若い時の苦労は買ってでもせよ…という言葉がある。
私が20代のころは、この言葉はおじさんのポジショントークだと思っていた。
若さを失ったおじさんは、もはやしんどい苦労をしたくないので、若い人にその苦労を売りたい。そこで、「若い時の苦労は買ってでもせよ」ともっともらしい理由をつけて(若い人に)言うことで、自分は楽をしようとしているのでは…と思っていたのだ(笑)。このことが100%誤りだ…というつもりはないが、若い時の苦労は買ってでもせよ…が、間違いだとも思わない。
今回は、若い時の苦労は買ってでもせよ…が正しい理由について書いてみたい。
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目次
若い時の苦労は買ってでもせよ
若い時の苦労は買ってでもせよ…という言葉がある。
この言葉の意味だが、若い時の苦労は将来役に立つので、求めてでもした方がいい…ということだ。この言葉の裏には、若い時に苦労知らずで過ごしてしまうと、将来困ることになりますよ…という意味もある。日本電産の創業者である永守重信さんが、「若い時の失敗、挫折の経験が、立派な経営者をつくる」と述べているが、「若い時の苦労は買ってでもせよ」に通じるものがある。
苦労の意味とは
苦労は買ってでもせよ…の「苦労」の意味だが、
単に肉体的・精神的に苦しい思いをすること、キツい思いをしながら耐えて努力すること…というよりも、「物事がうまくいくように」力を尽くすこと、「自らの目的のために」 しんどい思いをしながらも耐えて努力すること、とした方がいいだろう(ただしその場合は、自分では苦労とは感じないかもしれない)。「~のために」ということがなければ、疲弊して潰れてしまうだろう。
苦労=失敗
苦労=失敗、とすることもできる。
なぜ、若い時に失敗した方がいいかと言えば、1)若い時の失敗は比較的許される、2)若い時の失敗はリカバリーがきく、3)早く成功に近づける、ということがある。「早く成功に近づける」を説明すると…成功に至るためには、試行回数の多さが必要になり、試行回数を多くすれば、失敗の数も必然的に多くなる、ということがある。また、失敗の受け止め方や対処の仕方を早い段階で学ぶことは、成功する可能性を高めることだといえる。なので、若い時にたくさん挑戦し失敗した方がいいのだ(ただし、致命的な失敗は除く)。
フットワークが軽くなる
苦労は買ってでもせよ…を頭に入れておくと、フットワークが軽くなる。
仕事でもプライベートでもそうだが、「こんなもんオレの仕事じゃない」と思ってしまうと、腰が重くなり、その仕事に取り掛かることができなくなってしまう。だが、この仕事をすれば、将来役に立つ、誰かが助かる、誰かに感謝される、社会の役に立つ…と思えば、腰が軽くなって「やろうかな」という気持ちになる。※考え方ひとつで、行動が変わる…ということだ。
やった方がいい仕事やどうせやらなければいけない仕事であれば、「苦労は買ってでもせよ」と思って、取り組んだ方がいいのだ。それなりの成果を出そうと思えば、アウトプットが大事になる。そのためにも、フットワークを軽くしておくことは、とても大事なことだ。
このことは、若くなくても同じことだ。
主体的に行動することになる
若い時の苦労は買ってでもせよ…は、自ら行動せよということだ。
他人から苦労を強いられると、どうしても疲弊しやすくなる。上司から命じられた仕事をこなすことで、対価をもらえる…ということを頭で理解していても、「自律性が侵害される」という感覚があるので、やる気が出ないし楽しくない…となり、疲弊してしまうのだ。
本当はやりたくない仕事を対価のために仕方なくやっている…という感覚になってしまうと、やる気が落ちるし、創意工夫をしようという気持ちもなくなり、自ら進んで頭を使う…ということをしなくなる。嫌々仕事をしても、そこから得るものは少ない…ということは、多くの人が経験的に理解していることだと思う。
