことを重々承知し、言い訳をしないことを習慣としているため、とした。だが、例外的に許される言い訳もある、とチラッと書いた。それは、ユーモアを含む言い訳だ。
高校のとき、「なぜ遅刻したのか」と担任に厳しく問われ、「向かい風だったので遅刻しました」と真顔で答え、クラスを爆笑させたクラスメートがいたと書いたが、その答えにクラスの緊張が一気に緩み、爆笑…ということになった。
厳しい顔をしていた担任も、苦笑しそれ以上遅刻したことを咎めることはなかった。
空気を一変させる力がある
このように、ユーモアの力は強いのだ。※空気を一変させる力がある。
一流の人は、このユーモアの力を使うことができる。自分のものではないコートを手渡されたとき、「このコートは、あちらの方にお似合いだと思います」と笑顔で言える人は一流だろう。
ほめる
相手をほめる
一流の人は、相手をほめるのが上手だ。
対照的に、凡庸な人は、相手をほめるのが苦手だ。
ひとつは、欠点は目につくが、長所は欠点ほど目につかない、ということがある。よく、「批判はどんな人でもできる」と言われるが、そのとおりで、批判することはとても簡単なことなのだ。
逆に、ほめることはむずかしい。
目につきにくい相手の長所やファインプレーに目を止めて、積極的に評価する、という作業が必要になるためだ。
たとえば仮に、「いい接客態度だな」、「いいサービスだな」と思っても、それを表現することにはためらいがある。部下が「いい仕事をしているな…」と思っても、なぜか面と向かってほめることには、やや抵抗を感じたりする(笑)。
負けず嫌いの性格のため、あえて他人の良いところを見ない、ということがある。また、自分に対しても自分の長所を見ず、欠点に注目するタイプであるため、他人の長所に目を向けることができない…というケースもある。つまり、凡庸な人にとって、他人をほめることはむずかしいのだ。
ほめるといいことがある
一流の人は、ほめることのメリットを知っている。
まず、ほめれば「相手が喜ぶ」ということだ。あなたもほめられると、いい気持ちになるだろう。たとえ、お世辞半分…と知っていても、うれしくなるものだ。それは、承認欲求が満たされるためだ。ほめられることで、承認欲求が満たされ、うれしく感じるのだ。
また、自分にもメリットがある。
相手をほめることで、自分もいい気分になることができるのだ。相手をほめれば、相手の顔がパッと輝きうれしそうな顔になる。相手が喜んでくれると、こちらもうれしくなるのだ。
ほめる ⇒ 相手が喜ぶ ⇒ 自分も気分がよくなる、というメカニズムがある。
さらに、相手との人間関係が良くなる、というメリットもある。つまり、ほめることには、(そのほめが的確である限り)メリットしかないのだ。一流の人は、そのことを知っている。
知っているだけではなく、積極的に取りにいくことができるのだ。
目を合わせる
アイコンタクトをする
一流と呼ばれる人は、アイコンタクトが上手だ。
凡庸な人はアイコンタクトが苦手だ。まず、目を合わせるのは「恥ずかしいから」ということがあるし、目を合わせるのは「ウエットな感じがして嫌」、相手が異性の場合は、「誤解されるかもしれない」、「気持ち悪がられるかも…」ということで、凡庸な人はアイコンタクトを避けようとする。
たしかに、その気持ちはよくわかる(笑)。
上手なアイコンタクトとは
アイコンタクトのポイントは2つあるそうだ。
ひとつは、目を合わせたときの「時間の長さ」だ。
CAはアイコンタクトをしたとき、心のなかで、1,2,3とカウントするそうだ。アイコンタクトは、時間が長すぎると相手に不要なプレッシャーを与えたり…ということになり、逆効果になる恐れがある。なので、1,2,3ぐらいが適当なのだろう。
もうひとつは、「目切り」というものだ。
「目切り」というのは、アイコンタクトをしたあとに、目線を外すという行為だ。
この目切りでは、目線を外すときの「速さ」と「角度」が大事になるそうだ。
心の中で1,2と数えながら、耳のあたりまで視線をずらすことで、目線を外せばいいそうだ。目線を上下ではなく、横にずらしながら外す、というところがコツだろうか。
目切り+アイコンタクト
まとめると、アイコンタクト ⇒ 1,2,3とカウント ⇒ 1、2とカウントしながら目線を横スライドさせて外す、ということになる。
わたしは目線を外すとき、下に外すことが多いが、プロは横に外すそうだ。
たしかに下に外すと、「この人は恥ずかしいのかな」、「自信がないのかな」という印象を相手に与えるかもしれない。※視線は横に外してみよう(横を向く、ということではない)。
質問する
積極的に質問する
一流と呼ばれる人は、よく質問をするそうだ。
人が質問をする意図は、大きく分けると2つある。
ひとつは、「知らないことを知りたいので、教えてほしい」というものだ。
凡庸な人は、「知らないことを教えてほしい」という素直さに欠けることがあるのかもしれない。「知らない」ということ、「教えてもらう」ということを恥だと感じることがあるのかもしれない。
コミュニケーションの手段にする
もうひとつは、質問することによりコミュニケーションをとる、ということだ。本当は大して知りたいことではないが、コミュニケーションをとるために質問する…ということがある。
一流の人には、知らないことを知らないと言える余裕があるのだ。知ったかぶりをして自分を飾ったり、大きく見せようとする必要がないためだ。なので、素直に質問できるのだろう。
立場関係なく質問すればいい
これは、米長邦雄さんのエピソードだが、
米長さんは、49歳という史上最年長で名人を獲得したが(真田信繁(幸村)が大坂夏の陣で没した年齢だ)、その要因として、当時の若手を先生と呼び、(身を低くして)教えを乞うたことが挙げられている。
出典:プライドの高い人がプライドを捨てる方法
素直に教えを乞う、ということができるのだ。
一流の人は相手に関心を持つので、 コミュニケーションをとるために質問する、ということも普通の人以上にあるのかもしれない。相手に関心を持つことは、良好な人間関係を築く条件になる。
コミュニケーションスキルを高める - サマリー
まとめ
今回は、「コミュニケーション能力向上のヒントがここにある」の続きを書いた。
全3回のシリーズになったが、「一流と呼ばれる人のコミュニケーション術」は、これで終わりにしたい。今回の記事で述べたのは、1)ユーモアを使う、2)相手をほめる、3)アイコンタクトをする、4)質問をする、の4つだ。
一流と呼ばれる人のコミュニケーション術には、当たり前のことが多い。ではなぜ、凡庸な人ができず、一流の人ができるのだろうか。ひとつは、自分に対する自信と余裕の差になるだろう。
今回の「ユーモアを使う」にしても、「自分のユーモアは通じないのでは…」と不安に思うと、言うのをやめておこう…となる。また、気持ちに余裕がないとユーモアなど出てこないものだ。
今回の記事:「コミュニケーションスキルを高めるヒントがある」
参考文献:ファーストクラスに乗る人が大切にする51の習慣|毛利 仁美