株を売るのはむずかしい…と感じたことがないだろうか。
たとえば、初心者にとっては、「損切り」で株を売ることは苦痛だろう。そうすることで、損失が確定してしまうためだ(自分の誤りを認めることになり、心理的にしんどい)。
利食いで売る、ということは、損切りに比べれば(心理的に)容易だが、売ったあとで「しまった…」と思うこともある。売ったあと、どんどん株価が上がると、利食いのタイミングを間違えた…と臍を噛むことになる。利食いのタイミングを間違うことは、よくあることだ(笑)。
つまり、「損切り」でも「利食い」でも、株を売ることはむずかしいのだ。
今回は、株を売るタイミングについて書いてみたい。
目次
利食いはむずかしい
「利食い」というのは、本当にむずかしい。
現在私は、キャピタルゲイン(売買益)狙いで株を買う、ということをあまりしないので、「利食う」ということをほとんどしない。それでも、保有株の株価が(実態以上に)高くなりすぎたときは、売るべきだと思っている。しかし、この利食いの売りが非常にむずかしいのだ。
株式投資では、「損切りを早く、利食いを遅く」と言われるが、初心者の多くは、その逆のことをしている。損切りはしたくないので遅くし、利食いは焦って早くしてしまう…ということだ。
その結果、コツコツ積み上げた利益を一度になくしてしまう…ということになる。
中級者になると…
中級者になると、多少知恵がつく。
「利食いは早くしがちになる…」という人の心理を理解しているので、売りたいと思っても我慢する。複数回に分けて売ることができるのであれば、そうする。
一方で、「できるだけ引きつけて売ろう」とするあまり、売るタイミングを逃してしまうことがある。頂点から下げに転じたときに見切って売れればいいのだが、直近の高値が「アンカー」になるため、心理的に売ることがむずかしくなるのだ。
※その時点ではトレンドが転換したかどうかわからない、というむずかしさもある。
こう考えると、人の心理が利食いをむずかしくしていることがわかる。そうであれば、何らかの合理的なものさしを導入して、(感情の影響を排し)システマティックに売るべきではないか…と思う。人の(投資において)マイナスに働く心理を排する仕組みが必要だ。
早めに利食いをすると…
早めに利食いをすると、ロクなことがない。
早めに利食いをすると、その後、売った株の上昇を呆然とながめることになる。この状態は、精神衛生上よくない(笑)。利食いできたので、損はしていないが、あたかも損をしたような気分になるのだ。
※己のうかつさで、とれる利益を失った(損した)という重い気分になる。実際は得をしているにもかかわらず、損をした気分になる…ということは、ある意味ロクでもないことだ(笑)。
再投資のタイミングを間違える
さらに、その気分的な損を、売却して入ってきた資金で取り返そうとする。
売却資金が手元にあるので、それを使って(他の銘柄に)再投資しようと考えるのだ。
たいてい、こんなときの投資は上手くいかない。当初は上手く行って利がのるが、その後トレンドが転換し、「買値を下回る ⇒ 塩漬け」ということになりがちだ。利が乗ったときに売れればいいが、今度は前回の失敗が頭にあるので、売れないのだ。
※また、トレンド転換後の下げ足は早いので、簡単に売れるものではない。
利食いのタイミングは
上昇率で判断する
上昇率で売るタイミングを判断する、という方法がある。
たとえば、買値より20~30%上がれば売却する、というものだ。
たしかに、8%のロスカットと併用して使えば、有効なのかもしれない。ただしこの場合は、利食いよりもロスカットの方が(回数が)多くなるので、トータルでどうか、ということは、一概に言えない。
単純に、○○%上がれば売却するというのはどうか…という意見もある。
利食いのルールとして「買値から30%上昇したら利食いする」というように買値からの上昇率基準とされている方も多くいらっしゃると思いますが、底値圏で買えた銘柄をたかだか30%の上昇で利食いしてしまうのは、筆者からすれば「もったいない」の一言です。
出典:第59回 底値圏で買った株の利食いタイミングの見極め方とは?
株価が2~3倍になることは、めずらしくないからだ。
わたしはこの方法を採用していない。採用するとすれば、最初に述べたように、ロスカットと併用して…ということになるが、現在の投資スタイルとは異なるので、採用していない。
テクニカルで判断する
テクニカルで判断する、という方法もある。
平たくいえば、チャートをみて判断する、ということだ。
株価と平均移動線の関係、ローソク足や出来高、RCI、RSI、モメンタム、一目均衡表、ボリンジャーバンドなど、チャートを利用して、売りどきを判断する、というものだ。
私はテクニカル分析は、ある程度有効だと思う。なので、売り買いの参考にしている。
ただし問題は、「正解がない」ということだ。
また、チャートとして現れたものは、「結果」である。このことを、「バックミラーを見て運転することはできない」と表現した人がいるが、そのことにも留意しておく必要がある。
※結果を引き起こした原因についても、よく考える必要がある、ということだ。
平均移動線 + 損切り
株価と平均移動線の関係を見ていると、「あれ?」と思うことがある。
高値圏でこれまでとは違う動き(株価が平均移動線を下回る期間が長くなってきた…など)が見られたら、その後の戻り高値をアンカー(基準)にして、損切りを行う(実際は損切りではなく利食いだ)。たとえば、そこから8%下げれば、損切りと同様にして機械的に売るのだ。
戻り高値から、再度平均移動線を割ったときに、売るという方法もある。
※テクニカルは、シンプルに使うと有効かもしれない。
配当利回りで判断する
配当利回りで判断する、という方法もある。
これには、配当利回りをどう計算するか、という問題がある。
配当利回りは、株価サイトで表示される配当利回りではなく、自分で計算することをおすすめしたい。配当が成長している会社とそうでない会社があるためだ。※税込み・税抜きの問題もある。
配当が成長していない会社の場合は、たとえば過去10年間の配当の単純平均をとる、ということで、配当利回りを求めてもいいだろう。配当が成長している会社の場合は、単純平均ではなく、成長率を加味した加重平均にすべきだ。
たとえば、直近の配当に重きをおいて、加重平均で配当利回りを求めればいいだろう。※来期の予想を入れてもいいだろう。また、平均をとる期間を短くしてもいい(古い配当の値に意味が薄いため)。
売りの目安だが、私の場合は「0.5%」だ(税引き後+安全率を掛けた値)。このラインを下回ると、売りを考える。ただし、ラインの設定に正解はない。これは、自分で決めるしかないのだ。
利食いのタイミングとは - サマリー
まとめ
今回は、株を売るタイミングについて書いた。
株を売るタイミングというのは、本当にむずかしい。人の心理が強く影響するためだ。なので先に書いたように、合理的なものさしを用意して、システマティックに売ることがいいのではないかと思う。
また、どのものさしを使うにしろ、売った後にその売りが正しかったのか、検証することが大事だ。正しければ、そのものさしは汎用的に使える可能性がある。正しくなければ、そのものさしは使えない。※1回の売りで判断はできないが、10回、20回となると、見えてくるはずだ。
利食いでは、正しいものさしを手に入れられるか…が勝負なのだ。
今回の記事:「利食いのタイミングとは」