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長谷川穂積というボクサー

長谷川穂積選手の試合が熱かった。

先日、WBCスーパーバンタム級のタイトルマッチが行われ、長谷川穂積選手がチャンピオンのウーゴ・ルイスをTKOで下し、5年ぶりに世界チャンピオンに返り咲いた。

35歳9か月という年齢は、(日本では)史上最年長ということになる。バンタム級フェザー級スーパーバンタム級を制し、日本の選手では4人目の3階級制覇達成だ。

今回は、長谷川穂積というボクサーについて書いてみたい。

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 目次

 あのウィラポンに勝つ

かつて、ウィラポン・ナコンルアンプロモーションという、名選手がいた。

ウィラポン・ナコンルアンプロモーション(Veeraphol Nakhornluang Promotion、男性、1968年11月16日 - )は、タイ王国の元ムエタイ選手、プロボクサー。本名はティーラポン・サーラーングラーン。タイの国民栄誉賞を4度も受賞しており、カオサイ・ギャラクシーと並ぶタイの英雄ムエタイで3階級制覇の後、国際式ボクシングへ転向。僅か4戦目でWBA世界バンタム級王座を獲得。その後はWBC世界バンタム級王座を14度防衛した。
出典:ウィキペディア

ウィラポンは、1998年、99年と辰吉丈一郎をKO、TKOで降している。2000年、01年、03年、04年には、(後に世界チャンピオンになる)西岡利晃の挑戦を受け、2勝2分けと挑戦をことごとく退けている。ウィラポンサイドからみれば、アウェーで(期待の高い)日本人の有力選手に対し「負けなし」の成績を上げている。そのことからも、いかに強い選手だったかがわかるだろう。

長谷川選手は、2005年にウィラポンに挑戦する(西岡選手が0-3の大差判定負けを喫した翌年だ)。当時のウィラポンの戦績は、47勝(33KO)1敗2分、王座を14度防衛中であり、年齢は36歳であった。年齢的に全盛時は過ぎているが、王者として君臨中であり、まだまだ健在、というところだったと思う。※後のウィラポンの戦績をみても、余力は十分にあったといえる。

この試合は、序盤長谷川、中盤ウィラポン、終盤シーソーゲームという、スリリングな試合になっている。結果、長谷川が3-0の判定で勝利。この試合は、年間最高試合に選ばれている。

・芸術的なカウンターがさく裂する

翌年、再戦があった。今度は、ウィラポンが長谷川に挑戦する立場だ。

ウィラポンは、長谷川に負けた後、5試合を行い、全勝(4KO)という記録を残していた。そして、ランキング1位の指名挑戦者として、長谷川に挑戦する立場になったのだ。

※52勝(37KO)2敗2分という戦績だった。

この試合では、長谷川の見事なカウンターがさく裂している。

そのときは、9R開始早々にきた。

www.youtube.com

長谷川が右を出したと思ったら、ウィラポンが前のめりに倒れている。

通常の映像では、何が起ったのかハッキリわからなかったが、スローでみるとよくわかる。長谷川が(相手のパンチを誘う)左の捨てパンチを出す。ウィラポンは、それを捨てパンチだと思わず、カウンターを取りに行く。そこを狙いすまして右のカウンター一閃だ。

カウンターのカウンターなのだ(驚)。

日本人選手が世界戦でこのクラスの相手に、これだけ見事なカウンターを決める、というシーンはちょっと見たことがない。日本のボクシングの歴史に残る、芸術的なカウンターだ。

※この試合も、年間最高試合に選ばれている。

 モンティエル戦の手痛い敗北

長谷川は、その後10回まで防衛回数を伸ばす。

11度目の防衛をかけて、挑戦者に迎えたのが、フェルナンド・モンティエルだ。

※事実上の統一戦になった。モンティエルは三階級制覇の王者。

試合は序盤から長谷川が優位に進めていたが、4回終了間際、モンティエルの左フックをまともに浴び大きくグラつくと、その後の連打でダウン寸前に陥る。そして、ラウンド終了のゴングとほぼ同時(2分59秒)にレフェリーストップが掛かりTKO負け。この瞬間、5年間保持してきた世界王座から陥落した。
出典:ウィキペディア

