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家族という病の感想を書いてみる

誰かの推薦書だったと思うが、「家族という病」という本を読んでみた。

読了後、この本のカスタマーレビューをチェックしてみた。ベストセラーらしく、評価数は多いのだが、「2.2/5」という低評価だった。この評価を事前に見ていれば、読むこともなかっただろう。今回は、「家族という病」の感想&その本から学んだことを書いてみたいと思う。

※この本には続編「家族という病2」がある。

目次

 

『家族という病』を選んだ

ベストセラーだが…

「家族という病」は、ベストセラーになったようだ。

2015年に幻冬舎から『家族という病』を出版し、50万部のベストセラーとなった。同書の中で下重は「親や家族の期待は子供をスポイルしている」「配偶者は他人」などと家族の価値を否定し、自立した個人の重要性を強調した。
出典:ウィキペディア

50万部なので、かなり売れた本のようだ。その年の年間ランキングでも、上位に顔を出している。

読む本をベストセラーから選ぶ、という方法がある。

ベストセラーは「多くの人が読んでいる本だから、きっとおもしろいだろう…」という仮説のもとに、売れた本を選ぶのだ。ただし、「ベストセラーだから、自分にとっておもしろい」ではない。

売れた本でもおもしろいとは

売れた本でも、自分にとっておもしろいとは限らない…ということだ。

たとえば、「大ヒットと言われている映画をみたけれど、それほどおもしくなかった」とか、「長い行列のできているラーメン屋さんに並んで食べてみたけれど、普通のラーメンだった」という経験をしたことがないだろうか。※めずらしくも何ともないことだと思う。
出典:本の選び方5つ

本であれ何であれ、「期待外れ…」ということは、普通にあることだ。

たとえば、「大ヒットと言われている映画をみたけれど、それほどおもしくなかった」という経験をしたことがあると思う。「なぜ、それほどのヒットをしているのかわからない…」ということもある。また、自分に合わないこともある。※これには、事前の期待感の問題もある。

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読む前に口コミを確認したい

本を読む前に口コミを確認した方がいい。

「家族という病」という本を読んでまず感じたことは、やはり「ベストセラーだからといって、自分にとっておもしろいかどうかはわからないな…」、「それは別の話になるな」ということだ。

ベストセラーで、読む本の候補を絞り込むことはできるが(有効だが)、そこからさらに、すでに読んだ人の「口コミを確認する」というステップを入れた方がいい。その確認は、アマゾンのレビューでいいだろう。そうすることで、自分がおもしろいと思う本に当たる確率が高くなるのだ。

失敗しない本の選び方:本の選び方5つ - 本選びで失敗が無くなります

 

『家族という病』の感想だが…

筆者が言いたいことは

筆者が「家族という病」という本を通じて、言いたいことはなんだろう。

その前に、下重暁子さんという筆者の経歴を確認してみよう。

1959年、早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。名古屋勤務を経て東京に戻り、人気アナウンサーとなった。1968年にフリーとなり、『長谷川肇モーニングショー』(NETテレビ)等のキャスターを経て、文筆活動に入る。作家・評論活動だけでなく、講演も行っている
出典:下重暁子 - Wikipedia

財団法人の会長を務めたこともあるようだ。

また、日本ペンクラブの副会長、日本旅行作家協会会長でもあるようだ。

※学歴も職歴も立派に見える。

その下重さんの(本書での)主張だが、

1)家族の価値を否定、2)自立した個人の重要性を強調、ということらしい(Wikipedia)。 自立した個人の重要性を強調するために、家族の価値を否定した…ということだろうか。

家族の価値を否定したい?

