不器用な生き方をやめたい

人の心理や特徴を踏まえて合理的に行動したい

生涯投資家という本がとてもおもしろい

村上世彰氏が書いた、「生涯投資家」という本がおもしろい。

おもしろい本というのは、「まえがき」がおもしろい。まえがきは、「つかみ」の部分なので、著者は力を入れて書いている。なので、この部分がおもしろければ、たいてい内容もおもしろい。

生涯投資家のまえがきにあたる「はじめに」はおもしろく、興味をそそられた。また、おもしろい本は一気に読んでしまうが、この本はそうだった。今回は、生涯投資家について書いてみたい。

目次

小学3年生から投資をはじめる

生涯投資家のイメージ

村上世彰氏は、なるべくして投資家になっている。

生涯投資家である村上氏が投資を始めたのは、小学3年生のときだ。

使うためではなく貯めるために、「お小遣いちょうだい」と、父親にねだっていた村上氏だが、大学に入るまでのお小遣いとして、100万円を(一括前払いとして)手にする。

村上氏は、その100万円を元手に株式投資を始める。

高校生のときは、仕手株に投資したこともあるそうだ。その際、最高値で売れなかったことを悔しく思い、「株は怖いものだ」という実感を得た。「上がり始めたら買え、下がり始めたら売れ」という父親の教えは、今でも投資の基本になっているそうだ。

※子供の投資教育としては、(政治・経済にも関心が向くし)いいやり方だと思う。

直言は子供のときから

村上氏といえば、直言居士、というイメージがある。

誰に遠慮することなく、自分の考えをはっきり述べる、ということだが、おもしろいエピソードがある。村上氏の父親が、息子を香港にある投資先の工場へ連れて行った。成功した投資の実態を我が子に見せたかった、ということだが、小学5年生の村上氏はこう言った。

お父さん、あの女の子たちをこんな環境で働かせるのはかわいそうだ。こんなことしちゃいけないよ。ひどいよ。
出典:生涯投資家 (著)村上世彰

父親は、この言葉を聞いて不機嫌になったそうだ。

村上氏は、「わかってもらいたい」という願いから、「要点のみを畳みかけるように話してしまったり、口調がきつくなってしまう」と述べている。そして、コミュニケーションが拙いせいで悪い印象を持たれてしまう…と自己分析している。

たしかに、「お金儲けは悪いことですか?」という短いフレーズは、今でも耳に残る。

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コーポレート・ガバナンスを機能させたい

村上氏は、日本のあるべき姿について、常に考えていた。

日本のあるべき姿を考えると、「コーポレート・ガバナンス」というワードに行きつく。

コーポレート・ガバナンスとは、株主や経営者、従業員や消費者、債権者や取引先、さらには、地域社会や行政機関などが、会社の経営判断などをチェック、統制、監視する仕組みのことを指す。

村上氏は、株主の立場から企業の価値向上を促し、日本経済の持続的な発展と成長を実現する、ということをライフワークとしている。※コーポレート・ガバナンスを機能させる、ということだ。

村上氏は、「株主価値の最大化を目指す経営がなされているか」ということを重視している。ゆえに、ROE(Return on Equity)、「株主資本に対する純利益の割合」を重視しているのだ。

ガバナンスがなければグズグズに…

ガバナンスがなければ、組織がグズグズになる。

別にバスケットのルールも知らないし、強化云々も知らない。それは専門の人がやればいい。僕がみなさんに要求しているのはガバナンスなんだ
出典:川淵三郎が相撲界の現状に物申す

畑違いの業界に飛び込み、バスケのBリーグを設立した川淵三郎さんの言葉だ。

ガバナンスとは、組織に関与するメンバーが主体的に関与を行う仕組みだが、この仕組みがないと、(バランスがいびつになり)組織が立ち行かなくなってしまう。

組織のレベルを上げたり、組織を正しく運営するためには、立場の異なる関係者の集合知や相互作用を上手く利用する必要がある。だから、川淵さんは関係者にガバナンスを要求したのだ。

※ガバナンスがなかったり、機能しなければ、組織は上手く行かない。

日本の社会を変えたい

村上世彰氏には、「日本の社会を変えたい」という思いがあった。

コーポレート・ガバナンスを守らなければ、企業が存続する意味はない、という思いとは裏腹に、現実をみれば、違う実態があった。その齟齬(そご)を正し、社会を変えたかった、ということだ。

そこで、制度をつくる側から(プレーヤーがいなかったので)プレーヤーに転身した。ROEを重視した経営を、日本ではじめて本格的に提唱したのは自分である、と自負している。

投資とは何か

投資とは、「期待値をもとに、リソースをいれること」だとしている。

投資案件の中には、リスクとリターンが見合っていないものがある。「リターン>リスク」の案件を見つけて投資するのが、投資家である、ということだ。

期待値の見極めには、定量的なものさしと、定性的なものさしが必要になる。前者は数字だが、後者は世の中のトレンド、経営者の資質、ビジネスパートナーの性格や特徴などが測る対象になる。

わたしも、経営者の資質は企業の(現在~数年先の)業績を説明する大きな変数だと考えていて、たとえば、「エゴイストかどうか」、「謙虚さがあるのかどうか」という点を注意してみている。

※村上氏は、期待値とIRR(15%以上)、リスクの3点から、投資判断を行う。

投資家が嵌りやすい罠とは

投資家が嵌りやすい罠についての指摘もある。

それは、心理的に期待値に反した行動をとってしまう、ということだ。

ちなみに多くの投資家は、0円になる可能性がある程度(20%以上)ある場合は、投資をしない。また、負ける確率が5割以上と考えた場合も投資しない。
出典:生涯投資家 (著)村上世彰

人が期待値に反した行動をとる、ということは普通にあることだ。

人は損失に敏感なので、リターンが「0」になる可能性がそこそこある、ということであれば、期待値が「1」を超えていても、投資をやめようと思う。

また、負けが込むことも嫌(気が滅入る)なので、負ける確率が5割以上ある、ということになると、期待値が「1」を超えていても、「投資をやめよう」と思うのだ。

期待値にしたがって投資行動を決めるやり方は、参考になりそうだ。

人脈を力に変えている

この本を読むと、人脈を利用しながら村上氏が力を発揮していることがわかる。

たとえば、紹介を受ける形で、三井住友銀行西川善文氏、安田信託銀行の笠井和彦会長、オリックスの宮内会長、日本マクドナルド藤田田社長、堤清二氏、江副浩正氏などと面談している。

こういう人たちの協力がなければ、村上ファンドの創設はできなかっただろう。

まとめ

今回は、生涯投資家という本の感想などを書いてみた。

投資に興味のある人であれば、間違いなく「あたり」の本だし、投資に興味がなくても、おもしろく読める本だと思う。

メディアの報道を通じて、村上世彰という人物のイメージを持っている、という人が多いと思うが、(この本を読めば)そのイメージと等身大の村上氏が乖離していることがわかるだろう。

村上氏の理念や投資哲学が興味深い。失敗も含め、ケーススタディになるような事例がたくさん出てくる。また、将来のヒントになるような話もあるので、読む人が読めばわかるかもしれない。

今回の記事:「生涯投資家という本がとてもおもしろい」