辛い思いをしている人とどう接すればいいのか、という問題がある。
なんとか力になりたいが、どう言葉をかければいいのかわからない。たとえ自分が同じような経験をしていても、どう接すればいいのかわからない…ということがある。むずかしい問題なのだ。
今回は、辛い思いをしている人への対応の仕方について書いてみる。
辛い思いをしたとき
人生に困難や苦難はあるので、辛い思いをするときがある。
自分が困難や苦難に直面し、辛い思いをしたときのことを思い出してみたい。
以前、海外でカウンセリングを受けたことがある。わたしは人に助けを求めることが苦手な方だったので、異国の地でカウンセラーに助けを求めるということは、かなりの決断だったと思う。
カウンセリングに興味があった、ということもあるが、当時は相当なストレスを抱えていて、自分では処理しきれない、このままでは潰れてしまうな…と相当な危機感を抱いたことも事実だ。
そして、意を決してカウンセリングの予約を取りカウンセラーに会いに行った。
※人の助けは借りるといい。人の助けを借りるいい経験にもなる。
カウンセラーのもとへ
カウンセラーは、40歳前後の女性だった。
おだやかな雰囲気を持つ女性で、自分より年上だ。豊富な臨床の経験がありそうだ。
外国人であるわたしの話に興味を持ち、(長時間)熱心に聴いてくれている。的を射た質問のほか、踏み込んだ質問もしてくる。たとえば、「自○を考えるか」というきわどい質問もあった。
極度のストレス下では、誰にでもそういう考えが浮かぶことがあるのでは…と答えた。
※ごまかしつつ間接的に「YES」と答えた。当然、実行に移すつもりはなかったが。
解決策の提示なし
わたしは当時、カウンセラーは問題の解決策を提示してくれると思っていた。
話を聴いて、解決策の提示なりアドバイスをする。それが仕事だろうと思っていた。
※専門家としての知見に基づき、自分にとって有効なアドバイスをしてくれると思っていた。
だが違った。彼女はこちらの話を聴いて(質問を含む)リアクションをするが、解決策を提示することは全くなかった。カウンセラーの仕事というのは、アドバイスをすることではないのだ。
※面談しながら、「いつアドバイスをしてくれるのだろう」と思っている内に終了した。
自分で乗り越える手助けを
カウンセラーの仕事は、自分で困難を乗り越える手助けをする、ということだ。
それは、直接的に解決策を提示したりアドバイスをする、ということではないようだ。
相手に寄り添い(心理的な面から)支えることで、防波堤になるということだ。辛い思いをしている人は、話を聴いてくれる人がいる、心の拠りどころができたと安心感を持つことができる。
そうして、(心を安定させ)自分で困難を乗り越えてもらおう、ということだ。
カウンセラーの手法を使う
カウンセラーは、アドバイスをしようと思えばいくらでもできるはずだ。
こちらが求めればするのかもしれないが、自分からはそうしない意味を考える必要がある。
辛い思いをしている人への対応の仕方は、カウンセラーから学べばいい。求められない状態でアドバイスをしない、相手の話に興味を持ち傾聴する、共感する、相手に寄り添うということだ。
そうやって、相手に安心感を与え、自分で困難を乗り越える手助けをすればいい。
※最後の防波堤になり、相手の心を穏やかに保つことができるようにすればいい。
共感の仕方は
共感の仕方だが、自分が共感してもらってうれしかった時のことを考えればいい。
会社員時代の話だが、
一時、精神的なパワハラをする上司にかなり悩まされたことがあった。じわじわと(会社とは関係ない個人的な感情から)精神的に部下を追い詰めるような上司で、当時は心底疲弊したのだが…
先輩との何気ない会話の中で、その上司の下で働いていたという話をしたとき、先輩の顔色がさっと変わり、「それは大変だったね」とポツリと言ってくれた。その言葉は今でもはっきり覚えている。
先輩はその上司の性分を知っていて、わたしに同情(または共感)したのだろう。先輩からそれ以上の言葉はなかったが、たったそれだけの言葉&ボディランゲージでも救いになるものなのだ。
今でも覚えているのだから、「わかってくれる人がいた」と心が動いたのだろう。
自分で乗り越えるもの
困難というものは、最終的には自分で乗り越えるものだ。
もちろん人の力や助けを借りたらいいが、自分で解決策を見い出し乗り越えていくものだ。
そのためには、「レジリエンス」というものが必要になる。
レジリエンスは「耐久力」とか「我慢する力」というものではない。困難をしたたかに利用して糧にするという力だ。例えば、心的外傷後成長というものがあるが、その源泉になる力のことだ。
ニーチェが「That which does not kill us, makes us stronger」と述べている。
「あなたを殺さないものは、あなたを強くする」という意味だ。この言葉から、困難や苦難は糧になる、ということがわかる。※どうやったら糧になるのか…と、自分に問い続ける必要がある。
レジリエンスの高め方については、次回の記事で書いてみたい。
辛い思いをしている人への対応
まとめ
今回は、辛い思いをしている人への対応の仕方について書いてみた。
困難というものは、(人の助けを借りつつも)最終的には自分で乗り越えるものだ。
カウンセラーのような専門家に相談しても、未知の解決策を提示してくれるわけではない。
まわりの人ができることは、自分で困難を乗り越えられるように、レジリエンスを高めることができるように手助けをすることだ。わたしは、この専門家がカウンセラーであると理解している。
※最後の防波堤の役割をして、相手の心に少しでも平穏をもたらす…ということがそうだ。
困っている人の話を傾聴する、共感するということは、その立派な手段になる。※わたしのカウンセラーが、レジリエンスの話をしてくれればよかったが、当時としては求めすぎかもしれない。
必ずしも多くの言葉は必要なく、(やさしく抱擁するような)態度が重要になるだろう。
今回の記事:「辛い思いをしている人への対応の仕方は」