本の紹介には、こう書かれている。

日本人の多くが「一家団欒」という言葉にあこがれ、そうあらねばならないという呪縛にとらわれている。しかし、そもそも「家族」とは、それほどすばらしいものなのか。実際には、家族がらみの事件やトラブルを挙げればキリがない。それなのになぜ、日本で「家族」は美化されるのか。一方で、「家族」という幻想に取り憑かれ、口を開けば家族の話しかしない人もいる。そんな人達を著者は「家族のことしか話題がない人はつまらない」「家族写真入りの年賀状は幸せの押し売り」と一刀両断。家族の実態をえぐりつつ、「家族とは何か」を提起する一冊。
出典:「家族という病」

これを読む限り、家族を否定することが主になっているように感じる。

逆張りだが違和感が…

家族を否定する、というのは逆張りだ。

逆張りをして注目を得よう、インパクトを与えよう、とする行為はよくあることだ。

だが、この本の紹介文の内容には違和感を感じる。

まず、「日本人の多くが「一家団欒」という言葉にあこがれ、そうあらねばならないという呪縛にとらわれている」とある。

だが、家族であれ職場であれ地域であれ、人間関係を良好に保ちたい…と思うのは、当たり前のことだ。そのことを、「一家団欒」という言葉にあこがれるとか、そうあらねばならないとか、呪縛というのは、表現が強すぎるように思う。

そうあらねばならない、とまでは思っていないだろう。前提に疑義ありだ

幻想ではなく教養の欠如では

「それなのになぜ、日本で「家族」は美化されるのか」とあるが、本を読んでもどこをどう美化しているのかはっきりしない。

「「家族」という幻想に取り憑かれ、口を開けば家族の話しかしない人もいる」とあるが、その人は単に教養がないだけではないのか…と思う。

教養がないから話題に広がりがないのであって、そんな人の話がつまらないのは当たり前のことだ。家族の話をするからつまらないのではなく、話題に広がりがないためつまらないのだ

※自分の趣味のことばかり話す人と同じことだ。

炎上狙いなのか…

この本は、意図的に炎上を狙っているのだろうか。

以前、ブログが炎上する原因という記事を書いたことがある。

その中で、1)ある程度の筆力がある、2)ポジションの取り方に問題がある、3)ポジションの根拠にも問題がある、4)自分のポジションを補強するために誰かを dis る、と書いた。

これらのことが、すべて当てはまるのだ。

1)ある程度の筆力がある、については、もちろんクリアしているし、2)ポジションの取り方に問題がある、についても、メタ認知なしに(一方的な)ポジションを取っているな…と感じる。

子供じみた印象を受ける

次のような印象を受けるのだ。

たとえば、他人とのリアルな会話で、「○○が嫌い」、「○○が好きな人は、どうかしている・信じられない」とは言わないだろう。もしかすると、その人が○○を好きかもしれないからだ。そのあたりに思いが至らないと、「嫌い」だと言い切ることになる。
出典:ブログが炎上する原因

主張の根拠にも問題がある

3)ポジションの根拠にも問題がある、についても当てはまる。

たとえば、「大人にとっていい子はろくな人間にならない」という主張がある。

その根拠として、「子は親の価値観に反発することで成長すると信じている」、「親の権威や大人の価値観に支配されたまま、言いなりになっていることは、人としての成長のない証拠である」とし、反抗期のない子が増えていることは、「気持ちが悪いこと」としている。

だが、親が子に自分の価値観を押しつけなくなったため、子に反抗期らしい反抗期がなくなった…とも考えられる。また、子は(無理に)親の価値観に反発しなくても成長できるだろうし、

大人にとっていい子が、「親の権威や大人の価値観に支配されたまま、言いなりになっている」とは限らない(古い時代の話かな…と思ってしまう)。昭和から時代は変わっているのだ。

他者を叩いて自分を上げる

4)自分のポジションを補強するために誰かを dis る、については、家族を dis っているのだろうと思う。家族を dis れば、「家族は大事だ」と考える人から反発をくらうことは確かだ。