一方、自ら買ってする苦労には、「自律性が侵害される」という感覚がない。
そのため、主体的に仕事に取り組んでいる…という良いイメージを持ちながら、仕事をすることができる(セルフイメージが高くなる)。その結果、やる気を保つことができるし、前向きに仕事をすることができる。そこから得るものも、最大化できる…というわけだ。
自ら苦労を買った秀吉
織田が朝倉に攻め込んだが、浅井の裏切りにより挟撃の危機に瀕し、撤退を余儀なくされる…という戦いだ。この負け戦で「しんがり」を務める役に手を挙げたのが、秀吉(当時は木下藤吉郎)だ。しんがりは、困難な役で己の命をかけることになる。このとき、秀吉がこの困難な役を果たすことができた理由のひとつは、「自ら手を挙げた」ということだ。もし、無理やり指名された…ということであれば、上手く役目を果たすことはできなかっただろう。
※命じられた…という説もあるが、手を挙げた説をとる。
投資をすればリターンがある
若い時の苦労=投資、と考えることもできる。
若いうちから適切な投資をしておけば、歳を取ってから楽になる。
自己投資でも人間関係における投資でも、財産を増やすための投資でもいいだろう。早い段階から種をまくことができれば、収穫できる時期も早くなる…ということは自明だ。もちろん、失敗して作物が途中で枯れることもあるだろうが、その失敗から学んで種をまき直せば、いずれは大きな収穫を得ることができる。種をまかなければ、収穫などあるはずがない。
適切な…ということがポイントになるが、何が「適切」なのかは、試行錯誤(失敗を含む)して自分で探るしかない。そのためにも、若い時から始める…ということが大切になるのだ。
前頭葉の体力がつく
若い時の苦労を買ってでもすれば、前頭葉の体力がつく。
脳にとって雑用は、スポーツにたとえて言えば、ランニングや筋力トレーニングです。よく「若い頃の苦労は買ってでもしろ」と言われますが、これは特に若いうちに前頭葉の体力をつけておくことが重要だからです。
出典:脳が冴える15の習慣 築山節(著)
前頭葉というのは、入力された情報を集め処理する…という役割を果たしている。
出典元の記述によると、(前頭葉は)「入力された情報を、記憶として蓄えられている情報と組み合わせ、思考や行動の組み立てをつくり、運動野を介して体に命令を出す」という作業を担う脳の中の司令塔にあたる…ということだ。
前頭葉が強くなると、行動力が増し実行力の高い人になるそうだ。一方、前頭葉が弱いと、仮に知識や経験があっても、行動力が落ちて「行動するのが苦手な人」になってしまうそうだ(社内で評論家…といわれる人はこのタイプだろう)。なので、若い時に面倒な雑用をたくさんこなし、前頭葉の体力をつけておくことが将来的にも大事になる…ということだ。
前頭葉が成熟するのは25歳前後と言われているそうなので、それまでにどれだけ面倒な雑用をこなせるか(前頭葉の基礎体力を向上させることができるか)…というのが、ポイントになりそうだ。もちろん、その年齢を超えても(年齢に応じて)鍛えることは必要だろう。
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まとめ
今回は、若い時の苦労は買ってでもせよ…が正しい理由について書いてみた。
今回の記事で書いたのは、1)フットワークが軽くなる、2)主体的に行動することになる、3)投資をすればリターンがある、4)前頭葉の体力がつく、の4つだ。これらを踏まえた上での結論だが、若い時の苦労は買ってでもした方がいいと思う。大雑把にいえば、将来の利益につながるためだ。この点を軽視して、「この言葉はおじさんのポジショントークだ」、「苦労を売りたい人の理屈だ」と決めつけていると、自分が損をすることになる。
※もちろん苦労は、疲弊して健康を害したり潰れたりしない程度にすべきだ。
今回の記事:「若い時の苦労は買ってでもせよ…が正しい理由4つ」