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損せぬ人に儲けなしは正しいがむずかしい

損せぬ人に儲けなし…という言葉を耳にしたことがないだろうか。

この言葉の意味を文字通りとれば、損をしなければ利益を得ることはできない、ということになる。損をしても利益を得ることができない場合もあるのだが(笑)、損がなければ利益もないことは確かだ。つまり、損をすることは利益を得るための必要条件である…ということだ。

今回は、損せぬ人に儲けなし…について書いてみたい。

目次

損せぬ人に儲けなし

損せぬ人に儲けなし

「損せぬ人に儲けなし」という言葉がある。

この言葉の意味だが、儲けるためには「その前に損をすること」が必要になる、ということだ。

たとえばビジネスでは、最初にある程度の設備投資をしたあとに、ビジネスを通じてその投資額を回収する…という順番になる。赤字覚悟のサービスやマーケティングで自社商品などの知名度や認知度を上げ、その後赤字分を回収する…という手法もある(無料体験や試食などもそうだ)。

株式投資などであれば、自己の投資レベルを上げ、ある程度安定して儲けを出せるようになるまでには(中級者以上になるためには)、さまざまな試行錯誤を通じて損をする…というプロセスが必要になる。

どのようなケースにしろ、「損せぬ人に儲けなし」ということはあるのだ。

実践するのは難しい

だが、「損せぬ人に儲けなし」を活用することはむずかしい。

ひとつは、当初の損がどの程度将来の利益に結びつくのか…ということがわからないためだ。

将来の利益を現在価値に割り引くことができれば、当初の損の許容範囲を求めることができるが、そんなことが(正確に)できるはずもない。この不明瞭さが、前に出ようとする足を引っ張る。

損の不足、無駄な損が

また、人には損失回避性があるので、損には敏感になる。できるだけ損を抑えて…と考えるので、中途半端に損をして、(損が閾値を超えないため)もうけにつながらない…ということがある。

さらに、儲けにつながらない損をする…ということもある。

赤字覚悟でキャンペーンを打ったが、集まったのは価格に敏感な客だけで、それが終わったら、潮が引くように客がいなくなった…なんてこともある。これは損が儲けに繋がらない事例になる。

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損を「信用」に変える

西野亮廣さんの著書の中に、おもしろいエピソードがある。

ホームレスのAさん(30代男性)という人がいる。

この人は、自分の労働力を1日わずか50円で売る。仮に、時給千円で8時間働けば8千円だ。なので、1日50円ではとんでもない赤字(-7950円/日)だが、その赤字の分、自分の信用を積み重ねることができる…という話だ。

※損を信用に変える(損で信用を買う)、という話になる。

損が利益を生む仕組み

そこには、「損が利益を生む」という仕組みがある。

労働力をとんでもない安価で買った方(購入者)は、さすがに相手に対し申し訳ない…と思い、昼と夜の食事代(+飲み代)をAさんに支払う(おごる)。それで、赤字の6~7割は相殺できる。

購入者は自分の意思でそうするので、Aさんに対する信用は失わない…ということだ。この時点で大損だと思ったことが、少しの損(マイナス)+信用というプラス、になっていることがわかる。

Aさんが積み上げた信用をどう使うのかは、西野さんの本を読んでほしい。

返報性の原理が働く

この話から、彼は「返報性の原理を利用している」ということがわかる。

人は誰かから(自分の利益になる)何かをしてもらったとき、お返しをしなければいけない…という気持ちになる。この心理のことを「返報性の原理」という。多くの人が、ギブ&テイクを信条としているはずなので、全体を通してみれば返報性の原理は機能する。もちろん例外はあって、何の奢りもなく終了…というケースもあると思うが、数をこなせばならされるはずだ。

貸しは「信用」になる

また、「貸しは信用になる」ということもわかる。

相手に貸しを作れば、それが相手の中で(自分に対する)信用になる。

ただし、その信用を毀損しないようにする必要がある。もしあなたが相手に対し、シリアスに「貸しを返してほしい」と要求すると、相手の信用は吹っ飛んでしまうだろう。なので、貸したことはわすれるか、回収しようとするときでも、困ったときに「助け(支援)を求める」、という形にした方がいい。

※相手が自律的に自分を助ける…という形にした方がいい。

人間関係が続く場合に

さらに、これらのことは「人間関係が続く場合に有効になる」ということもわかる。

その人と関わり合うのは1回きりで、もう交わることはない…ということであれば、相手にあるはずの信用を利用することはできない。返報性の原理もはたらかない(はたらきようがない)。

せいぜい、間接的に(その信用が)自分の良い評判につながるかも…というぐらいだ(笑)。

その場限りという場合は、相手に冷淡な態度をとり、関係が続きそうだとみると、手のひらを返したように親切な態度をとる人がいるが(笑)、直感的または本能的にそうすることが自分の利益になる…と知っているのだろう(もちろん、そのような態度はとらない方がいい)。

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損を許す余裕が必要に

「損せぬ人に儲けなし」の教えを実践するには、損を許す余裕が必要になる。

ホームレスのAさんがなぜここまでできるのか…といえば、仮に1日50円だけでも生きていけるという自信があるからだろう。もしそうでなければ、そんな安価で自分の労働力を売ることはできない。

最悪のケースでも生活できる…という保証がなければ、そんなことはできないのだ。

株式投資などでも同じだ。「投資は余剰資金でしなさい」と説く人が多いが、これは正しい。生活資金を投資に使うと、必要な損であっても損をしたくなくなるのだ。そして損をすると、痛みを必要以上に強く感じてしまう。こんな状態で、その教えを実践することは不可能に近い。

 

損せぬ人に儲けなし - サマリー

まとめ

今回は、損せぬ人に儲けなし…について書いてみた。

この言葉はとても正しいのだが、この言葉の教えを実践することは、容易ではない。

そもそも人は損をすることに敏感で嫌いだし、不透明・不明瞭なことに向かって踏み出すことを躊躇する。当初の損が、どの程度将来の利益に結びつくのかわからないということは、「不明瞭」ということだ。

さらに、気持ちや生活、資金に余裕がないと、「先に損をする」ということは、なかなかできない。これらのことがあるため、この言葉の教えを実践することがむずかしくなるのだ。

※むずかしいがゆえに、実践できる人は利益を獲得することができる。

今回の記事:「損せぬ人に儲けなしは正しいがむずかしい」