でも自分は間違ってないのよ幸せなのよ、と自己の正当性を主張するために他者を叩いて言い訳をする。そうやっていつまでも仮想敵を作って戦い続けるような人間に、そりゃあ安心できる・満足できる家庭や家族が持てるわけがありません。
出典:Amazon カスタマーレビュー

「自己の正当性を主張するために他者を叩く」は、そうなのだろう。

自立した個人の重要性を強調するために、家族を dis る…ということになるのだろうが、この本は、意図的に炎上を狙っているのだろうか。だんだんそんな気がしてきた(笑)。

自慢が火に油を注いでいる

この本の中には、自慢ととられても仕方のない記述がある。

さりげなく、自分が高学歴の男性にモテたことをほのめかす部分があるのだ。

また、「知的な家族ほど消滅する」という部分では、自分の身内のエピソードを紹介している。「格天井に見事な絵の描かれた仏間を持つ建物は解体され…」という記述がある。

栄えた家族でも消滅する、ということだろうが、自分の身内のエピソードを書いて、知的な家族ほど…というのは、デリカシーのない表現だな、と感じる。※知的な家族ほど…という根拠も弱い。

自身が家族の話をしている

さらに、家族の話はしょせん自慢か愚痴と書いて、否定的な見方をしているにもかかわらず、自分が家族の話(自慢か愚痴)をするというのは、矛盾していないのかな…とも思う。

テレビでもとにかく「私の家は」「私の家族は」と何を語るにも自分・自分で唖然としました
出典:Amazon カスタマーレビュー

どうやら下重さんは、テレビ出演時も、ご自身の家族の話をしていたようだ。

自分自身が忌み嫌う、「口を開けば家族の話しかしない人」になっていないだろうか…と心配になる。※家族の話をリクエストされたのかもしれないが、結果的にそうなっている。

ポジティブな面もあります

最後に、ポジティブなレビューを紹介したい。

「家族なんだから」「親なんだから」「育ててもらってるんだから」「親のことそんなに悪く言うもんじゃないよ」という無責任な言葉におしつぶされそうな人には、適した本ではないでしょうか。親の犠牲になるべきかどうか、選択を迫られている人にはおすすめです
出典:Amazon カスタマーレビュー

家族という概念にとらわれて、身動きができない…という人にはいいのかもしれない。

また、上でこの本の「前提に疑義あり」と書いたが、

多くの人が「一家団欒」という言葉にあこがれ、そうあらねばならないという呪縛にとらわれている、と考える人や「家族」が必要以上に美化されている、と感じる人は、筆者の主張に共感できるのかもしれない。

呪縛に囚われている人には、劇薬的な効果があるのかもしれない

※部分的にみれば、うなづける主張もある。

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家族の問題は解決しません

ちなみにこの本で、家族の問題が解決するわけではない。

書かれているのは「著者自身の体験からくる親への恨みつらみと、自分がこれまで『女性の自立』のために頑張ってきたこと自慢」だけなのです。読んでも、あなたが抱えている「家族問題」は、何一つ改善されません
出典:琥珀色の戯言

自慢と恨みつらみと家族バッシング…とする人も多いだろう。

家族の問題は解決しないが、家族のあり方に対する認知が変わり楽になる…という人はいるかもしれない。このタイプの人は、先に述べたように「呪縛に囚われている人」になるだろう。 

まとめ

この本は、内容が素晴らしくて売れた、という本ではないと思う。

炎上させることで売った本だ、というのがわたしの見立てだ

ブログでも、内容の素晴らしさでPVを集めるものもあれば、炎上させることでPVを集めるものもある。この本は、後者に該当すると思う。筆者にそういう意図はなかったと思うが、編集サイドにはあったのではないだろうか。

※見事に狙いが当たり、ビジネスとしては成功ということなのかもしれない。

三者による感想や批判も(この記事もそう)マーケティングになるのだ。辛口の感想になったが、怖いもの見たさで、読んでみるのも一興だろう。この本は、エッセイに近い本である。

今回の記事:「家族という病の感想を書いてみる」