私もこの見方に賛成だ。

長谷川がモンティエルの左フックをまともにもらうまでは、やや長谷川ペースで試合が進んでいた。※モンティエルが、試合全体の戦略として「後の先」を仕掛けた、という見方もある。

とにかく、一瞬も目を離せない、息の詰まるような高度な技術戦だった

長谷川には不運なこともあった。良いパンチをもらった後、ロープ際に後退しロープを掴んでしまったのだ(倒れまいとして、本能的に掴んだのかもしれない)。このことが、仇になった。

クリンチもできないし、倒れることもできない…という状態になったのだ。

※意識が飛んでいたようにも見えるので、クリンチは無理だったかもしれない。

ラウンド終了のゴングと同時にストップがかかる、という不運もあった。モンティエルは実力者で、確かに強いのだが、この敗戦は、運にも見放された手痛い敗戦になった。

※キャリア的にも痛かった。

 二階級制覇を達成するが…

その後長谷川は、バンタム級フェザー級、と階級を変更する。

※S・バンタムを飛ばす転級になる。

ここで、世界フェザー級王座決定戦に出場し、フアン・カルロス・ブルゴスと王座を争うことになる。この対戦で(3-0の判定で)ブルゴスを降し、飛び級での二階級制覇を達成した。

そして、フェザー級の初防衛戦では、ジョニー・ゴンザレスを挑戦者に迎える。

ジョニー・ゴンサレス(Jhonny González、男性、1981年9月15日 - )は、メキシコのプロボクサー。イダルゴ州パチューカ出身。第13代WBO世界バンタム級王者。第43代・第46代WBC世界フェザー級王者。長身で、長いリーチから左ジャブを多く繰り出して試合を支配していき、時には打ちつ打たれつの激闘を繰り広げるハードパンチャーであり人気も高い。
出典:ウィキペディア

西岡選手が、アウェーで左の一発で倒した選手だ。※おもしろいもので、西岡がどうしても勝てなかった相手に長谷川が勝ち、西岡が勝った相手に長谷川が負ける、という構図ができている。

長谷川は、ジョニゴンに打ち合いを挑み、敗れる(TKO負け)。このクラスになると、相手のパンチが強くなる。長谷川のパンチで打ち合うのは危険だ…と多くの人が思ったのではないか。

※体格やパンチ力の差が、明らかだったのだ。

 ドラマのような三階級制覇を達成する

長谷川は、2013年にS・バンタム級に転級した。

※飛ばしたクラスに戻った、ということだ。

2014年にIBF世界スーパーバンタム級王者、キコ・マルチネスと対戦するが、TKOで敗れる。このあたりから、「そろそろ引退では…」という声が大きくなってきたように思う

その後、WBC世界スーパーバンタム級9位のオラシオ・ガルシア、WBO世界スーパーフェザー級5位のカルロス・ルイスと試合を行い(危ない場面もあったが)勝っている。

ここで特筆すべきは、強い相手と戦っている、ということだ

普通であれば復帰戦では、自分よりも実力の劣る相手と戦い、調整するなり、自信を回復する、ということをするものだ。しかし、長谷川はあえて強い相手と試合をしている。二戦とも相手が強く、負ける可能性も十分にあった。そこに、何か強い意志を感じるのだ。

 ウーゴ・ルイスとの戦い

ウーゴ・ルイスは、亀田興毅とも戦った経験がある選手だ。

2012年12月、当時、WBA世界バンタム級暫定王者だった彼は、正規王者の亀田興毅と大阪でグローブを交えたのだ。結果は1-2のスプリット・デシジョンでの敗北。どちらが勝者になってもいいような試合で、ルイスに対しても、それほど強烈な印象は持てなかった。
出典:長谷川穂積、最後の挑戦……"奇跡"は起こるか!?

私も同じ見方だ。

当時のルイスは、凡庸な選手に見えた。スピードがなく、パンチもない…という印象だった。

だが、ルイスは進化していた。

しかし、その後、ルイスは変貌を遂げている。スーパーバンタム級に転向以降、スタイルがアグレッシブになりパンチ力も増した観がある。今年2月、米国アナハイムでフリオ・セハ(メキシコ)と再戦、わずか1ラウンド51秒でTKO勝利しWBA世界スーパーバンタム級王者に就くが、このときの右フックの威力は凄まじかった。実力、そして勢いにおいて絶頂時にある王者ルイスは、峠を越えた長谷川を上回っているのだ
出典:長谷川穂積、最後の挑戦……"奇跡"は起こるか!?

バンタム級からスーパーバンタム級に階級を上げたせいもあると思うが、体つきもガッチリとして、明らかに以前よりは、パンチの威力が増しているように見えた。

※全体的に、力強くなっているのだ。

ルイスは、自分からグイグイ圧力をかけていく、というタイプではない。

どちらかといえば、チャンスを待って攻勢に出る、というタイプだ。長谷川は、捨てパンチと有効打を上手く混ぜながら、ペースを握ろうとする。

ディフェンスについても、これまで以上に気を遣っているように見えた。身体もよく動いているし、カウンターのカウンターを狙うようなシーンもあった。途中までの採点は、バッティングによる減点の影響もありルイスだったが、やや長谷川がペースを握っていたように思う。

長谷川は、冷静だった

相手とグローブを軽く合わせるような仕草が目についたが、あれは冷静でないとできないことだろう。9Rのロープを背にしたすさまじい打ち合いも、冷静に相手の動きを見ていたように思う。

相手のパンチをかわしながら、打ち勝っている。

9回、絶体絶命のピンチを勝機に変えた。ルイスの左アッパーにぐらついてロープを背負ったが、長谷川は「攻撃が粗い。チャンスだ」と冷静だった。相手のパンチを巧みにかわし、猛然と連打。一気に形勢を逆転させた。
出典:壮絶な打ち合い、骨折すら乗り越え…35歳長谷川「まるでドラマ」の返り咲き

やはり、冷静だったようだ。

ここを勝負所だとみて、一気に勝負をかけたのだろう。この冷静さと勝負勘の良さ、リスクを厭わない勇気、勝負をかけてモノにできる実力、というのは大したものだ。

つくづく、すごいボクサーだと思う。

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 長谷川の試合はおもしろい

それにしても、長谷川選手の試合はおもしろい。

※「年間最高試合」を何度も行っていることからも、おもしろさがわかる。

なぜおもしろいのか…と考えてみたのだが、1)高い攻防の技術がある、2)攻防一体になっている、3)リスクをとってチャレンジする、4)積極性がある、ということだろうか。

やはり、ボクシングの醍醐味は、「打たれずに打つ」というところにあると思う。打たれずに打つためには、高い攻防の技術が必要になる。また、「攻防一体」というのも、ボクシングの醍醐味だろう。技術の高い選手というのは、攻防が一体になっているものだ。相手のパンチを外してカウンターを入れる、という攻撃は、攻防一体を実現できる選手でないとできないものだ。

長谷川選手は、リスクをとってチャレンジする。

ここぞという場面では、打ち合うのだ。

これまでは、この姿勢が裏目に出ることがあった。打ち合わなくていい場面で打ち合い、(打ち合いの中で)被弾して負ける…というパターンがあったのだ。しかし、今回は冷静だった。

打ち合いの最中のディフェンスが、ほぼ完ぺきだったのだ。

相手のパンチを間一髪で巧みにかわし、自分のパンチをカウンターで当てる、という見事な打ち合いを行った。そのため、ラッシュをかけたルイスの方が、ダメージを受ける、という結果になった。日本人選手の試合では、見たことのないようなすばらしい攻防だった。

さらに、長谷川選手には積極性がある。

「リスクをとってチャレンジする」という姿勢も、積極性があるためだ。

長谷川選手は、ハードパンチャーということではない。だが、全盛時はおもしろいようにKOの山を築いた。これは、積極的に攻めたり、カウンターを取りに行ったためだ。長谷川選手の試合では、退屈なそれやラウンドがないのだ。※長谷川穂積選手は、プロ中のプロなのだ。

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